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⚠︎ジャンルはBLにしていますが、全体的にグロテスクな表現が多いです BL要素ほぼなしになる予感
個人閲覧の範囲でお楽しみください。
~ 登場人物 ~
晋
理玖
警察
誘拐犯
~ あらすじ ~
ある夜、彼──晋は忽然と姿を消した。 玄関には倒れた荷物と、割れたスマートフォン。 警察もすぐに動き出すが、目撃情報はなく、街の中に溶けるようにして、彼の痕跡は失われた。 恋人である理玖は、事件性を直感し、 自らも捜査に加わりながら、心を削るようにして手がかりを追い続ける。 やがて、届いたのは晋が暴行を受けている映像。 音声付きで、苦痛の叫びも、骨の軋む音も、すべてが“現実”として突きつけられる。 その裏で、晋は暗く狭い監禁場所に閉じ込められ、 暴力と屈辱の中で、徐々に「声を失って」いく。 涙を流すことすら許されず、人格を削がれ、人形のように扱われる日々。 それでも心のどこかで、“理玖はきっと来てくれる”と信じていた。
地雷の方はここでばいばい なんでも許せる方のみどうぞ
いつもより少し遅く帰宅した夜だった。 理玖は玄関の鍵を開けると、無意識に「ただいま」と声に出した。
返事はない。 そのことに、すぐには違和感を抱かなかった。最近は作業で眠れない日が続いていたから、きっと晋は寝落ちしているか、イヤホンでもしているんだろうと。
靴を脱いでリビングに足を踏み入れた瞬間、空気の違和感に気づく。 照明は消えたまま。ソファの上には畳まれたブランケットと、飲みかけのペットボトル。机の上には、書類の山。
理玖
言いながら照明をつけ、寝室へ向かう。
いない。 洗面所も風呂場もトイレも。家のどこにも晋の姿はなかった。
理玖
笑おうとした声は乾いて、喉の奥で潰れた。
玄関を見に戻ると、スニーカーが一足、なくなっていた。 でも財布はある。スマホの充電器も、イヤホンも、全部そこにあった。
ただ、置きっぱなしになっていたスマホの画面には、開かれたままの通話アプリ。 相手は「不明」とだけ表示されていて、最後のログは25分前。通話は26秒で切れていた。
指先がかすかに震えた。
理玖
その時だった。 彼のスマホが震える。 差出人不明のメッセージ。添付されたのは、ひとつの動画ファイル。
開くと、真っ暗な画面の中で、誰かが無言でカメラを固定する音。 ピントが合った先には、縛られたままの晋の姿。
頬に痣。腕に傷。 音声付きではなかったが、必死に声を出そうとするような。 肩が震えて見えた。
理玖はその映像を凝視したまま、静かに息を呑んだ。
胸の奥で何かがゆっくりと崩れ、代わりに鋭い何かが喉元に突き刺さるような、そんな感覚。
理玖
動画が終わると同時に、また新たなメッセージ。 文章は一行だけ。
『次の指示を待て』
理玖はスマホを握りしめ、すぐさま警察関係の連絡先に指を走らせた。 けれど頭の中にはずっと、動画の中で怯えていた晋の顔だけが残っている。
理玖
低く、静かに。 その声には、怒りも 焦燥も 愛しさも 全部入り混じっていた。
2025.08.04 公開
1334文字、38タップ お疲れ様でした