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不思議な君の恋の手紙

第1話 - 不思議な君の恋の手紙

2019年03月02日

#恋愛

#学園

#先生と生徒

#高校三年生

#手紙

#紙飛行機

霧夜

高校３年、3月

進藤新

先生！

白石斗真

どうした？

武田若菜

またですよまた！

白石斗真

また中満か？

武田若菜

そうなんですよ！

鈴原澪

この前、私話しかけてみました

鈴原澪

そしたら、英語で何か言われて

鈴原澪

何言ってるのかわからなかったんです

進藤新

おそらく

進藤新

「英語も話せないのに話しかけてくるな」

進藤新

と言っていたと思います

白石斗真

そうか

進藤新

先生、英語話せますよね？

進藤新

古典の先生ですけど

白石斗真

ああ

進藤新

俺らの代わりに

進藤新

中満と話つけてきてくれませんか？

進藤新

みんな、心配してるんです

白石斗真

わかった

白石斗真

(よう)

白石斗真

(今日もサボりか？)

中満リエル

(…白石先生、私を呼びに来たの？）

白石斗真

(ああ)

白石斗真

(お前のところのクラスメイトに頼まれた)

中満リエル

(へぇ)

中満リエル

(ていうか、なんの用なのかしら）

中満リエル

(さっきも地味な猿どもが来てたんだけど)

白石斗真

(何で、いつも1人なんだ？)

白石斗真

(授業は出ない、ホームルームも留守)

白石斗真

(日本人が苦手なのか？)

中満リエル

(まあ、だいたいそんなとこ)

中満リエル

(英語は話せないし肌は黄色くて気持ち悪い)

中満リエル

(それに比べて白人は全てが完璧なのよ)

中満リエル

(あんな気持ち悪い奴らと授業受けるなんて、真っ平御免だわ)

進藤新

(世の中でいう、人種差別ってやつだな)

中満リエル

(そうそう)

中満リエル

(まあ、白人が一番ってことで)

中満リエル

(帰ってもらえる？)

中満リエル

(私、今あなたとも話したくないから)

白石斗真

(じゃあ、授業は出てくれるか？)

中満リエル

(嫌よ)

中満リエル

(まあその代わり、テストでは必ず一番とるから）

中満リエル

(それで許してよ)

白石斗真

(…そうか)

進藤新

…先生

進藤新

どうでした？

白石斗真

あいつ、かなり手強いぞ

白石斗真

あいつ、お前らを見下してる

白石斗真

お前らを…猿と呼んでいた

進藤新

！

武田若菜

澪、大丈夫？

鈴原澪

う、うん

進藤新

俺らを猿と呼んだのは

進藤新

俺達が黄色人種だからですか？

白石斗真

おそらくそうだろう

白石斗真

あいつは白人至上主義者のような口ぶりだったからな

鈴原澪

白人至上主義者？

武田若菜

全てにおいて白人が優れていてほかは劣っているって

武田若菜

考えている人たちのことよ

鈴原澪

そう、なんだ…

白石斗真

白人による他人種への差別は法律では廃止されたものの、今も根強く残っている

白石斗真

その考えを改めさせるのは…

白石斗真

時間がかかるかもしれない

鈴原澪

…それでリエルちゃんが変わってくれるなら

鈴原澪

私はやってみたい

鈴原澪

それに、私たちが馬鹿にされても、何も言えることはないと思う

進藤新

何でだよ？

進藤新

怒りとか、何か感じねえのかよ？

鈴原澪

もちろんあるよ

鈴原澪

でも、リエルちゃんは

鈴原澪

可愛いし、綺麗なふわふわの金髪だし

鈴原澪

佇まいは凛としているし

鈴原澪

私たちよりもたくましく生きてるようにみえるの

武田若菜

たくましく、か…

進藤新

鈴原

進藤新

なんであいつにこだわる？

鈴原澪

こだわりというか…

鈴原澪

あの子が発する冷酷な言葉は

鈴原澪

何かから自分を守るための鎧だと思うの

進藤新

…あいつが何かに侵されてるってことか？

鈴原澪

わからない

鈴原澪

私には、そう見えるの

鈴原澪

先生

鈴原澪

何度もごめんなさい

鈴原澪

リエルちゃんと

鈴原澪

話し合ってくれませんか…？

白石斗真

…分かった

白石斗真

(やっぱり、ここだな)

中満リエル

(…もう来ないでって言ったでしょ？)

白石斗真

(そうはいかねえ)

中満リエル

(…なんて学習能力のないやつなの)

白石斗真

(何故武田たちを猿と呼んだ？)

