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すまない先生

これ…一体何だ?

すまない先生はとある物が目に留まり、ゆっくりとした手つきで拾い上げる

片手で持てる、ケースのようなもの

開ける所が透明になっていて、外から中に入っているものが覗けた

中には、ドーナツ型の薄いものが入っていた

──────DVDディスク。

すまない先生

…ブラック君、これを使った記憶はあるかい?

ブラック

…………

ブラック

いえ、ありませんね…なぜ私の机に入っていたのでしょうか?

すまない先生

えっ、机の中に入れた記憶すらないのかい?

ブラック

ええ、このディスクを使った…入れた覚えはありませんね

ブラック

……ミスター赤ちゃん、あなたの仕業ですか?

赤ちゃん

違ぇよ!俺はそんなことしねぇよ!ってかまずなんのDVDだよ!?

三人は揃って首を傾げた

こうなった理由は、少し前に遡る───

すまない先生

っ……何で……こんな事に……っ!!

僕は泣き崩れていた

生徒に見せていい顔では無いのは頭で分かっているけれど… 瞳は涙をボタボタと流す事をやめてくれない

ギリリ、と爪が無意識に教卓を引っ掻く

自責の念、海より深い後悔、霧より重く染み付いた悲しさ____

その全てが、この3年B組に結集して膨れ上がっている気がした

すまない先生

何で…守れなかったんだ…!!ちゃんと…‪”‬決めてた‪”‬じゃないか……!

すまない先生

そんなことも出来ないなんて…僕は…失格だよな…

物に当たりそうになるが、何とか堪える

これ以上取り乱したら、今残っている希望すら消えてしまいそうで。

傷みに傷んだ心を必死で抱えるしか───今の僕には出来なかった

もっと、辛いだろうに。二人は。

いくらすまないスクールで心身共に訓練していたとしても、たった一晩で仲間を理不尽に消されてしまう絶望は

時の流れの中でスウッと薄れていくものなのだろうか?

ましてや、まだ成長途中の子供達。

少しだけ前を見つめて、二人の様子を観察する

赤ちゃんは机の上にうずくまっていたけれど ブラックは膝の上で拳を握って、机に顔を押し付けていたけれど

耐え続けているのが痛いほど伝わって、体がじくじくと傷んだ

すまない先生

……二人…共……

僕は顔面の絵面が最悪だったが、ストッパーの代わりに最後に鼻水をずずっとすすって、そっと口を開く

信じられないくらいに優しい声が出ていた

すまない先生

……我慢しなくていいんだよ?嗚咽を堪えなくてもいいんだよ?

───無駄に広い教室に染み渡る

僕の言葉が二人の蓋を開けた様で、感情がブワリと溢れ出したのか……声を上げて泣き出した

誰も引いたり、馬鹿にしたりする奴は居ない

心臓が握り潰されているように、ずっと痛かったのだろう。 ──そんな痛みを耐えろ、と無責任なことは言えない

……だが、それが

少しばかりの乱れを生んでしまうことになる

赤ちゃん

……っ……すまない先生ぇっ……

赤ちゃん

守る事は…出来なかったんですかね……?

すまない先生

すまない先生

分からない、過去に遡ってやり直すことは不可能だから…

すまない先生

でも、‪”‬今‪”‬を頑張って進むしかないんだよ

ブラック

……そう、なんでしょうね…前を向くにはそう思うしかない、分かりきっています

ブラック

……ですが

ブラック

体が、頭が、それを理解するのを拒む

ブラック

どうして自分が出来なかったのか、一人でもここに居させる事が出来たはずだと…

ブラック

負け惜しみなのは十分理解している、けれど…

ブラック

自己嫌悪が…全く抜けない…

ブラックは憎い憎いと言わんばかりに膝の上から拳を抜き、振り下ろす

机の上に叩き付けられた拳が、ドンッ!!と鈍い音を立てた

ずっと重く、ずしりとしていた空気が、音によって一気に振り払われた気がした

僕と赤ちゃんは驚いた表情のまま固まる

次の瞬間には タブレットが宙を飛んでいた

ガシャァァァァァァン!!!!

すまない先生

……!?!?ミスターブラック君っ!?

赤ちゃん

ちょっと…お前っ、何してんだ!机ぶっ倒してんじゃねーかよ!

