喧騒と煙草の匂いが混じる都会の隅。
保健室の先生
また喧嘩か、柊。今日で3件目だぞ。
血のついた制服の袖を見ながら、保健室の先生がため息をつく。
返す言葉もなく、柊冬夜は目を伏せた。
ここ、音駒高校に転入してきたのは数ヶ月前。
表向きは成績優秀な転校生。
けれどその実態は前の学校で札つ付きの不良として名を馳せた問題児だった。
柊 冬夜
喧嘩じゃないですよ笑向こうが先に手を出してきた。
保健室の先生
そうやってまた噂が広がる。
保健室の先生
味方がいなくなっても知らないぞ。
柊 冬夜
えー笑、先生は味方になってくれないの?笑
保健室の先生
あのなぁ…
柊 冬夜
まぁ、いいや。バイバイ
味方なんて最初からいなかった。
誰に期待されず、誰も信じられなかった。
そんな日常が、ある男の存在で変わり始める_
黒尾 鉄朗
お前さ。隠しても無駄だよ。
不意に聞こえたその声に、柊は顔を上げた。
視線の先にいたのはバレー部主将・黒尾鉄朗だった。
柊 冬夜
…何の話ですか?笑
黒尾 鉄朗
爪隠してるけど、あんためっちゃ鋭い牙持ってんじゃん。
軽く笑って、黒尾は柊の隣に腰を下ろす。
警戒する間もなく、その笑みが何故か心の奥に突き刺さった。
柊 冬夜
何が目的ですか?先輩、笑
黒尾 鉄朗
別に。ただの興味。
笑うその目は、まるで人の内側を見透かすように深く、
けれど、不思議と優しかった。






