これは 架空の物語ではない
遠くない未来 必ず現実となる 物語である
2024年9月4日(水) PM2:19
-51h 53m
まさき
稔
まさき
稔
まさき
稔
稔
稔
私と智人は、帝都大学3年次に相良弘道教授の研究室へ配属となった。
相良教授は、微弱な地殻変動から地震を予知する手法を確立するという研究を行っていた。
相良教授のもとで、私達はプレート境界がゆっくり滑る事象を考察する論文を卒論として書き、内外に高く評価された。
その後は、京都にある吉田大学の理学部理学研究科・測地学研究室に進学した。
測地学とは、地球の形状とその変化を正確に読み取り、他の科学分野と融合することにより地球内部の状態を追求する学問である。
私達は測地学を通し、プレート境界がゆっくりと滑る事象の解明を当面の目標として、研究に勤しんでいた。
1995年1月17日(火) AM5:42
私と智人は、夜通し測地学研究室にこもっていた。椅子に座り、コンピュータのモニターとにらめっこをしていた。
牧島 薫
牧島 薫
牧島 薫 69歳 京都府京都市下京区綾堀川町 在住 吉田大学大学院 理学研究科 教授
比金 稔
小柳津 智人
牧島 薫
比金 稔
牧島 薫
牧島 薫
牧島 薫
牧島 薫
小柳津 智人
牧島 薫
牧島 薫
GRAPESとは、「GPS Regional Array for Precise Surveying/Physical Earth Science」の略である。
地殻変動の検出と、高い精度の測地網を構築することを目的として、
全国にほぼ均等に整備された、国土地理院による電子基準点の観測網である。
私達はGRAPESのデータを解析して、微弱な地殻変動を検知することを日課としていた。
比金 稔
比金 稔
牧島 薫
小柳津 智人
比金 稔
六甲大学は、兵庫・神戸にある大学だ。
私達はGRAPESを使った研究を、六甲大学大学院理学研究科の古舘洋次教授率いる、古舘固体地球物理研究室と合同で進めていた。
固体地球物理学とは、変動する地球の活動、例えば地震や噴火などの諸現象を支配する物理法則を研究する学問だ。
古舘研究室は固体地球物理学を研究分野としており、私達測地学研究室とは様々な研究で協力体制をとっていた。
小柳津 智人
牧島 薫
比金 稔
小柳津 智人
智人は露骨に嫌な顔をした。
東海・関東地域に設置されている観測網は、「COSMOS-G2」という。GRAPESとは異なる観測網だ。
牧島 薫
東海地震は、遠州灘から駿河湾にかけてのプレート境界で発生すると考えられていた海溝型地震である。
1970年代以降、この地震の切迫性を訴える論文をきっかけに、地震学界や政府に注目されるようになった。
これを機に「大規模地震対策特別措置法」なる法律ができると、この法に基づき、東海地震においては「予知すること」を前提とした避難計画が立てられた。
そして、東海地震を予知するために、南関東・東海地域に高精度かつ高密度な観測網が構築された。それが「COSMOS-G2」である。
牧島 薫
牧島 薫
牧島さんの声が途切れた。
事務用机がかすかに金属音を立てている。
3人は反射的に机の下へ潜った。
直後、下から突き上げるような揺れが襲った。壁に固定された棚の蓋は大きく開き、中から本がドサドサと落ちてくる。
比金 稔
震度5、強震。 壁に割れ目ができる。墓石が倒れる。煙突が壊れる。
揺れは20秒ほどで収まったが、私にはもっと長く感じた。
直後、牧島さんがすぐに部屋のテレビをつけた。
テレビの画面には、左上の時計以外何も写っておらず、黒い画面を表示し続けていた。
小柳津 智人
アナウンサーは必死に今の状況を読み上げていた。
テレビ
智人はキーボードを激しく叩き、地震計のデータとその解析結果を呼び出した。
しばらくすると、モニターには震央の緯度経度情報が表示された。
小柳津 智人
牧島 薫
比金 稔
私はすぐに受話器を取ると、古舘研究室の番号を入力した。
比金 稔
この場にいる誰もがそう願っていたが、受話器からは呼び出し音が延々と鳴っているだけだった。
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