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ドッペルゲンガーだと知りつつも
桃の顔で笑いかけられると胸の鼓動が速くなる
不覚にも
デートしている錯覚にさえ陥ってしまう
俺は伸びて落ちそうになる鼻下を必死に持ち上げながら
真顔を維持する
どっぺちゃ
どっぺちゃ
どっぺちゃ
紫
紫
ワンチャンを狙うヤリチンのような言葉選びになったが
俺はあくまでも紳士を装って接する
どっぺちゃは力なく笑いながら
風邪で揺れる川面を見つめた
どっぺちゃ
どっぺちゃ
どっぺちゃ
どっぺちゃ
どっぺちゃ
どっぺちゃ
どっぺちゃ
その言葉に
思わず固まってしまう
1週間といえば
ドッペルゲンガーが本物の桃を殺害して成り代わったタイミングと一致する
記憶喪失を装い
成り代わりを偽装する演技とも取れた
ドッペルゲンガーが悪意で動く存在であれば
接触する人間を欺くくらいは容易くやってのけるだろう
だが
もし本当に記憶が無いとすれば
目の前のドッペルゲンガーが
自信を古部田桃だと思い込んで生きているとしたら
考えただけで
呼吸を忘れてしまう
両手が震えた
殺害には
絶対に踏み切れないと断言できる
だってそれは
桃を殺すのと同じだ
どっぺちゃ
停止してしまった俺を
どっぺちゃが心配そうな表情で覗き込む
俺は取り繕うように笑い
軽い口調で謝罪する
紫
紫
どっぺちゃ
どっぺちゃ
紫
紫
どっぺちゃ
どっぺちゃ
どっぺちゃは心底おかしそうに笑った
後に
どっぺちゃ
と付け足した
その質問に俺は
紫
と答えた
この笑顔さえ演技だとしたら
尊敬に値するほどの役者である
黒塗りの翠とはモノが違う
なんだったんだ
あいつの演技