───tonarinosakata───
成瀬 楓
浦田 渉
浦田 渉
うらさんが順番に俺らを指さしながら名前を言っていく
このやり取りを何度聞いたことか
成瀬 楓
まだあまりよく分かっていないように眉を下げたこの子は
確か、楓ちゃんやっけ?
昨日、いきなり軽音部の入部が決まってドラム担当になった子やったと思う
まぁ 見てわかる通り
彼女は名前を覚えるのがあまり得意やないらしい
さっきから うらさんに何度も聞き返してる
浦田 渉
途方に暮れたうらさん
入部早々、部長を苦しめる程の子
なんかもう不安やわ。
志麻 秋彦
志麻 秋彦
まーしぃが口を開く
浦田 渉
よっぽど疲れてたんやろなぁ
ぐったりした表情でまーしぃの肩に顎を乗せてホール3から出て行った
坂田 明
2人の後を追うように俺も教室に戻った
先生
坂田 明
先生の一言で眠気が一気になくなる
キーンコーンカーンコーン
坂田 明
鳴り響いたチャイムで俺のテンションはぶち上がった
坂田 明
腕を高く上げ、勢いよく席から立つ
が
千原 伊月
後ろから現れたセンラに腕を下げられ、席に座らせられた
あ、センラってのは
この変態胸毛マンのあだ名で
「千原」って呼ぶのは長いやろ?
せやから「センラ」って略してんねん
ちなみに考えたの俺。
千原 伊月
センラが軽く俺の頭を叩く
坂田 明
千原 伊月
千原 伊月
坂田 明
おかんみたいなセンラの言葉を適当に流しながら
出しただけの教科書をしまう
坂田 明
俺は次の枕となる教科書を探し出す
千原 伊月
千原 伊月
黒板の隅を目を細めながら見るセンラからボソッと聞こえた教科は
俺の中の苦手科目やった
坂田 明
最後の言葉を告げようと、俺はセンラを見た
坂田 明
キーンコーンカーンコーン
ちょうど予鈴もなったし、一眠りすっかな?
古典の教科書を引っ張り出した俺は
センラの また寝るん? みたいな顔を横目に眠りについた
千原 伊月
千原 伊月
坂田 明
センラの鳴き声を耳にし、もの凄い速さで顔を上げる
千原 伊月
ノーリアクションやなー
リアクションを求めてる訳やないけど
坂田 明
またも寝過ごした古典の授業
教科書を出し入れするのがめんどくなってきた
坂田 明
次なる枕を求め、センラに聞くと
千原 伊月
坂田 明
これは意外やわ。
坂田 明
坂田 明
椅子から立ち上がり、センラの腕をがっちり掴んだ
千原 伊月
坂田 明
俺は大急ぎで教室を出てホール3へ向かった
千原 伊月
坂田 明
歩きながら廊下でぽつりと呟く
ほんまに寝てたんやな。
誰もおらん
1年の教室からホール3って意外と遠くて、めっちゃめんどいけど
今のうちに我らが軽音部の説明でもしておこうかな。
まず、メンバーから
ボーカルのうらさん
2年なんやけど、俺より身長低いねん
殴られるから言わんけど...
次、ギターのまーしぃ
2年生
すんごい、たらし
そこそこモテるみたい
キーボードのセンラ
こいつはみんな分かるよな
変態胸毛マン
マネージャーの黒っち
まふ、彼方すん
まふは1年。2人は2年。
頼れるマネージャー!
彼方すんからは呼び方やめろって言われてるけど気に入ってるから
絶対やめへん
まふは俺のことを「先輩」って呼ぶねんけど、まふの方が上なんだぁ。
んで、ベースの俺。坂田
自分のことになるとあんま言うことないわ
それから
昨日入ったドラムの楓ちゃん
入部届けが端っこだけ破れててんけど
なんでやろ。
ついでみたいになったけど、
顧問のあまちゅ
たまにヤバいけど根はいい奴
多分!
っと、メンバーはこんくらい
それでは軽音部誕生秘話、いってまいりましょう!
軽音部は今年から活動を始めたのだ!
もともと楽器やってたし、中学も一緒やったから
高校入ったらやるって決めててん
なんか、昔もあったらしいな。
↑あまちゅ情報
どうこう話してるうちに着いたわ
ちゃんと説明するって疲れるわァ
もう、今日はこの辺で終わりにしよーっと。
........え?あかん?
真面目にやれ?
