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怖い。 先に進むことが、一歩踏み出すことが、 がらっと変わってしまうことが、怖い。 僕は昔からいつもそうだった。 そして今、大切な分岐点が迫っていた。
睡蘭
睡蘭に念を押され、頷いた僕は言われるがままに真上に飛ぶ。すると、目が眩むほどにまぶしい光が2人を包んだ。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ゆっくり目を開けると、崩壊した遺跡のような壁や柱が辺りに倒れている空間をトンネル状の雲が包んでいる不思議な場所に居た。広い雲のトンネルは上のほうまで先が見えないほどに続いている。 きっとこのトンネルを抜けた先が天空なのだろう。 その予想は的中し、僕は睡蘭と光の生物が行き交うトンネルをただひたすら飛び続けた。
雲のトンネルを抜け、いつも遠くに見えていた暴風域の山のさらに上に浮いている古城のあたりまで来た。雲一つない真っ青な空が目の前に広がっている。 こんな景色、今まで見たことがなかった。なんて、美しい青なんだろう。 上へ飛び続けていた僕たちは、いつの間にか星がきらめく宇宙空間に来ていた。 光たちが、星々が、僕たちが飛んでいる方向の中心へと集まって巨大な光を成していた。あまりの美しさと心地よい眩しさに、言葉を失った。 そうして僕は、飛んで飛んで、ついに天空へと辿り着いた。 輝く水面に浮かぶ青白い花畑。花は道を作るようにして広がっていて、その先では他のエリアに立っている門の数倍はあるであろう大きな門が光を放っている。 月華が眩しい星空の下で、睡蘭は言った。
睡蘭
心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる。もう、転生しなければならない時が来てしまった。 また あの汚れた世界に──────... あれ? 何かを思い出しそうになった僕は、怖くなって考えるのをやめた。 それでも、不安感は拭えない。
睡蘭
僕の様子に気付いた睡蘭が心配そうに尋ねた。
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夜境
夜境さんが突然、俯きながら言った。 まだ暫く星の子が狭間に来る気配はないから、少しくらいなら大丈夫かな。
睡蘭
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 道をすこし逸れたところにある螺旋状の光の足場を登ると、ちょうど2人が腰掛けられそうなスペースがある。暇なときにぼーっとできる私のお気に入りの場所。 私と夜境さん以外誰も居ないから、とても静かだ。 私が足場の端に足をぶら下げるようにして腰掛けると夜境さんも続いて私の隣に腰掛けた。 私が遠くを眺めて夜境さんの話を待っていると、夜境さんは静かに口を開いた。
夜境
私は夜境さんのほうを見る。 夜境さんは下のほうを見ていた。横顔が、綺麗だなと思ってしまう。 私は視線を元へ戻し、答えるために思い出す。
睡蘭
夜境さんを安心させるため、ゆっくりと素直に感じたことを言うと、夜境さんは少し考えてから、私が予想だにしていなかったことを話した。
夜境
夜境
え? 王国でのことを憶えている......? 私が、言われたことを頭の中で処理できずにいると夜境さんは慌てた様子で「す、すみませんこんな.....睡蘭さんが言ってくださったことを否定するような......」と謝ってしまったので私ははっとしてすぐに夜境さんに顔を向ける。
睡蘭
┈┈┈┈┈┈┈︎︎⟡┈┈┈┈┈┈┈ 「夜境さんはまだ憶えていた.........なぜ、なのでしょうか」 そう言う睡蘭の声は少し震えている気がした。 僕は役目を任される人と同じように、生前の記憶を断片的にだが憶えている。 それが良いことなのか悪いことなのかは分からないが、少し前に思いついていたことを睡蘭に言おうと決心した。
夜境
ダメ元で言ったつもりだったが、意外な答えが返ってきた。
睡蘭
急に顔を明るくして笑った睡蘭に不意を突かれ、つられて少し笑ってしまった。正直嬉しかった。もっと睡蘭の色んな面を見てみたいと思ってしまう。
睡蘭
一瞬、睡蘭は少し気を許したのか、はにかみを見せてくれた。
┈┈┈┈┈┈┈⟡┈┈┈┈┈┈┈ ─────この役目を負うことになってからずっと、孤独だった。 怖い星の子や困る星の子がたくさん間に来て、ずっと苦しかった。なんで私が。 ずっとずっと、辛くても、平静を装うしかなかった。 でも。
夜境
感謝を言った私に被せんばかりの勢いで頭を下げながらそう言った、隣に座る夜境さん。 彼に、救われてしまった。彼自身から言ってくれた言葉が、嬉しくてたまらなかった。これから夜鏡さんと一緒ならずっと役目の仕事を続けたいと思った。 つい嬉しくて気を緩めていた私は、慌てて姿勢を正すと夜境さんも察してくれたのか背筋を伸ばした。 先代の方の言葉を必死に思い出す。
睡蘭