あの桜が咲く頃に

LANの心の中

いるまの心の中

病院の中は今日も静かだ

だから毎日暇で暇で仕方がない

そんな暇な病院の中で

施設の人や子供達がお見舞いに来てくれる…それが嬉しいんだ

俺は病気にかかってる

誰かから誰かへ感染していくような病気じゃないから…この病気の患者さんは少ない

だから自分の病気の事も分かってない人に

「可哀想」

って言われる毎日だ

俺がこの病気に掛かった理由はお母さんからの遺伝だ

お母さんは病気で×んじゃったけど

今となってはお母さんを責めることも、誰が悪いとか犯人探りをするようなことでも無いって思えてきた

でも

大きな病気を抱えて

施設のみんなとも会えなくなって

他人から毎日「可哀想」って言われて

この静かな病院にたった1人になって

ここに誰か友達でもいたら変わるのかもしれない

だけど

そんなのありえない

ここは病院だ

不安定になってる子がいるんだ

そんな中で友達を作るとか…多分無理

話が合わない

みんなみんな「自分が1番不幸」って思ってるんだから

俺だって思う時あるし

窓を開けると一斉に風が部屋はと入り込む

風と一緒に入ってきたのは

桜の花弁だった

思わず「綺麗」と呟いてしまうほどの

そうだ、俺は今年で中学2年生なんだ

お母さんは俺に殆ど何も残して逝ってくれなかった

まぁ…病気にかかってたらそんな事考える暇もなかったんだろう

辛かったんだろうし、

お父さんは…お母さんが×んだ時、耐えられなくて一緒に×んだ

だから俺は両親がいない

そんな酷い両親が唯一俺に残してくれた物

〝花〟

勿論、この桜の事だ

この桜は、お母さんとお父さんが俺の為に植えたんだそうだ

だから…俺は花が好き

桜が好き

唯一親と繋がるところなのかもしれない

やっぱり部屋の外はより静かだ

俺が部屋を出ると看護師達がある部屋の前で噂話をしていた

〝あの子〟が誰かなんて分かりやしないけど

誰か特定の子について話してるのはわかった

俺の事だと思ってたけど…

俺は愛想悪くなんかないし…

そう考えてるうちに

好奇心からか〝あの子〟について知りたくなっていた

先生がさっき出てきた部屋…！

ここか…！

そこに居たのは色白の男の子だった

色白で痩せた体とは裏腹に

声は低くて…聞いてて落ち着く声だった

性格は尖ってるみたいだった

いかにも「自分が1番不幸です」って思ってるような口ぶりだ