TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

主演女優賞 Ⅱ

一覧ページ

「主演女優賞 Ⅱ」のメインビジュアル

主演女優賞 Ⅱ

5 - Coffee Break with You〈Green〉

♥

302

2023年07月23日

シェアするシェアする
報告する

午前9時、わたしが出勤すると向かいの席ではもう仕事を始めている後輩。

わたし

おはよう、森本さん

慎太郎

おはようございます、先輩!

すでに営業マンとして満点の笑顔で挨拶してくれる。

わたし

(いつか追い越されるかも…)

と謎の危機感を覚える。

一応わたしが彼の教育係をしているんだけど、正直もういらない。

だって、ほら。

慎太郎

あ、先輩!
昨日の資料なんですけど、こんな感じで大丈夫ですか?

わたし

え、もうできたの?

慎太郎

はい!

それは、昨日彼に「できたら今週中に持ってきて」とお願いした資料作成。

別に明日なんて言ってない。

わたし

ちゃんと寝た?

慎太郎

しっかり寝ましたよ、7時間くらい!

わたし

それなら良かった

ありがとう、と受け取る。

少しめくって見るが、かなり整理されていて読みやすい。

わたし

(教育係より上手いって…)

苦笑しながら、自席で作業を開始した。

休憩時間、ラウンジに下りてコーヒーを飲むのがわたしの日課。

サーバーで一杯淹れ、ソファーに座る。

わたし

ふう…

カフェラウンジでは、たくさんの従業員が談笑している。リラックスできるいい場所だ。

わたし

…あ

すると、カップを持ってこっちに来る後輩くんを見つけた。

慎太郎

先輩、お疲れ様です!

わたし

お疲れ

慎太郎

お隣いいですか?

わたし

どうぞ

森本くんは隣にそっと腰掛け、カフェオレをすする。

慎太郎

いつもここに来てるんですか?

わたし

うん、気分転換になるしね

慎太郎

っていうか、先輩はブラックなんですね
何か意外っす

わたし

そう?

くすりと笑いながら、今までは一人で休憩していたから後輩でも話し相手が来てくれて嬉しい。

少し仕事について話し合っていると、あっという間に休憩時間は終わり。

わたし

…そろそろ戻らないと

慎太郎

ですね

オフィス階に上がるエレベーターも先にボタンを押してくれるし、「どうぞ」と通してくれる。

わたし

ありがとう

慎太郎

いえ!

その爽快な笑みを見て、営業に連れていくのが何だか楽しみになった。

今日は後輩くんと初めての外回り営業。

社用車の運転席に乗り込もうとしたところ、

慎太郎

先輩!

と呼び止められた。

慎太郎

俺運転しますから、助手席どうぞ

わたし

いいの?

慎太郎

こういうのは後輩の仕事だって教わったんですけど…

どこまでも律儀な彼に、思わず笑みを漏らす。

わたし

じゃあお言葉に甘えますね

相手の会社をナビで設定し、出発する。 彼は慣れているのか、安定感のある運転だった。

慎太郎

いやーなんか緊張してきました

わたし

大丈夫、今日のお相手は仲良いから

わたし

森本さんでも緊張するの?

慎太郎

そりゃしますよ
何なら面接のときよりドッキドキです

そう言いながら明るく笑った。

その爽やかな目元をルームミラー越しに見たとき、心が跳ねた。

お相手との商談を終え、会社を出る。

慎太郎

ふぅ…緊張した…

後輩くんはネクタイを緩めた。

わたし

お疲れ様

わたし

でもそんなに堅い人じゃなかったでしょ?

慎太郎

そうですね、面白かったです

わたし

まあでも難しい人もいるから覚悟しときな

と笑いかけた。

後輩くんも緊張が解けたのか、いつもの笑みに戻っている。

わたし

そうだ、ちょっと時間あるしお茶でもする?

平静を装いながらも、少しだけドキドキしている。

慎太郎

いいですね!

スマホで調べると、近くにコーヒーショップがあった。

慎太郎

じゃあここにしましょう

わたしはほっと息をついた。

そこは落ち着いた雰囲気の場所だった。 ここならスーツでも浮かないだろう。

わたし

何にする?

慎太郎

僕カフェオレで

会社の休憩時間の飲み物と全く同じで、ふふっと笑える。

わたし

じゃあ…ブレンドかな

2人分のコーヒーが運ばれてくると、森本くんは腕時計を見やった。

慎太郎

時間大丈夫なんですか?

わたし

うん、まだ大丈夫

仕事とかこれからのこととか他愛もない話に花を咲かせていると、ふと静かになった後輩くんはこう言った。

慎太郎

……先輩、今度どっか夜空いてません?

わたし

夜?

やはり何でもない顔をしながらも、反比例して胸は高鳴る。

慎太郎

…お食事とか…

珍しくもじもじしている。 わたしは笑って、

わたし

今夜、空いてるよ

慎太郎

え⁉︎

慎太郎

ほんとっすか?

途端に嬉しそうな顔になる。

わたしはつい口角が上がるのを隠すようにうつむいた。

慎太郎

ええー、俺はなんでもいいんで先輩は何がお好きですか?

わたし

森本くんが行きたいところで
だって誘ったのそっちだよ?

慎太郎

でもそんなわけには…

などとニコニコしながら悩んでいるのも、可愛らしくて仕方がない。

この気持ちが恋だということは、薄々気づいていた。

わたし

じゃあ今日はわたしのリクエスト
次は森本くんの好きなところに行こ

慎太郎

次、ですか…!

さっぱりとした黒髪からのぞく耳がほんのり赤くなっているのが垣間見えて、愛おしさがさらに増した。

この可愛い後輩くんを独り占めできるのはいつかな、と一人思った。

でも意外とお喋りで、かなりボケる楽しい人だと知るのはまた後の話。

終わり

loading

この作品はいかがでしたか?

302

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