その後も、展開はすべて同じだった。
フィランダーが新たに武器を調達し、最初のうちは優勢に運ぶ。
だけど観客がそれに飽きてきた頃になると、
フィランダーの武器が、急激に劣化していった。
フィランダー
ヨナス
ヨナス
ヨナス
フィランダー
フィランダー
ヨナス
ヨナス
ヨナス
フィランダー
ヨナスがにんまりと笑って見せた途端、
フィランダーがつけていた軽装鎧が音を立てて錆びていく。
フィランダー
ヨナス
ヨナス
ヨナス
錆びすぎて原形も留めなくなった鎧を
フィランダーはどんな気分で見下ろしてたんだろう。
武器もすべて意味がなくなって、防具まで崩れ
呆然と立ち尽くす姿は、見ているだけで痛々しかった。
――が。
キョウ
キョウ
キョウ
キョウ
ここでリタイアを認めてやるほど、優しい魔王じゃない。
フィランダー
キョウ
キョウ
キョウ
キョウ
キョウ
キョウ
キョウ
キョウ
キョウ
キョウ
キョウ
オレの言葉が、どの程度フィランダーに届いたか
それも分からないまま、ヨナスはこの隙を勝機と見て
闘技場を囲む柵を蹴りつけ、空中へ身を躍らせた。
ヨナス
ヨナス
ヨナス
腰の後ろに結わえられていたらしい金の短刀が
まっすぐフィランダーの頭上に振り下ろされる。
オレが張った防御結界が正しく機能すれば、命の危険はない。
それでも女の人や子どもには肝を冷やすものがあるのか
会場のところどころから悲鳴のようなものが上がった。
だけど、オレはそれを笑って見届ける。
ヨナス
ヨナスが変な声を出したことに気付いた観客たちは、
目を覆っていた者も慌てて闘技場の二人に視線を戻した。
奴らが見たのは、襲いかかっていたはずのヨナスが
まったく別の場所で体勢を立て直し、
フィランダーから距離をとったところだったはずだ。
だけどオレは見ていた。
うちの近衛師団長の目つきが変わり、
ヨナスを投げ飛ばしたのを。
ヨナス
ヨナス
フィランダー
フィランダー
フィランダー
フィランダー
ヨナス
ヨナス
ヨナス
ヨナス
フィランダー
フィランダー
フィランダー
長い手足を存分に振るって、確実な一打を入れるべく
一気に距離を詰めるフィランダーに対し、
ヨナスは今度こそ演技ではない必死さで
それを紙一重で避け続けていた。
ヨナス
ヨナス
ヨナス
ヨナス
ヨナス
フィランダー
フィランダー
フィランダー
ヨナス
ヨナス
ヨナスの指先から短剣が投げられ、
それを避けるためにフィランダーの背が反る。
その瞬間、ヨナスはフィランダーの膝に向けてなにか
なにか重りのついた紐のようなものを投げた。
フィランダー
ヨナス
掛け声と同時に、青い手がそれを引く。
フィランダー
あっけなく、あまりにもあっけなく
フィランダーは体勢を崩し、仰向けに倒れ込んだ。
その瞬間、ヨナスが馬乗りに跨がり、
首筋に短剣を押し当てる。
ヨナス
ヨナス
ヨナス
ヨナス
ヨナス
ヨナス
フィランダー
フィランダー
フィランダー
フィランダー
フィランダー
フィランダー
フィランダー
フィランダー
ヨナス
ヨナス
ヨナス
困ったように眉毛をハの字に下げながら、
ヨナスは照れくさそうにフィランダーの手を握る。
とたん、健闘を讃える歓声が沸き上がった。
――ヨナスを罵る声はひとつもない。
むしろ近衛師団長を相手にしながら
ほぼ素手と魔法だけでよく勝ったと
それでこそ勇者一行だと、多くの民が讃えていた。
うちの有力者に土をつけられたのは悔しいが
戦術的な意味で上手を取られたのは素直に認めよう。
壇上に上がり、声を張り上げる。
キョウ
キョウ
キョウ
キョウ
キョウ
盛大な拍手に送られ、二人が闘技場からはけていく。
民衆の盛り上がりを見るに、
すでに興業としては成功と言っていい。
しかし民衆にとってはただの娯楽でしかないが
オレたち兄弟にとってはかなりドでかい意味を持つ!
アンセルム
思わず悔しさに歯軋りしたことに気付いたのか、
アンセルムが一歩後ろで声を落とした。
アンセルム
アンセルム
アンセルム
アンセルム
アンセルム
アンセルム
キョウ
キョウ
アンセルム
頭を垂れるアンセルムを見返り、ニィと笑う。
それさえ聞ければ問題ない。
あとは部下を信じるだけだ。
キョウ
声に、アンセルムが軽く跳ねる。
いや、高く跳躍する。
次の瞬間には闘技場中央で笑みを見せるその姿に、
少し遅れて対峙したウーベは
苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
ウーベ
ウーベ
ウーベ
アンセルム
アンセルム
アンセルム
アンセルム
ウーベ
アンセルム
アンセルム
アンセルム
アンセルム
アンセルム
コメント
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アンセルム推しですね(*´・ω・`)b………… 最近ですか!?えっ!?え!?!?これだけで、生きてけるぐらいこの連載大好きです!!!!!!!!!!!