テラーノベル
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らん
病室から窓の外を眺める。
どうやら近所で火事が起きたらしい
ここからでもちらちらと炎が見える
火の元からは煙が立っていて
まるで周りに知らせるように
周囲へと広がっていく。
どうでもいいことを考えながら
俺は窓に近寄り、そっと開けた。
すると、
らん
なんだ、この感覚。
いきなり頭にひび割れるような痛みが起きて
俺は思わず顔を歪める。
らん
次第に視点がぼやけてきて
だんだんと呼吸が荒くなる。
立っているのもやっとの辛さだ。
俺は早足でベッドに戻り、
急いで寝転んだ。
楽な体制を取ると治るかと思ったが
痛みは悪化する一方。
更に痛みが強くなってきたな、と感じた瞬間
俺の現実での意識は途絶えた。
???
???
らん
気がつくと、そこはいつも目覚める花畑なんかじゃない
よく分からない世界。
ぐわんぐわんと背景も自分の体も揺れて
ものすごい吐き気に襲われる
らん
慌てて周りを見渡すと
そこには、1人の人間がいた。
身長が俺と同じくらいで、桜模様の服を着て、前髪だけピンクで……
………………ゑ?俺??
らん
らん
あぁ、やばい。
こんな意味わからん気持ち悪いとこに連れてこられた挙句
自分と同一人物が目の前にいる?
もう訳分からん
???
らん
あ、やっぱ俺なんだ。
ここは夢の中なのか?
いるまがいる花畑みたいな……
ていうか、俺現実で倒れてここに来たんだよな?
俺、こいつに連れてこられたってこと?
だとしたら絶対許さん
頭めちゃくちゃ痛かったからな、あれ
らん
らん
らん
いるま
あれからひたすら走って、走って走って
気づいたらここに来ていた。
ここは、下が海になっている展望台。
……俺とらんが、初めてきたデート場所。
いるま
俺は本当に馬鹿だ。
交通事故で大切な恋人の記憶を失って……
クソ女のせいで大切な恋人自体も失って
大切な思い出も失って、
全部全部、あのクソ女の計画通りって分かってんのに
今ここで、命を絶とうとしてる。
俺の生きがいが全て奪われて
俺の全てを失って
それでまだ、生きる理由などどこにも無い
だから、だからせめて……
神様、お願いです。
らんに俺のことを思い出して欲しい
俺との思い出を無かったことにしないで欲しい
だから、どうか。
いるま
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
らん
そこで俺は意識が戻り
気がつけば、病室のベッドに横たわっていた。
もうひとりの俺から返された、俺の記憶。
色んな情報が一気に脳に送られて
また頭が割れそうになる。
彼女?
彼女?
……此奴は、
俺の本当の彼女じゃない……ッ?
……そうか、全部、全部理解した。
此奴は彼女なんかじゃない。
本当の彼女は……
らん
彼女?
らん
らん
そうだ、そうだ。
俺が愛さなきゃいけないのはこいつじゃない
俺が大切にしなきゃいけないのはこいつじゃない。
早く、早く彼奴のところに行かなきゃ
"いるま"のところに……ッ!
彼女?
らん
俺は戸惑うクソ女を突き飛ばし、全速力で病室を出た
自分の体の状態なんて知らない
俺の体より、心より傷つけられた人が今消えかけてるんだ
俺は自分を奮い立たせて、大切な人が待ってる場所へと向かった
いるま
いるま
綺麗な夜空を見上げながら、誰にも届くはずのない独り言を呟く。
なんの偽りもない輝きを放つ満月。
いっそ俺の事を吸い込んで欲しい。
穢れた俺を、純白に戻して欲しい。
らんが満月の下、告白してくれた頃の俺に_____。
そんな叶わない願いを胸に
俺は展望台のフェンスへと足をかけた
いるま
昔、俺が人生に絶望して
命を経とうとした時。
らんが走ってきて、俺のことを引き止めてくれた。
また、あの時みたいに
らんに引き止めて欲しいな、なんて………。
らん
らん
いるま
そろそろ飛ぼう、と体を乗り出していると
急にらんの声が頭に響いた。
いるま
展望台の下から声がし
下を向いてみると
俺の方を見上げて、息を切らすらんがいた。
らん
らん
らんは俺に聞こえるように大声で宣言して
肩で息をしながらも展望台の階段を駆け上がってきた。
こんな、俺のために……
らん
らんはふいに俺の体を抱きしめる
久しぶりの人の温かみに
思わず涙が溢れそうになった。
いるま
らん
らん
いるま
らん
らんは、泣きわめく俺の体を引き寄せ
先程よりも強い力で抱きしめてくる。
いるま
らん
いるま
いるま
らん
らん
いるま
いるま
その後しばらく、俺はらんと抱きしめあって
お互いの存在を、愛を確認しあって
散々泣きわめいて
今までの思い出を思い返して
また泣いて……
らん
らん
いるま
二人で手を繋いで
帰り道へと向かった。
あれからの俺たちはもう大変で
2人とも目が赤いまま病院へと向かって
クソ女を警察に突き放した。
あのクソ女は元俺のストーカーで
俺が事故で記憶を失ったことをいいことに、俺の彼女を演じていた。
あの女は最後まで
『私は本物の彼女よッ、離しなさい……ッ!!』と
悪あがきをしていたらしい。
ついでに、あの女の取り巻きたちも通報だ。
その後、燃やされた家を買い直して……
いるまと仲直りして……
いるま
いるま
らん
今、幸せな同居生活中です。
『心が覚えてる貴方のこと』end_____。
シア
シア
シア
シア
シア
シア
シア
シア
シア
シア
シア
作中出てきた花の花言葉、調べてみてね!
コメント
1件
これ、一応完結なんですけど……番外編あります! もうひとりのらんくんが言っていた取り返す代償…………なんなんでしょうね♪