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森の奥から、小鳥の声がかすかに戻ってきた。

悠翔

クロスボウ、ランタンはあるのか。包帯がないな。

悠翔

あとで陽葵にもらいに行かなきゃ…

悠翔は既に起きて装備を確認していた。

クロスボウの弦を引き、矢先をひとつずつ点検。

その頃、陽葵が寝袋から出てきて、髪に少し寝癖がついていた。

陽葵

もう起きてたんだね。……今日は南の斜面の方?

悠翔

ああ。昨日の地図の空白を埋める。

悠翔

洞窟の向こうに何かあるかもしれない。

陽葵

無理はしないでね。霧もまだ残ってるし……視界が悪い。

悠翔

分かってる。

彼女は小さく息をつき、笑った。

陽葵

やっぱり、言うと思った。

そのやり取りを聞いて、あらたろが背後から大きなあくびをした。

あらたろ

おはようさん。朝から真面目だなぁ悠翔。

あらたろ

俺なんかまだ半分夢の中なんだよ…

あらたろは背負い袋を締めながら、子どもたちの寝ているテントをちらりと見た。

あらたろ

なぁ、子どもたちは置いてく感じでいいんだよな?

悠翔

今日はそうする。探索範囲が広い。危険は避ける。

few minutes later

悠翔

よし、準備完了。出発しよう。

陽葵が頷き、Kanadeが医療袋を背負い、あらたろが斧を肩にかけた。

高台まで来た頃、霧が全体を覆っていた。

空の色は灰に近く、湿った空気が肺にまとわりつく。

悠翔

…相変わらず霧が濃いね。

Kanade

今日、いつもより静かじゃない?

あらたろ

たまにあるよな。嵐の前とか、地震の前とかにこういう感じ。

昼過ぎになっても霧は晴れなかった。

4人は森を見下ろせる唯一の場所である観測塔に向かった。

だが今日は、その景色すら濃い霧に沈んでいた。

陽葵がランタンを持ち、慎重に岩の上へ出る。

Kanade

ここから先、あんまり見えないね。

あらたろ

たかが霧の中なんて、動いてることぐらいはわかるでしょ。w

Kanade

だけど、

陽葵

ねぇみんな。

陽葵

…あそこ。木と木の間……見える?

悠翔は覗き込む。霧が一瞬、風に削がれて、黒い影が覗いた。

頭部の上には、巨大な角があった。

悠翔

いるね。

悠翔は望遠鏡で観察した。

悠翔

まだ僕たちには気づいていない。

あらたろ

ほどほどにしろよ。

悠翔

ああ。

悠翔

……?

悠翔

体の動かし方が人間と似ている…

悠翔

呼吸も僕たちと同じ間隔でしているね。

だが次にまばたきをした瞬間、さっきよりも一本手前の木にいた。

あらたろ

は?

悠翔

……全員、動かないで。

The Deerがわずかに首を傾けた。

悠翔

……位置がバレてる。

陽葵

でも、遠い……でしょ?

だがその瞬間、霧がふっと濃くなった。

––––The Deerの姿が消える。

あらたろ

……消えた。

悠翔

うん。もう動いて大丈夫。

あらたろ

ねぇぇぇぇ、

あらたろ

訳わからんて。

Kanade

……怖かった。

悠翔

次、トレーダーが来た日に聞いてみるか…

悠翔

結構時間が余っているね。あと半日どうする?

あらたろ

俺は拠点戻りたい。

Kanade

私も。

陽葵

私は、少し周辺の閃光石を探してみるよ。

悠翔

僕は食料を集める。

悠翔

じゃぁ、あらたろとKanadeは帰っててね。1時間くらいで向かう。

あらたろ

承知。

Kanade

わかった!

Few hours later

悠翔

…?

木々の葉を叩く音が聞こえた。

悠翔

雨?

雨はあっという間に強くなり、地面を打つ音が耳を塞ぐほど響く。

悠翔

まずいな……

悠翔

地図が役に立たない。

陽葵

もう少しで平地に出るはずだったのに……

悠翔

こっちだ、岩陰がある。

二人が駆け込んだのは、岩肌の奥にぽっかりと口を開けた小さな洞窟だった。

中は乾いており、風も遮られている。

陽葵

……助かったね。あんなに急に降るなんて

外では雨の音が続いていた。

洞窟の中に、ぽつりと焚き火の光が灯る。

陽葵

……すぐ乾くかな。

陽葵は笑いながら指で髪を絞った。

悠翔

もう少ししたら温まるはず。火を強めよう。

雨の音と焚き火の音だけが混ざり合う。

洞窟の奥で水滴が落ちる音が遠く響く。

陽葵

陽葵がマントを脱いで悠翔に差し出した。

陽葵

悠翔のも濡れてるから、使って大丈夫だよ。

悠翔

僕は平気。陽葵が使った方がいいよ。

陽葵

風邪引いたら困るよ。……分け合えば、あったかいから。

悠翔はわずかに視線を落とし、マントの端を手に取った。

雷が遠くで鳴った。

悠翔

ここは安全だから大丈夫。外に音が反響してるだけだよ。

陽葵

……うん。ありがとう。

洞窟では、火が静かに揺れていた。

99夜の森〖 Ⅱ . Marks of the Forgotten 〗

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