中満リエル

(え？見た目そのものが猿だからよ)

中満リエル

(他に何があるって言うの？)

白石斗真

（さあ、何があるんだろうな？）

白石斗真

（俺にはわからない）

中満リエル

（…やっぱり、あんた変）

白石斗真

（フッ、どうとでも言え）

中満リエル

（はぁ…？）

白石斗真

（ひとつ聞きたいんだが）

白石斗真

（全く英語が話せないわけじゃない俺も猿なのか？）

中満リエル

（そうとは言ってないわよ）

中満リエル

（まあ、せいぜい良くても召使い程度かしら）

白石斗真

（ふん、光栄だ）

中満リエル

（！？）

白石斗真

（驚いてる顔つきだな）

中満リエル

（バカ言わないでちょうだい）

中満リエル

（この程度…）

白石斗真

（…俺が落ち込むとでも思ったか？）

中満リエル

（思ってなんかないわよ！）

白石斗真

（…俺が住んでたイギリスは、お前が日本に来るまでに住んでたアメリカよりも）

白石斗真

（差別が激しいんだ）

白石斗真

（俺がイギリスに来たての頃）

白石斗真

（ゴミや動物の死体を投げつけられたり）

白石斗真

（黄色人種を罵る暴言を散々吐かれた）

中満リエル

（！）

白石斗真

（それに比べりゃ、お前は…）

白石斗真

（優しすぎだ）

中満リエル

（この私が優しいですって？）

中満リエル

（よくそんな言葉が吐けるわね）

中満リエル

（散々猿だのなんだの色々吐いてきたのに）

白石斗真

（だから言っただろ）

白石斗真

（お前は優しい）

白石斗真

（自分でも認めろ）

中満リエル

（！）

中満リエル

（やっぱり、授業出るわ）

白石斗真

（気が変わったか？）

中満リエル

（その代わり）

中満リエル

（あなたの授業しか出ないから）

白石斗真

（…は？）

中満リエル

（尊敬してない教師の授業など聞きたくない）

中満リエル

（帰らせて頂くわ）

白石斗真

（じゃあ俺の事は尊敬してるってことか？）

中満リエル

（そういうことかしら）

中満リエル

（まあ、英語は流暢に話せるし）

中満リエル

（無理やり授業でろとか言わないところは尊敬してるかも）

白石斗真

（お前、何があった？）

中満リエル

（なんかいきなり桐谷とかいう女が下手くそな英語でなんかペラペラ喋ってくるわ）

中満リエル

（ハゲジジイが何人も集まって教室に連れ戻そうとするわ）

中満リエル

（なんかある時は生徒会が総出で来るわ）

中満リエル

（この学校はどこまで暇なのやら）

白石斗真

（…お前は、その…）

白石斗真

（なぜそんな大人数が犠牲を払ってお前の元に来ていると思う？）

中満リエル

（そんなの、考えたくもないわ）

中満リエル

（あいつらの勝手でしょ）

白石斗真

（…）

中満リエル

（ごめんなさい）

中満リエル

（今は、冷静に話せそうにないわ）

中満リエル

（後ほど、出直してきてくれる？）

中満リエル

（あなたの話なら、聞いてあげなくもないわ）

白石斗真（偉そうな口ぶりだが、仕方ないか）

白石斗真

（分かった）

武田若菜

先生！

武田若菜

リエルちゃんが授業受けるようになりましたね！

進藤新

受けるようにはなったけど

進藤新

白石先生以外の授業は

進藤新

相変わらずですけどね

白石斗真

そうか

鈴原澪

でも、だいぶ愛想はよくなりましたよ

鈴原澪

簡単な英語でも

鈴原澪

間違ってなければちゃんと返事してくれます

進藤新

その代わり

進藤新

間違ってたら睨まれますけどね

鈴原澪

まあまあ

鈴原澪

とりあえず、少しずつね？

進藤新

ああ…

武田若菜

でもリエルちゃんって

武田若菜

近くで見るとすごく可愛いですよね

武田若菜

先生もそう思いません？

白石斗真

いや、俺は特にそういうのは…

白石斗真（さすがに正直に言うとまずいな）

武田若菜

そんなぁ

武田若菜

つまんないの

鈴原澪

でも、リエルちゃん

鈴原澪

ずっと先生のこと見てますよ

白石斗真

はぁ？

鈴原澪

本当ですよ！

鈴原澪

話しかけても上の空な時もあるくらいです！

進藤新

もう少し補足すると

進藤新

先生のこと見てる時が

進藤新

1番優しい表情してますよ

白石斗真

いや、それは…

進藤新

じゃあ中満が

進藤新

先生のこと好きって言ってたら

進藤新

どうします？

白石斗真

内容にもよるな

白石斗真

俺を異性として好きなのか

