テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
主
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 警察官パロ⚠️ 黄様若干翠様に嫌われ⚠️ 敬称に違いあり⚠️ パクリ禁止⚠️
主
主
主
9,正義の境界
朝の第六刑務州は、いつもよりも冷えていた。
夜明け前の霧がまだ地面を這い、遠くの鉄塔が白く霞んでいる。
須智は報告書の束を抱えたまま、監察官室の前で立ち止まった。
扉の向こうからは、低くジャズのような音が流れている。
小さく息を吐き、ドアをノックした。
緩やかな声。
中に入ると、蘭は窓際のソファに腰掛け、書類を片手にコーヒーを飲んでいた。
白衣のような薄い上着を羽織り、足元には開きっぱなしの資料が山積みだ。
蘭はコーヒーを一口啜り、視線だけを上げた。
須智は直立したまま、少し息を整えた。
その名を出した瞬間、蘭の手がわずかに止まった。
部屋の空気が、一瞬、静止した。
音楽が止まり、コーヒーの香りだけが漂う。
蘭は資料に視線を落としたまま、ゆっくりと息を吐いた。
須智は言葉を選びながら答えた。
そこまで言うと、須智は黙った。
蘭は書類を机に置き、肩をすくめる。
それでも、コーヒーをもう一口。
その目には、ほんの少しの興味が灯っていた。
須智は深く頭を下げた。
蘭は机の端に積まれた封筒を一つ引き寄せ、中から数枚の報告書を取り出す。
その言葉に、須智の指先が僅かに震えた。
蘭は軽く笑って、コーヒーを回した。
須智は息を呑む。
耳の奥で、警察学校の講義が甦る。
——法は国を守るための盾であり、同時に正義を守るための剣である。
その言葉が、今では皮肉のように響く。
蘭は立ち上がり、カーテンを開けた。
外はまだ曇天。
雪混じりの光が部屋に差し込む。
須智は凍りついたように立ち尽くした。
蘭の声は静かだった。
須智は言葉を失った。
自分が信じてきた国、自分が守ってきた法。
それが、どこまでも冷たく、合理的に人を殺すために存在している現実。
コーヒーの香りが、急に苦く感じた。
須智は拳を握りしめる。
頭の中で、誰かの声が響いた。
――“正しいことをする、それが正義だよ”
子供の頃、美琴に言った自分の言葉。
それが、今になって刃のように突き刺さる。
蘭が少し柔らかく声を掛けた。
須智は答えられなかった。
視線を落とし、唇を噛む。
蘭は少し目を細め、微笑んだ。
その言葉は、やけに優しく響いた。
けれど、須智の胸の中では、何かが静かに崩れていた。
しばらく沈黙が流れた後、蘭は再びコーヒーを口にした。
須智はゆっくりと頷く。
立ち上がり、敬礼する。
蘭は軽く片手を挙げて笑った。
その言葉を背に、須智は部屋を出た。
扉を閉めた瞬間、音楽がまた流れ出す。
まるで、何事もなかったかのように。
廊下を歩きながら、須智は自分の手のひらを見つめた。
——人を守る手。
そう信じていた。
だが今、その手が何を掴み、何を見逃してきたのか。
足音が無機質に響く。
遠くの鉄扉の向こうで、誰かが咳をした。
美琴の独房のある棟だった。
須智は立ち止まり、目を閉じる。
霧の向こうで、何かが静かに壊れはじめていた。
呟いた声は、誰にも届かず、冷たい空気の中に溶けていった。
9・了
主
主
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡100
主
主
コメント
3件
らんらんがかっこいい…!