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千夏

今日さ、放課後にリップ買いに行くんだけど

菜穂

そうなんだ

千夏

菜穂も一緒に行こうよ

菜穂

……私は、いいや

千夏

え、何で?

千夏

「ラネル」の新作出たんだよ?

菜穂

……欲しくないから、大丈夫

千夏

ウソでしょ?

千夏

だって、新作出るたびに買ってたじゃん

菜穂

興味なくなったんだ

私は目を合わさないように下を向いた。

千夏

そういえば

千夏は私の顔をじろじろと見てきた。

千夏

最近、メイクしてないね

菜穂

う、うん

千夏

どうして?

菜穂

面倒くさくて

千夏

でも、あんなにメイクするの好きだったのに

菜穂

……

千夏

ねぇ、ほんとのこと言ってよ

千夏

どうしてメイクするのやめたの?

菜穂

……禁止されてて

千夏

禁止って、誰に?

菜穂

……直弥君

千夏

直弥君!?

菜穂

メイクする女の子、あんまり好きじゃないんだって

菜穂

だから、私にもメイクするの止めて欲しいって言われて

千夏

直弥君にそんなこだわりあったんだ

千夏

でも、菜穂はそれでいいの?

菜穂

……うん

菜穂

直弥君が嫌なことしたくないし

菜穂

メイク止めるぐらい、どうってことないよ

千夏

……そっか

菜穂

ごめんね

休みの日。

私は直弥君と駅前のデパートに来ていた。

デートだけど、メイクは出来ないから、せめてものオシャレでミニスカートを履いて、お気に入りの月のモチーフのネックレスをつけていた。

菜穂

(せっかく気合い入れてミニスカで来たのに、直弥君何にも言ってくれない)

菜穂

(ネックレスをつけてるのも、気づいてくれてないみたいだし)

歩いていると、洋服屋の前を通りかかった。

菜穂

あっ、あれ可愛い

私は飾ってある赤いワンピースに駆け寄った。

それを手に取り、体にあてる。

菜穂

これ、どう?

直弥君に向かってそう訊いた。

直弥

……う~ん

直弥君は渋い表情をした。

直弥

ちょっと、露出多いなぁ

菜穂

え、そうかな……?

直弥

菜穂に似合いそうなの、選んであげるよ

そう言って、直弥君は店内を歩き回った。

菜穂

(直弥君の好きなファッションって、どういうのだろう?)

直弥君は服を持って、戻ってきた。

直弥

こういうの、どうかな?

見ると、白いシャツとジーンズだった。

菜穂

(え……めっちゃ地味)

直弥

どう?

菜穂

う、うん。それもいいね

私はとっさにそう答えた。

直弥

気に入ってもらえて良かった。プレゼントするよ

菜穂

え、そんな、いいよ

直弥

遠慮しなくていいよ

直弥君は上機嫌でそれをレジへ持って行った。

菜穂

(ああいうのだったら、家にあるんだけどなぁ)

菜穂

(でも直弥君が選んだものだし、断れないよ)

菜穂

(直弥君って、派手なのはほんとに嫌いで、とことん地味なのが好きなんだ)

買い物の後、私たちは喫茶店に移動した。

テーブル席に、向かい合って座った。

直弥

そのネックレスだけどさ

直弥君はおもむろに言った。

菜穂

(直弥君、気づいてくれてたんだ!)

菜穂

どう?

直弥

あんまり好きじゃないな

菜穂

……え

直弥

ジュエリーとかつけてる人、嫌いなんだ

直弥

僕と会う時は、つけてこないで

菜穂

……

直弥

それから、今日のスカートは短すぎる

菜穂

……

直弥

他人に彼女の肌を見られてると思うと、たまらなく嫌なんだ

菜穂

……でも

菜穂

メイクもしてないから、せめて服とか、小物は可愛くしたいなって思って

直弥

そんなこと気にしなくていいよ

菜穂

せっかくのデートだから、オシャレしないと

直弥

別にオシャレじゃなくていい

直弥

僕は地味なのが好きなんだ

菜穂

(直弥君はそうかもしれないけど、私だってオシャレしたいのに……!)

直弥

それに、菜穂にはそういう派手なものは似合わない

菜穂

(……そんな)

直弥

家庭的な子なんだから、地味でいいんだよ

菜穂

……でも

言い返そうと思ったけど、何て言えばいいか分からなかった。

私はただ俯いた。

直弥

そうだ。来週の日曜日、家に来ない?

菜穂

直弥君のお家に?

直弥

そう。ママに紹介したいんだ

菜穂

……

直弥

今日買ってあげた服着てきてよ

直弥君は笑顔でそう言った。

私は戸惑いつつも、頷いた。

デート終わり、田んぼ沿いの道を、私はトボトボと歩いていた。

直弥君は予備校に行くため、先に帰った。

菜穂

(……デートだったのに、あんまり楽しくなかったな)

手に持っていた紙袋を見た。

買ってもらった、シャツとジーンズが入っていた。

菜穂

(……直弥君の家に挨拶行くの、憂鬱だなぁ)

私は溜め息をついた。

ふと、田んぼの傍にある草むらを見ると、誰か寝ていた。

それは、稜太だった。

菜穂

いつも寝てるね

私はそう声を掛けた。

稜太

……おお

稜太は驚いた様子で、目覚めた。

私は稜太の隣に座った。

稜太

どこかに行ってたのか?

菜穂

デート

稜太

なるほど

稜太はこっちを見ずに、田んぼを見ていた。

稜太

……雰囲気、変わるな

菜穂

え?

稜太

制服の時と

菜穂

そうかな?

稜太

ああ

ボーっと稲を見ていると、稜太がこっちをじっと見ているのに気づいた。

菜穂

何?

稜太

綺麗だな、それ

稜太は、ネックレスを指差して言った。

稜太

似合ってる

菜穂

ありがとう

菜穂

(今日初めて褒められた……!)

菜穂

(素直に嬉しいよ)

そうやって、二人で田んぼを見ていた。

菜穂

(……何でだろう)

菜穂

(相沢稜太といると、安心する)

私は相沢稜太のことを、気になっている自分に気づいた。

君を誰にも渡さない

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コメント

3

ユーザー

こういう爽やか系?の恋愛が書けるの、 尊敬します…っ! 続きが凄く楽しみです!✨✨✨

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