白石斗真

教師として好きなのか、の2通りで答えは変わる

進藤新

そうですか

進藤新

じゃあ今から言うことは

進藤新

先生にとっては信じられないでしょうね

白石斗真

信じられないこと？

進藤新

はい

進藤新

中満は俺たちに

進藤新

「白石先生は私のお気に入りだから余計なことはしないで」

進藤新

といったんです

進藤新

しかも日本語で

白石斗真

なんだと？

進藤新

日本語、上手でしたよ

白石斗真

…そうか

白石斗真

お気に入り、か

進藤新

どうしました、先生？

進藤新

なんかがっかりした表情をしている気がしますが

白石斗真

い、いや

白石斗真

なんでもない、気にするな

進藤新

…

進藤新

そうですか

白石斗真

さあ、長話は終わりだ

白石斗真

早く帰れよ

武田若菜

はーい

鈴原澪

先生さようなら！

中満リエル（3人に、少しきつく当たってしまったかしら…？）

中満リエル（明日、謝らなければならないわね）

白石斗真

（お前、ここ好きだな）

中満リエル

（あ、先生、こんにちは）

白石斗真

（最近は教室でも馴染めるようになってきたんだって？）

白石斗真

（聞いてて俺も嬉しくなった）

中満リエル

（まあね）

中満リエル

（日本人も、そんなに悪くないなって感じたの）

中満リエル

（元々、日本人は礼儀正しいしね）

白石斗真

（そうか）

白石斗真

（きっとクラスの奴らも喜ぶ）

中満リエル

（そうね）

中満リエル

（先生、ありがとう）

白石斗真

（あ、ああ）

中満リエル

（ねえ、先生）

中満リエル

（なんで先生は私のクラスの担任じゃないのに）

中満リエル

（こんな私の相手をしてくれるの？）

白石斗真

（そう言えば）

白石斗真

（何でだろうな）

中満リエル

（分からないの？）

白石斗真

（ああ…こんなに1人の生徒に入れ込むことなんて）

白石斗真

（前の俺にはなかったことだ）

中満リエル

（…ふぅん）

中満リエル

（じゃあ、私には興味持ってくれてるってこと？）

白石斗真

（そういうことかもしれないな）

中満リエル

（やっぱり、分からないのね…）

白石斗真

（ああ、すまない）

中満リエル

（…別に）

中満リエル

（気にしないで）

白石斗真

（そうか）

白石斗真

（さあ、もう帰れ）

白石斗真

（日が暮れてるぞ）

中満リエル

（そう）

中満リエル

（じゃあ、先生だけ先に帰ったら？）

白石斗真

（…は？）

中満リエル

（私、寮暮らし）

白石斗真

（あっ…）

白石斗真

（じゃあ、時間を気にする必要も無いってことか）

中満リエル

（そういうこと）

中満リエル

（そういう先生こそ）

中満リエル

（早く帰ったらどう？）

中満リエル

（ここにいてもつまんないでしょうし）

白石斗真

（…そうだな）

白石斗真

（そう言えば、お前達も明日で卒業か）

中満リエル

（…そうね）

白石斗真

（中満、お前、第1志望首席で合格したんだって？）

白石斗真

（よく頑張ったな）

白石斗真

（俺に言われるのは嫌だろうが、言わせてくれ）

白石斗真

（おめでとう）

中満リエル

（ありがとう）

中満リエル

（嫌じゃないわ）

中満リエル

（逆に、嬉しい）

白石斗真

（！）

白石斗真（やはり俺は…抑えられない…）

白石斗真（卒業すれば、もう会えなくなるというのに…！）

俺が中満と交流を持ち始めたのは去年からだ

3年になり、受験シーズンで必死に勉強している他の生徒とは違い

中満はいつもこの屋上でのんびりと勉強するような奴だった

授業には出ないことで有名だったが

毎回期末で学年一位をとっていたため、お咎めが来ることもなかった

それが続き、俺がそれが中満の魅力だと思った

好きになった

中満は18歳

俺は24歳

年の差というものは憎い

でも俺は、告白しない

中満を、笑顔で送り出す

それが、俺の務めでもあり、教師の務めだ

中満リエル

（先生、あなたには担任の桐谷よりもお世話になった）

中満リエル

（明日、私から渡すものがあるわ）

中満リエル

（待っててね？）

白石斗真

（ああ）

白石斗真

（待ってる）

卒業式

俺は今も生徒に囲まれている

本音を言うと、早く中満の元へ行きたい

その時…

笑顔でクラスメイトと話している中満の姿を見つけた

白石斗真（なんだ、良かったじゃねえか）

俺はまた生徒達との話に戻った

