午前3時
古いアパートの前に1台の車が止まる。
車に乗っているのは20台前半の男
男はアパートを見上げると、ハンドルに額を押し付け安堵のため息を着いた
やっとここまでたどり着いた……
俺が保育園に迎えに行ったら待ち伏せしてやがって、あいつら
まぁいい。
9時間もかかったがここまで逃げられた。
この場所はあいつらはまだ知らないだろうから、追ってこれないだろう
男は、助手席でぐっすりと眠っている子供を見た。
俺には母さんがいなかった。
俺は父さんに育てられた。
優しくて野球が好きな父さん
俺は父さんが大好きだった。
でも、俺が少しでも母さんの話をするといつも優しい父さんが別人のように怒る。
すごく優しい父さんなのに、近所付き合いはほとんど無い。
というか近所の人が父さんを、いや俺達を避けている感じだった。
そんな父さんは時々夜中に長いこと誰かと電話している
その電話の話をしても怒るし、電話している時は声を抑えてボソボソと喋っている。
ある時俺は、父さんの夜中の長電話を全部ではないが聞いたことがある。
父さん
父さん
父さん
父さん
父さん
父さん
その時の俺は、まだ幼稚園にも入ったいなくて
父さんの電話の内容がよくわからなかった
でも
誰かが俺を狙っている
それを父さんが守っている
そう思うとますます父さんが好きになった
しかし、思春期になるとだんだん父さんが疎(うと)ましくなっていき、
会話はもちろん挨拶も面倒臭くなり、父さんもそんな俺に愛想を尽かしたのか、次第に俺と父さんの会話は減っていった
父さんの俺に対する態度はどんどんよそよそしくなっていく。
父さんは、俺が反抗的な態度をとる度にニヤニヤ笑いながら言った。
父さん
父さん
父さん
父さん
父さん
父さん
それはもう、だいぶ前から知っている
その時俺は何を思ったかは覚えてないけど。
子供が好きだった。
俺の住んでいた家は近くに保育園があった
家の前も、よくその保育園に通っている子供が通る
一緒に手を繋いでいる男または女に
なんの疑いをもたず「お母さん」「お父さん」と
そんな子供を見ているのが好きだった。
こいつらは何も知らないし、考えもしないんだろうなぁ…
なんてキラキラした顔なんだろう
もっとその純粋な顔を近くで見たい。
子供が欲しい
でも友達もいない。結婚できない
子供が欲しい
子供が欲しい
ものすごく、子供が欲しい
助手席でぐっすりと眠っている子供
俺は子供の頭を撫でた。
田中
田中
解説(ヒント)
主人公(俺)はゆ●●●され、今度は主人公がゆ●●●する。
お分かりいただけたでしょうか?
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