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どっぺちゃ
どっぺちゃ
そう言いつつも
どっぺちゃのスマホは既にカメラモードに切り替わっている
魂でも取る気かと警戒したが
ここで断るのは不自然だ
俺は
紫
と頷いて
どっぺちゃに体を寄せた
シャッター音が耳に届く
向日葵みたいな笑顔と
揚げすぎたコロッケのような顔が収められた
どっぺちゃ
どっぺちゃ
どっぺちゃ
どっぺちゃは目元に笑みを湛えたまま
噛み締めるように呟く
どっぺちゃ
紫
紫
どっぺちゃ
俺にはよく分からない感性だったが
本人が満足しているならいいか
1人で納得していると
どっぺちゃは何かを思い出したように立ち上がる
どっぺちゃ
どっぺちゃ
どっぺちゃ
紫
紫
紫
どっぺちゃの真意は定かでないが
ファーストコンタクトとしては十分な成果を挙げただろう
桃と翠が首を長くして待っているはずなので
こちらとしてもありがたい申し出だった
どっぺちゃ
どっぺちゃ
どっぺちゃが
少し寂しそうな素振りを見せる
夕日に照らされて赤く染まった表情は
息が止まるほど美しかった
思わず胸が締め付けられそうになり
俺は適当に返事をして強引に解散する
これ以上会話をすると
情が芽生えそうだったから
どっぺちゃ
どっぺちゃ
笑顔の彼に俺は手を挙げて応えつつ
鴨川沿いを北に上って出町柳まで急いで戻る
駆け足になりながらも
どっぺちゃとのやり取りをゆっくりと反芻していた
今日の印象だけで言えば
どっぺちゃは古部田桃そのものだ
とてもじゃないが
悪意の集合体とは思えない
このまま茶々丸の散歩を終え
家族が作った料理を食べて
シャワーで汗を流してから勉強するのだろう
そこまで想像すると
自ずと嫌な結論にたどり着く
桃が望む復讐は
古部田桃の周囲まで不幸に陥れる
息子を失った親の姿は
桃自身の苦しみに繋がってしまうはず
そこまでの覚悟が
果たして桃にあるのだろうか
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