進藤新

先生

進藤新

今までお世話になりました

白石斗真

おう

白石斗真

頑張れよ、これからも

鈴原澪

先生！

鈴原澪

先生のおかげで、リエルちゃんと色々なところに遊びに行けたりできました！

武田若菜

リエルちゃん可愛いわよね〜

武田若菜

あの容姿に綺麗な青色の目で見つめられたら

武田若菜

どんな男でも落ちるわ〜

白石斗真

は？

進藤新

中満、男子にモテてるんですよ

進藤新

前よりだいぶ明るく振る舞うようになりましたからね

白石斗真

っ…

白石斗真

そうか

中満のことは諦めよう

そう思っていた時…

中満リエル

…

中満リエル

…ちゃんと飛びなさいよ

進藤新

！

進藤新

先生、危ない！

白石斗真

は？

白石斗真

いてっ！

武田若菜

え、何これ？

鈴原澪

紙飛行機？

進藤新

中になにか書いてあるみたいですよ？

進藤がそっと紙飛行機を開く

進藤新

…何語ですかね、これ？

鈴原澪

これ、ドイツ語だよ！

武田若菜

なんで分かるの？

鈴原澪

昔、少しだけドイツ語を勉強していたんだ

鈴原澪

これ、かなり難しいね…

進藤新

先生、もしかして

進藤新

ドイツ語出来たりします？

白石斗真

…ああ

白石斗真

英語までは及ばないがな

進藤新

じゃあ、これ、読めますか？

白石斗真

見せてくれ

そこには、流暢なドイツ語と中満の名前があった

白石先生へ

今まで私のわがままに付き合ってくれてありがとう

私の愚痴を聞いてくれてありがとう

私の八つ当たりを受け止めてくれてありがとう

私と話してくれてありがとう

私のところに来てくれてありがとう

白石先生

…ずっと、好きだった

Liel（リエル）

白石斗真

！

白石斗真

中満！

白石斗真

悪い、3人とも

白石斗真

中満ところへ行かせてくれ

進藤新

ちょっと待ってください

進藤新

それ、中満からの手紙なんですか？

白石斗真

…そうだ

武田若菜

あの子が、手紙？

鈴原澪

色々気になるけど、行かせてあげよう

武田若菜

そうだね

進藤新

ああ

白石斗真

ありがとう

白石斗真

中満！

中満リエル

！？

白石斗真

（おっと、英語にするのを忘れてた）

中満リエル

…もう日本語でいいわよ

中満リエル

普通に話せるし

白石斗真

そうか

中満リエル

ここに来たってことは

中満リエル

あの手紙の意味がわかったってことでしょ？

白石斗真

ああ

白石斗真

だが、ドイツ語で書いてくるとは思わなかった

中満リエル

英語だとすぐ訳されちゃうから

中満リエル

先生がドイツ語できてて良かったわ

白石斗真

まあ、そうだな

中満リエル

で、返事は？

中満リエル

私、もうずっと我慢してきたんだけど

中満リエル

私の長い間肩の荷

中満リエル

下ろさせてよ？

白石斗真

ああ

白石斗真

愛してる、中満

中満リエル

リエルよ

白石斗真

…愛してる、リエル

中満リエル

ふふ、嬉しいわ

中満リエル

あ、でも覚悟しておいて欲しいのは…

中満リエル

海外の女は…

白石斗真

気が強い、だろ？

白石斗真

気が強い女は好きだし慣れてる

中満リエル

そう

中満リエル

なら、問題ないわね

白石斗真

リエル、本当に俺でいいのか？

中満リエル

この期に及んでそんなこと言っちゃうの？

白石斗真

…悪い

白石斗真

自信が無いんだ

中満リエル

心配しないで

中満リエル

嫌って言うほど私のそばにいさせてあげるし

中満リエル

お望みなら私の全てを捧げるわ

白石斗真

お前、それどういう…

中満リエル

どういう意味でしょうね？

中満リエル

まあ考えときなさい

中満リエル

私、これからもっといい女になって

中満リエル

先生が私でしか満足できないようにしてあげる

白石斗真

楽しみだな

白石斗真

じゃあどっちが先にお互いを落とせるか

中満リエル

どちらが先に夢中にさせるか

白石斗真･中満リエル

勝負だ/勝負よ

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霧夜

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不思議な君の恋の手紙

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