前方に大きく倒された机を、三人で囲むようにして見ていた

ブラックは何となくだけど顔が青く染まっていく感じがした

机の中から入っている物がそこら中に散乱してして、ブラックの机だからかパソコンやタブレットなどが多い

ブラック

す、すみません…無意識で…取り乱してしまうなんて…私として不甲斐ないです

ブラック

物に当たらないなんて初歩中の初歩……申し訳ありません…

赤ちゃん

いや謝るなよ!!

赤ちゃん

俺だって机ぶっ飛ばそうと思ってたからな!!

すまない先生

ミスター赤ちゃん?今何て言ったんだい?絶対わざとだよね?

赤ちゃん

ひっ……す、すみませーん!!

すまない先生

一緒に片付けるよ、これはどうすればいいんだい?

僕はタブレットを持ち上げてブラックを見下ろす

ブラック

あ、それはそこに置いて貰ってもよろしいですか?

赤ちゃん

ブラックー?机持ち上げるぜー?

ブラック

すみません、お願いします

着々と広い集め、机の中へしまっている内に、段々と気持ちの整理ができてきたのか___終盤には涙は止まっていた

すまない先生

……ん?

僕はふと目に付いたものを拾い上げる

すまない先生

これ…一体なんだ?

すまない先生

うーん…とりあえずこのDVDどうする?

赤ちゃん

なんか…ちょっと怖くねぇか?

赤ちゃん

誰も知らないDVDなんてよ……

ブラック

それは一理ありますが…私は再生した方がよろしいかと

赤ちゃん

え、何でだ?

ブラック

私も言いきれませんが…

ブラック

謎に…体が再生した方がいいと反応するんです

銀さん

おし、みんな帰ったみたいだな

皆の足音が遠ざかったのを感じて、俺は裏からひょっこり顔を出す

思った通り。誰も居ない。

銀さん

これを忘れずに拾って……と

俺はカモフラージュするようにベンチに隠された物を迷わず見つけ、取り外す

それは、カメラだった

なぜ簡単に見つけ出すことができたのかは─── ‪”‬俺‪”‬が隠したから。

‪”‬裏切り‪”‬になってしまうかも知れない。 それでも──これをやる

最初で最後の最終手段。

銀さん

俺は皆に「誰か生き残って三人に伝えてくれ」って言った

銀さん

けど…実現出来るとは限らねぇ…

銀さん

俺がこんな事呟くなんて違うかもだけど……

銀さん

絶対、三人には生き残って欲しいんだ

銀さん

たとえ傍らに居られなくても…、必ず立ち上がって欲しい

銀さん

一気に五人も減るとしたら…立ち上がるのも無理だと思う

銀さん

……俺がすまない先生達の身になったら、きっと立ち上がれねぇ…

だから、とカメラを撫でるように触れた

これはさっきの会話を全て録画している。 実際の映像も…声も…

____出来れば使いたくない。

日がほんのりの周囲を照らし、オレンジ色に染めていた

そうだ、こんな日に七人でお菓子持ってきて食べたっけ

案の定すまない先生にバレてこってり絞られたけど、結局先生が割って入って一番楽しんでたっけな

銀さん

……ありがとうございます

天に向かって、そう一言

ブラックの机に出来たDVDは入れておこう、確か机の中はパソコンとかで埋め尽くされてたから違和感は無いはずだ

銀さん

よし、俺もそろそろ帰らないとな、暗くなっちまう

俺はくるりと体の向きを変えて進み出す

銀さん

…使わなければ、いいんだけどな

銀さん

…‪”‬もしも‪”‬の時は、この切り札を開封してもらうからな

銀さん

どうか、ありませんように……

夕焼けが見たこともないほど黄金色に輝いた

俺の銀髪に染めた髪をほんのり明るげな色に重ね塗りする

この運命の裏側は 明るく重ねられていると確信している

銀さん

うし、行くか!!

すまない先生

よし…行くよ?

固唾を飲んで二人は頷いた

すまない先生

…見てみようか、このDVD

僕は静かにDVDを機会にセットした

緊張感の中、空気を知らずにディスクは回り出す

聞いた事ある声がした

何度も何度も、下手したら家族より聞いた回数が多いんじゃないかと思える声が。

思わず、僕は画面に身を乗り出した。 瞳も大きく見開いて。

二人も同じだった

画面が暗く閉じるまで、僕達は画面から目を離すことが、瞬きする事すら惜しくて渋ってしまった

中で……綺麗な、夕日が立ち込めていた

運命【サダメ】の裏表

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