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高校生の『俺』と女子小学生の『ユイ』。夕方の商店街には、何も起きない時間と、並んで歩く二人がいる。
──そして、それを見守る人々がいる。
それだけの物語。
特別編『商店街の人々』
八百屋のおじさん
八百屋のおじさんは、キャベツを並べ替えながら顎で通りを指した。
自販機の前で腕を組むポニーテールの小学生と、頭をかく高校生。
お花屋さん
花屋のおばさんが、バケツの水を替えながら笑う。
この通りで、あの二人を知らない店主は、もういない。
八百屋のおじさん
お花屋さん
八百屋のおじさん
八百屋は肩を揺らして笑った。
少し離れた駄菓子屋の前で、低学年の小学生たちがひそひそ声を上げている。
小学生A
小学生B
小学生C
小学生B
小学生A
子供たちはくすくす笑いながら、雀のように走り去っていった。
リンゴを選んでいた古本屋の店主が、顔を上げる。
古本屋の店主
八百屋のおじさん
古本屋の店主
八百屋は、改めて通りの向こうを眺めた。
確かに、あの二人が立ち止まっている間だけは、なぜか人の流れが少しだけ緩む。
急いでいる自転車も、早歩きで買い物袋を提げた主婦も、ほんの一瞬だけ、無意識に歩幅を緩めてしまう。
お花屋さん
花屋のおばさんが続ける。
お花屋さん
古本屋の店主
八百屋のおじさん
古本屋の店主
遠くで、鋭い声が響く。
ユイ
店主たちは顔を見合わせて、微かに笑う。
八百屋のおじさん
八百屋のおじさんは、並んだキャベツを慈しむように軽く撫でた。
少しして、二人がまた歩き出す。 ポニーテールが弾むように揺れ、制服の裾が前に進む。
二人が視界から消えると、通りはすぐに、いつもの慌ただしい速さに戻っていった。
八百屋のおじさん
八百屋のおじさんが、誰にともなく、ぽつりと呟いた。
八百屋のおじさん
商店街は、今日も騒がしい。
けれど、あの二人が通り過ぎる時間だけは、世界がほんの少しだけ、やさしく、ゆっくりになる。
その理由を、野暮に聞き出す者は、誰もいない。
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