智
アナタが私をこんな甘い声で呼ぶ時は
とんでもない事をやらかした時
咲月
智
なにこの後輩。もう慣れたけどさ。
咲月
智
えっ?爆発にプチとかあるの?おい大野教えろや
咲月
智
アナタいっつもそうよね。 いろんな事やらかしても「フツーにしてただけだもん」とか言ってさ。 フツーにしてたら爆発なんかしないからね?
咲月
智
顔の前で小さく手を合わせながら、テヘって笑ってる天使の顔した悪魔
この会社で1番やらかしてるのが大野
そして、そんな奴と隣の席の私。
大野はいくら怒っても反省の色が見えないからって、なぜか私が怒られる。
おい大野。お前のせいで先月の給料下がったかんな?
咲月
智
もーやだ。もっと優秀な後輩の隣の席がよかった。 例えば、櫻井くんとかぁ、櫻井くんとかぁ、櫻井くんとか? おぼっちゃまな櫻井くん、どうかお願いします。今すぐこいつと席チェンジして。
咲月
智
こうやって何でも知ってるトコが地味にウザイ。けど尊敬してる。
咲月
ただいま午後の10時
咲月
智
咲月
隣でポロポロくずをこぼしながら煮干を食ってる大野。 アンタがコピー機爆発させたのバレたから、私が勝手に修理したのバレたから、今、大野と2人で残業させられている。
智
咲月
智
ぶぅって口を尖らす大野は悔しいけど可愛い。
智
私のデスクの上で、さっきからブーブー鳴ってるスマホ。 だってさぁ…だってさぁ!
咲月
せっかく運命の人♡に出会えるかもしれなかったのに、大野のせいで私の人生パーだよ!
智
咲月
智
なるほどね?26になっても彼氏いたことないとかキモとか思ってるんでしょ?
咲月
智
笑われるどころか感心されたよ?なになに意味わかんない。
咲月
智
…〝今は〟って事は、昔いたんだ…ふぅ〜ん…まぁ、ブサイクではないしね、どっちかと言ったらイケメンの分類だしね。
智
咲月
咲月
さっきから咲月ちゃんがワーワー言ってる 夜なのにテンション高ぇな…笑
暇だし、恋愛話でもするか。
智
フツーに聞いただけなのに、咲月ちゃんの瞳はドギマギ動き出した。 ……こりゃ……恋したことありますな。
智
あまりにも純粋な反応に少しニヤけてきた
咲月
あーら、照れちゃって可愛いなぁ〜 ……ん?オイラ…今なんて思った?
智
オイラは今、目の前にいる先輩の咲月ちゃんを可愛いって思ったの?
咲月
智
えっ?いやいや、今までのオイラの傾向からいくと、もっとボンッキュッボンッで、目がえげつないほど大きくて、体が棒みたいに細い奴。
咲月ちゃんは、言っちゃ悪いけど、それには当てはまんない。 けど……なんか……そういう素朴な感じがオイラは新鮮に感じるっていうか……
も〜!何考えてんだよ!バカバカ!
さっきから、おとぼけ顔の咲月ちゃんは取りあえず置いといて、仕事を再開した
咲月
あくびしながら喋るような女を………
オイラは可愛いと思ったのか………?
咲月
さっきから、ふわふわした眼差しで私の事を見てくる 何があっただ?この短時間で。
智
咲月
智
……今のツッコミすべった?うわ恥ずかし。まぁいいや。帰ろ
咲月
智
大野はほっといて、1人で帰る。
咲月
???