うらさんみたいなこと言いよるなぁ
ほな、もうちょっとだけ進めるわ
坂田 明
坂田 明
いつものように元気よくドアを開けて入るが、
坂田 明
シ──ン.... って効果音が付きそうなほど
廊下と同じで、誰もおらん
坂田 明
俺は急いでスマホを取り出すが、
坂田 明
いつも俺が来る30分くらい前
つまり俺が1番ってこと
もう遅刻魔とは呼ばせへんぞっ!!
坂田 明
夏が始まったばかりの涼しい風に当たりながら、俺は少し微笑んだ
いつもならみんなが居て うるさいのが当たり前やったけど、
静かな教室も中々ええなぁ
綺麗に整頓されたギターやベース
今だけは全部俺のモンみたい
まあ、でも
一人の時間も長くは続かんかった
カチャッ.....
???
小さな声が聞こえたかと思うと肩よりちょっと上くらいの髪の女の子が入ってきた
坂田 明
坂田 明
うろ覚えの名前を口にすると、彼女は
成瀬 楓
と、名前を覚えてくれていたのを嬉しそうに笑った
成瀬 楓
坂田 明
成瀬 楓
俺が否定すると、一気に不安げな表情になる
「ほんまに覚えてへんのかいっ!!」
そうやってツッコミたいのは山々だが、必死でこらえ
坂田 明
俺なりに訂正した
成瀬 楓
ほんとに申し訳なさそうに謝る楓ちゃんを見ていると思うことがあるのだ!
坂田 明
成瀬 楓
坂田 明
半分、強引に促すと楓ちゃんは「よろしく。」と微笑んだ
坂田 明
成瀬 楓
お互いの呼び名とかも付けあった訳やし、
もう友達!!
....だよね?
桜ヶ丘 彼方
しばらくして彼方すんが来たんやけど
成瀬 楓
ここでもやっぱり楓は間違える
坂田 明
坂田 明
何がおもろいんかは自分でも分からんかったんやけど
俺は笑いを堪えながら必死で説明した
成瀬 楓
桜ヶ丘 彼方
すっごいぎこちない感じで握手するもんやから
俺のテンションはピークに達した
坂田 明
坂田 明
聞けば、俺はみんなが揃うまで
座り込んで、ホール3を爆破する勢いでずっと笑ってたらしい
今思えば何がおもろいんやろ。
人間、不思議なもんですね。
それはそうと、本題に入ろか
そろそろ軽音部の話に戻すね。
みんなが揃ったとこまでは話したよね?
うん、きっと話したはず。
で、今はスタジオ借りて練習中
ホール3って普通の空き教室やから音とか全然漏れるんよ
だから吹奏楽部とか、合唱部に迷惑かけるんだァ
言いたいことは分かるよね?
軽音部の音は邪魔になるから、2つの部活がある日は
こうやってスタジオ練習
俺からしてみれば、おふた方のほうが邪魔やねんけどなぁ、、、
浦田 渉
ぼーっとしてる俺にうらさんが探るような目付きで聞いてくる
坂田 明
俺も慌てて返事をするが、
正直なんも聞いてへん
どうせ大した話やないし、ええやろ。
浦田 渉
成瀬 楓
浦田 渉
うらさんはセンラを指さしながら楓に聞く
この状況から察するように、名前当てクイズ的な?
成瀬 楓
千原 伊月
センラはにっこり笑顔で拍手をした
みんなは驚いたような顔で拍手する
もちろん、俺も。
楓が人の名前を覚えるなんて、1歳の子が文字を書くぐらいすごいこと
ちょっと大袈裟かな?
そんくらい凄いことって思っとって?
浦田 渉
うらさんは次に俺を指さす
成瀬 楓
これにも自信満々に答える楓
結構喋って仲良いし、間違えるはずないやろ!
いつの間にか俺も楓と同じように胸を張っていた
志麻 秋彦
そこかいっ!
桜ヶ丘 彼方
相川 真冬
次から次へとみんなが口を出す
千原 伊月
千原 伊月
仕舞いにゃ、センラは楓を洗脳してきとる
黒木 響歌
黒木 響歌
+うるさいのも。
なーんか、スタジオが喋り声でうるさくなってる
久しぶりやな。
中学ん時は色んな楽器の音とかで
ゴッチャゴチャやったからなぁ、お久の感覚(笑)
部活動は楽しんでなんぼやぁ!
俺は道中で買ってきたジュースを開け、ごくごく飲んでいく
志麻 秋彦
黒木 響歌
桜ヶ丘 彼方
浦田 渉
相川 真冬
成瀬 楓
坂田 明
相川 真冬
なんか、楽しくなりそうやわ
俺は最後の一滴を飲み干した
じゃ、今回はこの辺で。
終わり。
コメント
3件
わぁぁぁ!凄い!続き気になります!
待ってました!どうやったらそんな神作ができるのー!羨ましい