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キッチンからは、野菜を切る瑞々しい音が聞こえてくる。
彼と暮らしはじめてからは、料理はほとんど任せてしまっている。
わたし
ソファーから訊く。
優吾
わたし
というわたしの呟きを、あひゃひゃっと独特の笑声で笑い飛ばされる。
わたし
優吾
わたし
優吾
わたし
キッチンに行こうとすると、
優吾
とリビングへ退場させられた。
わたし
優吾
再び台所へ目を向けると、眩く笑った彼と視線が合った。
今日も大好きな彼の笑顔が、そばにある。
優吾
まるでレストランのように、ダイニングテーブルに料理を持ってきてくれる。
わたし
優吾
表情が明るくなったわたしを見て、優吾くんも笑う。
「いただきます」
優吾
わたし
そんな手放しの賞賛も嬉しそうに受け止めてくれる。
彼の手作りは、わたしでは到底及ばない味。
それが毎日「わたしのため」にある喜びを噛みしめる。
優吾
頬が緩んでいたのか、そう突っ込まれた。
わたし
優吾
目じりにしわを寄せ、本日二度目の笑い声。それを聞きながら、
わたし
優吾
今日は二人とも仕事は休みだ。
わたし
優吾
意外にも彼が渋る。
わたし
優吾
わたし
優吾
わたし
彼の大事な仕事なら、邪魔はできない。 洗い物をして、掃除を始める。
優吾くんはパソコンを開く。 その表情は、テレビの中で見るのと同じ引き締まったものだった。
その夜。
パソコンやスマホで作業をしていた優吾くんは、それを終えたのだろうか立ち上がる。
お疲れ様、と声を掛けようと思ったがリビングを出ていく。
わたし
やがて戻ってきた彼は、
優吾
バイクのヘルメットを差し出した。
わたし
それは、付き合い始めてしばらくした頃に、彼とのお揃いで買ってもらったものだ。
優吾
戸惑いながらも、嬉しさと楽しみが込み上げる。
わたし
優吾
振り返って笑った。それにつられる。
彼がライダースを羽織り、わたしも防寒性の高いジャケットを着る。
優吾
優吾
わたし
忙しいのにわがままを言ってしまったと思ったが、叶えてくれて嬉しかった。
優吾
わたし
彼の優しい気遣いに、微笑みがもれる。
わたし
優吾
ふたりが乗るバイクは、高速を駆け抜けていく。
東京のビル街がびゅんびゅんと過ぎていく。
わたし
優吾
わたし
優吾
そんなロマンティックな言葉も、彼の「アハハ!」で台無し……否、さらに楽しくなる。
やがて神奈川に入り、横浜まで来る。
わたし
優吾
訊いてもたぶん隠し通されるだろう。
涼しい夜風に身を任せた。
やがてバイクを止めたのは、ひとけのない駐車場。
微かに海の音が聞こえる。
優吾
優吾くんはわたしの手を引き、駐車場から続く階段を下りていく。
わたし
優吾
優吾
だから横浜なんだ、と腑に落ちる。
わたし
月光が海に映り、キラキラと揺らめいている。
空を見上げれば、星もいくつか瞬いている。
優吾
わたし
それは付き合って間もない頃。
テレビやスマホの中で見る彼はいつもメンバーと一緒だった。 わたしといる時間よりも、仕事のほうが長い。
それに嫉妬して、八つ当たりしてしまった。
優吾
わたし
優吾
潮風が髪をそっと揺らす。
優吾
優吾
わたし
優吾
わたしは驚いて彼を見返した。
優吾
そこには、アイドル然とした眩しい笑顔があった。
星の光にも、月の輝きにも負けないくらい。
優吾
わたし
わたしも、と言おうとしたが彼に抱き寄せられて途切れる。
耳元には届いただろうか。
波が打ち寄せて、2人の足をわずかに濡らした。
終わり