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菜穂

じゃあ、行ってきます

私はリビングでそう声をかけた。

今日は直弥君の家に挨拶へ行くのだ。

買ってもらったシャツとジーンズも履いていた。

お母さん

ちょっと、待ちなさい

菜穂

何?

お母さんは紙袋を私に手渡した。

お母さん

城崎さんのお宅に挨拶行くのに、手ぶらじゃダメよ

菜穂

何入ってるの?

お母さん

ケーキよ。昨日、デパートで買ってきたの

菜穂

ケーキなんて、高いって言っていつも買わないじゃん

お母さん

城崎さんのお宅に行くのに、安いもの持たせられないじゃない

菜穂

そうだよね。ありがとう

お母さん

失礼のないようにね。行ってらっしゃい

菜穂

行ってきます

菜穂

いつ見ても、大きな家だなぁ

直弥君の家に着いた。

手入れの行き届いた庭の先に、まるで洋風の館のような家があった。

市内でも評判の、大きな家だ。

菜穂

……あの、これ、良かったら食べて下さい

直弥君の家のリビングで、私は持っていた紙袋を手渡した。

直弥君のママ

あら、わざわざどうもありがとう

直弥君のママはそう言って受け取った。

直弥君のママは、モデルさんのように美人だった。

菜穂

(……緊張して、声小さくなっちゃった)

菜穂

(もっと笑顔でいないとダメだ)

直弥君のママ

結構小さいのね

直弥君のママは、隣にいた直弥君に言った。

菜穂

(?)

直弥

小さい?

直弥君のママ

身長よ。前の子はスラッとしていたから

直弥

……

直弥君のママ

好みって変わるのね

菜穂

(……前の彼女は、高身長だったんだ)

直弥

……そんなことより、立ってないで、みんな座ろうよ

直弥君のママ

そうね

私は直弥君の隣に、直弥君のママは私と向かい合うように座った。

テーブルには紅茶が用意されていた。

直弥君のママは紅茶をカップに注いで、私の前に置いた。

直弥君のママ

どうぞ、遠慮なく飲んでね

菜穂

は、はい

私は急いで紅茶に口をつけた。

菜穂

アツっ

驚いて、カップを戻した。

直弥

そんな焦らないでいいのに

直弥君は笑った。

菜穂

(私、何してんの!?)

直弥君のママ

いただいたケーキも取り分けましょう

直弥君のママは、私の持ってきたショートケーキを、皿に取り分けた。

直弥君のママ

あっ、そうだ

菜穂

直弥君のママ

ちょうどうちにも、ケーキあるんだったわ

そう言って、直弥君のママは冷蔵庫から別のショートケーキを持ってきた。

直弥君のママ

三ツ星のパティシエのお店から、取り寄せたのよ

私の前に、二つのケーキが並んだ。

私の持ってきたケーキは、みすぼらしいものに見えた。

菜穂

(……デパートのケーキなんて、この家じゃ食べないんだ)

直弥君のママ

どうぞ

菜穂

……いただきます

私はパティシエのケーキを食べた。

直弥君のママ

あら、先に食べちゃうのね

菜穂

え?

直弥君のママ

さっきも、紅茶を先に飲んじゃうし

見ると、直弥君と直弥君のママは、紅茶とケーキに手をつけていなかった。

直弥君のママ

普通は私たちが食べる始めるのを見てから、自分も食べるものじゃない?

菜穂

す、すみません!

直弥

ママ、いいだろ別に。先に食べたって

直弥君のママ

お味はどう?

菜穂

……えっと

直弥君のママ

不味そうね

菜穂

……いえ、美味しいです

直弥君のママ

でも、ずっと笑顔じゃないから

菜穂

これは、その、緊張していて

直弥君のママ

女の子は、もっと愛想良くしないと

直弥君のママ

挨拶の声も小さいし

直弥君のママ

気遣いもできないとダメよ

直弥君のママ

これから直弥と付き合うんだったら、もっとちゃんとしてもらわないと

私は俯いた。

直弥

もういいだろ? 菜穂、二階に行こう

私は、直弥君と二階へ行った。

直弥君の部屋に入ると、ベッドに座った。

菜穂

……嫌われちゃった

直弥

気にしないでいいよ

直弥

普段は優しいんだけど、彼女を連れてくると、いつもああなるんだ

直弥

子離れできてないんだよ

ずっと俯いたままでいると、直弥君は私の頭に手を置いた。

直弥

大丈夫だよ

直弥君は私を見つめてきた。

直弥

……菜穂

菜穂

……んっ

直弥君は私にキスをした。

私はベッドへ押し倒された。

直弥君はもう一度キスをして、シャツのボタンに手を掛けた。

そして、上からボタンを開け始めた。

菜穂

……嫌

とっさに私はそれを拒み、起き上がった。

菜穂

ご、ごめん

直弥

……いいよ

直弥

ゆっくりと、色々、慣れていこう

菜穂

……今日は、帰るね

私はそれだけ言って、部屋を出た。

下に降りると、誰もいなかった。

菜穂

すみません。帰ります

呼びかけたけど、返事はない。

ふと、ゴミ箱を見た。

菜穂

お土産のケーキが、箱ごと捨てられていた。

私は急いで家から飛び出した。

菜穂

(何も捨てないでもいいのに……!)

涙が溢れてきた。

菜穂

(それに、どうして直弥君のこと拒んだりしたんだろう)

菜穂

(恋人だったら、そういうことするの、当たり前なのに)

私は泣いているのを周りに気づかれないように道を走った。

夢中で走っていると、田んぼの傍の道を通りかかった。

稜太

おい

呼ばれて立ち止まる。

見ると、稜太が立っていた。

私はとっさに顔をそらした。

稜太は傍にきた。

稜太

どうした?

涙に気づいたのか、稜太は心配そうな表情で言った。

菜穂

何でもない

私はそう呟いて、俯いた。

すると、稜太は何も言わず、そっと抱き寄せてきた。

菜穂

(えっ)

ドキッ。

なぜか私はそれを拒まず、受け入れた。

菜穂

(……稜太の温もり)

菜穂

(……あったかい)

私は思わず稜太に身をゆだねた。

その時だった。

直弥

菜穂!

振り返ると、直弥君は立っていた。

菜穂

(直弥君!?)

菜穂

(どうしよう……!)

君を誰にも渡さない

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