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コメント
5件
もうずっと泣いちゃう.....、 冤罪でも、経験したことをちゃんと今でも活かしてるんだな......ほんとにすきだわ
みこちゃんがいつかすちくんと肩を並べて仕事できるようになったらいいな...!
主
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 警察官パロ⚠️ 敬称に違いあり⚠️ パクリ禁止⚠️
主
主
主
23,帰還者のノート、夜風の温度
朝の空気は、思ったよりも冷たかった。
駅を出てすぐの交差点に立つと、遠くで踏切の音が鳴る。
制服姿の若者たちが足早に通り過ぎていく。
自分もその中に混ざっているはずなのに、どうしてか風景の輪郭がぼやけて見えた。
——今日から、また始まる。
警察学院の門をくぐる。
真新しい制服の肩に、まだ布の硬さが残っていた。
校庭の隅には桜の木。
葉はすっかり落ち、枝だけが空を指している。
その枝の先に、どんな未来があるのか。まだ何も分からなかった。
初日の講義は、午前八時半から。
緊張のせいで早く来すぎた美琴は、教室の一番端の席に腰を下ろした。
周りには若い学生たちが集まっていて、どこか懐かしい空気が漂っている。
そんな声が飛び交う。
美琴は笑うことも、頷くこともできずに、静かにノートを開いた。
真っ白なページがやけに重く感じる。
講師の声が響く。
その言葉に、美琴の手が止まる。
「正義」。
あの牢の中で、何度も自問した言葉だ。
誰かを救うために信じたことが、いつの間にか自分を傷つけた。
それでも、もう一度信じたいと思う。
昼休み。
賑やかな食堂のざわめきが、まるで別世界の音のように遠かった。
美琴は校舎裏のベンチに腰を下ろし、弁当箱を開けた。
冷めたご飯と卵焼き。
味は悪くないのに、どうしてか喉を通らない。
周りでは笑い声が響く。
新しい仲間たちが写真を撮り合い、未来を語っている。
“また誰かと肩を並べて笑える日が来るのかな。”
空を仰ぐと、白い雲がゆっくりと流れていく。
ひとつの雲が形を変えながら、どこかへ消えていった。
あの形が、どことなく心雨の横顔に見えた。
呟いた声は風に消えた。
誰も答えることはない。
けれど、その沈黙さえも、どこか優しく感じた。
午後の実技訓練。
久しぶりに身体を動かすと、筋肉が軋んだ。
周りの若者たちの中に混ざると、年齢の差を少し感じる。
それでも、美琴は黙々と動きを繰り返した。
呼吸を整えながら、ただ「ここにいる」ことを確かめるように。
訓練の後、インストラクターが声をかける。
嘘ではない。
けれど、すべてを話すこともできなかった。
その曖昧な答えを、講師は何も詮索せずに頷いた。
それが少し救いだった。
帰り道、商店街を抜けて電車に乗る。
周囲の笑い声、イヤフォンから漏れる音楽、スマホを見つめる高校生たち。
そんな何気ない日常が、まるで別の世界のように感じられた。
自宅のドアを開けると、静寂が迎えてくれた。
机の上の写真立てが夕陽を反射している。
その言葉が、部屋の空気に溶けていく。
寂しさと安堵がないまぜになって、胸がじんとした。
鞄を置き、スマホを取り出す。
連絡先の一覧の中から、迷わずひとつの名前を選んだ。
“須智”。
指が自然に動く。
メッセージを打つ。
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食卓に座り、簡単な夕飯を食べる。
湯気の立つ味噌汁を飲みながら、ふと天井を見上げた。
この部屋にも、あの夜の星が届いている気がした。
こさめちゃん。
俺、ちゃんと前に進めとるよ。
心の中でそっと呟く。
返事はない。
けれど、窓の外の風がカーテンを揺らした。
まるで「分かってるよ」と言ってくれるように。
美琴は笑って、食器を片付け、風呂に入った。
湯の中で目を閉じると、流星群の夜がよみがえる。
冷たい空気、須智の横顔、そして——心雨の笑顔。
あの光は今も、胸の奥で瞬いている。
24・了
主
主
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡240
主
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