テラーノベル

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テラーノベル(Teller Novel)

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大翔

下等生物と見下す裏社会の闇市場に そして、人の手にて行われる死者蘇生法たる錬金術師たちの実験場にも 世界は大きく揺れ動く その日、一人の男が目を覚ました。彼は自らのことを何も覚えていなかった。ただ一つ、自分が「咎人である」ということを除いて。
彼は、自分の名前がわからないことに戸惑いを覚えたものの、さほど気にすることはなかった。何故なら、彼の頭には生まれつき「罪悪感」というものがなかったからだ。
「自分は何なのか」「何をすればいいのか」といった疑問すら抱かず、彼はあてもなく歩き始めた。
そうして歩いているうちに出会ったのが、あの不思議な女の子だった。彼女の名前はアリエスと言った。
二人は意気投合し、ともに過ごすようになる。だが、ある日突然現れた天獄の襲撃により、アリエスとはぐれてしまう。
アリエスを探すため、彼は天獄との戦闘に身を投じる。
そして戦いの中、天獄の指揮官である「リゲル・トゥリアン」と遭遇し、咎人としての記憶を取り戻すと同時に、自らの中にある「何か」の正体を知ることとなる。
天獄との戦いの中で得たものは大きかった。咎人としての力を取り戻したことで、今まで苦戦していた

大翔

清らかさを無くす裏社会に 死を望む犯罪者たちに 死の恐怖から逃れようとする人々のもとに 死神のように現れ、瞬く間に広まった だが、それを扱うには倫理観などというものを捨て去る必要があった これは、そんな話だ
―――
「……ふぅ」
ため息が出る。
こんな日に限って雨とはついてない。
いや、別に雨自体はいいんだ。傘を持ってきているし、濡れても構わない。
ただ、今俺がいる場所は街中ではなく森の中だからなぁ……そう思いながら俺は先ほど拾った棒切れを振り回してみる。木の枝のような感触だ。…………これじゃあ武器にはならないか。
まぁ、いい。どうせ今日はこの森を抜けて家に帰る予定だったんだし。それに、ここら辺の森なら危険な生き物はいないはずだから大丈夫だろう。
「さっさと行こう……」
日が落ち切る前に早く帰ろうと思い歩き出す。
ここは日本ではない。いや、地球ですらない。異世界。それも剣と魔法の世界。科学の代わりに魔法が発達している世界だ。
なぜそんなことを? 誰もがそう思った。ただ1人だけを除いて……
***
「なぁ〜んでまたこんなことになってんのかねぇ?」
「文句を言う暇があるなら手を動かしてください」
「へいへーい」
薄暗い室内でぼやく男にぴしゃりと叱咤の声をかける女。男の方はと言うとだらしなく椅子にもたれかかりながら手元の書類へと目を落とす。
「にしても、まさかあの時お前さんの提案に乗ったことがこうまでうまくいくとは思わなかったぜぇ〜」
「私は貴方の腕を信じていましたよ」
「うっせえ!俺は今最高に気分が良いんだから黙ってろ!」
男は手にしていた書類を投げ捨てると机の上に散らばる

大翔

陸を沈めた海のような、深く沈んだ裏社会に そして、その二つの世界を結ぶ、新たな門が開かれた。その日を境に、人の命の価値は大きく変わった それこそ、人が人として生きる価値を大きく変えるほどに。
死は、決して忌むべきものではない。
それは、全ての生物にとって逃れられない運命だ。誰もが知っていることだ。
だが、それでも人々は願う。
せめて、愛する者とだけは離れたくないと。
だから、そうならないよう、必死になって抗った。
そのために、多くの人間が死に絶えた。
そして、今もなお、彼らはそれを探求し続けている
『世界樹の迷宮IV』完全攻略ガイド――第1話 冒険の始まり
第4章
世界樹 1 【冒険者】
2 【戦士】
3 【魔術師】
4 【僧侶】
5 【スカウト】
6 【学者】
7 【詩人】
8 【錬金術師】
9 【盗賊】
10 【狩人】
11 【侍】
12 【忍者】
13 【神官】
14 【踊り子】
15 【人形使い】
16 【占い師】
17 【遊び人】
18 【賢者】
19 【精霊使士】
20 【修道士・修道女】
21 【竜騎士】
22 【銃士】
23 【格闘家】
24 【弓兵】
25 【水兵】
26 【海賊】
27 【商人】