私は一人暮らしなのに、奥の方から返事が返ってきた。 普通の子なら「きゃぁっ」とか言うんだろうけど、私はもうこれに慣れてしまった。
リビングへの扉を開けると、寝っ転がりながらゲームしてる奴が、自分の家のようにくつろいでいる。
咲月
和也
咲月
和也
咲月
和也
咲月
私の家に、またにっていうかほぼ毎日やってくる、この男 『二宮和也』
小学3年の時、隣の席になってから、ずーっと一緒にいる。いや、いられる
でっかい家に住んどきながらニートっていう謎の男。 顔が良いからモテるらしい。
和也
咲月
咲月
和也
咲月
私だったら、絶対にずっとあの広い家に居る
こんな狭くて汚くて?使い勝手の悪い家より、100倍良いもん
和也
和也
咲月
こんなテキトーな理由で居たり、 勝手に出前取ったり合鍵作ったり、 バカとかデブとかブスとか言われたりしてるのに、
心の底から拒否できないのは……
私の〝初恋の人〟だからなんだ……
どっかでニノミヤとの繋がりを欲してるんだ。
小学校の時からずっと隣で横顔を見てきた。ずっと好きだった。 だから、私が何でも知ってるんだと思ってた。
そんな私の自惚れは中学2年生で終わった
当時、ニノミヤから 〝咲月、俺ね彼女出来たの。んふふっ、白崎って子〟
白崎さんは、1個先輩で学校の中で1番に可愛くて、皆の憧れ的の子だった。だって和は、かっこいいもん、可愛いもん、面白いもん、そりゃ彼女くらい出来るよね。 って自分に言い聞かせてきたけど、どうしても諦めきれなかった。
白崎さんが高校を受験する時に別れたって聞いた時、告白してみようかな?って思った時もあった…… けど、この気持ちは伝えない。
和の困った顔を見たくないから。
早くこの長い初恋を終わらせなきゃ。
咲月
和也
咲月
和也
………
やった。なんて思ったのは和には秘密。顔では『最悪』って思ってるふりをするんだ
咲月
和也
咲月
和也
咲月
これだけ口が悪くなったのは和のせいだもん。 和への気持ちを隠すために、わざとこんな口調にしてるんだよ。
気付いてほしいけど、気付いてほしくない…
そんな訳わからない、私の和への秘密は、いつ無くなるんだろう
和也
咲月は、チカチカ光ってるスマホを器用に扱う和の手を眺めていた
和也
咲月
和也
和也
咲月
和也
ガチャン
あっさり出ていく和の背中。 引き止める事は出来ない。
そして、また私は泣くんだ
誰も拭うことのない涙を流しながら。
次の日
智
智
咲月
…………んっ?!なにこの光景…
笑顔で挨拶してきた大野の隣で、般若顔みたいな顔してる松本部長
松本部長
咲月
松本部長
だって大野は面倒見ててもやらかすし…どうしろっていうんだよ
智
咲月
松本部長
やばいよやばいよ、この雰囲気
智
松本部長
松本部長の瞳がキラッと光った瞬間、〝やばい〟って直感した
そろそろ止めた方がいいなって思って、腕を伸ばすと、私より先に腕を伸ばした人がいた
???
大野と松本部長の間に立ちはかどったのは…………
櫻井君
松本部長
翔
2人が部長のデスクへと向かうのを見て、はぁ〜っと深いため息が出た
咲月
智
爽やかな笑顔でカッコイイ事をサラっと言いのけた大野に、咲月は不覚にもキュンとした
咲月
智
私の方へ伸びてくる細い腕
その綺麗な指に見とれて、動けなくなった
咲月
目の前に広がるのは、キラキラ輝いている大野の瞳
ねぇ…近いんだけど…?!このままじゃ…
怖くなって目をギュッとつぶってると、唇に細い何かが触れた
咲月
私の口には大野の人差し指がそっと触れてる
智
智
智
意地悪く片方の口角だけが上げるその笑顔
咲月
智
咲月
私の方が年上なのに、こんな奴に振り回されて…悔しい
ヘラヘラ笑っている大野を睨んでいると、後ろから控えめな声が聞こえてきた
翔
咲月
翔
…やだやだ、なにこの爽やか少年!
目の前にいる意地悪野郎とは大違いだわ!
智
…え?櫻井君と大野ってどんな関係?
コメント
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待っててくださいねm(_ _)m
早く続きを出してください!