大翔

珠が転がる音だけが響く
「……ふぅん?」
男はゆっくりと、眼前の光景を観察する。
そこには男が今し方生み出したばかりの、死体があった。
それは男の手の中で砕け散った。男の掌中に収まる程度の大きさの珠だった。
それは確かに人の形をしていた。
だが、既に命は無かった。
ただただ冷たいだけの物体と化していた。
そうして、男は気づく。自分がそれを作り出したことを。
「ああ、またか」
彼はいつもこうだ。
どんな手を使っても、必ず誰かを殺してしまう。
「また駄目だったよ」
彼の声に反応する者はいない。
「あー、やっぱり無理かなぁ」
彼の周りには誰もいない。
ここは、彼にとって唯一の安息の場所なのだから。
「もうちょっとどうにかならないもんかね? 俺だって好きで殺してるわけじゃないんだしさ」
返事は無い。
それでも、男は話し続ける。
「いやまぁ、わかってんだけどね? こんなことしてもどうにもなんないことくらいさ。けどまぁ、他に何ができる訳でもないしな」
彼が手にしたのは、人の命を奪うことに特化した殺人鬼の力だった 彼はそれを「血塗れ」と名付けた。彼は自分のことをそう語った
―――
―――
―――
「おーい! おい、起きろって!」
「うぅ……あと5分……」
「馬鹿言ってんじゃねえよ。もうすぐ学校だぞ」
「……えっ!? 嘘マジかよ!?」
俺は跳ね起きた。まず目に入ったのは自分の部屋の壁に掛けてあった時計の針の位置と窓から差し込む日の光。俺の記憶通りならまだ登校時間まで余裕があったはずだ。
「なんだよ、驚かせんじゃねェよ。寝坊助め」
「んなこと言ったって、お前だって昨日一緒にゲームしてただろ? なのになんでそんな早く起きるんだ?」
「あぁ? オレはちゃんと夜中に切り上げて布団に入ってすぐに寝たぜ。誰かさんと違ってな」
「くそぉ~」
こいつは俺の幼馴染みで名前は八坂英哉。小学校からの付き合いだが、いつもこうして俺を起こしに来てくれている。

大翔

柱の入れ替えに伴い、世界情勢が大きく変化する。2030年に起きた大震災によるエネルギー不足を受け、各国家間にて新たな発電システムの構築が検討されていた最中のこと。国連加盟国の一つである日本は、かねてより研究が進められてきた核融合の研究に一定の成果が出たことを受け、新エネルギーの実用化を目指すため国際共同研究チームを発足させた。
この物語は、この実験に参加した二人の日本人を中心に語られるものである。
------
日本の大学に通うごく普通の学生だった俺は、ある日突然異世界へと飛ばされてしまった。そこで出会ったのが、俺と同じ日本からやってきたという女性、橘 茜さんだ。彼女の存在を知ったとき、正直なところ俺は戸惑った。何せ彼女は、俺のいた世界では決してお目にかかれないような美人だったからだ。さらに言うなら巨乳だし。まあ、これはどうでもいいか。

大翔

ともかく、彼女と出会ってからの数日間はとても楽しかったし、元の世界に帰る手段を探して奔走していたときは辛かったけど充実してもいたと思う。だけど……そんな生活にもついに終わりのときが訪れたんだ。
――あの日、俺たちが乗っていた船が沈没してしまったのだ。
船旅の途中、魔物に襲われたせいらしい。乗組員たちはみんな命を落としてしまい、辛うじて生き残ったのは俺と茜さんの二人だけだった。そうして途方に暮れていた俺たちの前に、突如として現れたのが黒髪の少女だ。名をルウと言うらしく、なんでも彼女が言うには、ここは俺と茜さんが住んでいた世界とは違う世界なのだそうだ。つまりは別次元とかパラレルワールド的なアレなんだろう。まあ何にせよ、いきなりそんなことを言われても信じられないし、正直なところどうすれば良いのか分からないというのが本音だったりするわけだが……。
「とにかくまずはこの森を抜けて街へ行こうよ! 話はそれからだって!」
という彼女の提案に従って、とりあえず森の中へと足を踏み入れてみたのだけれど――いかんせん道がない上に歩きにくいことこの上なくて困ってしまった。おまけにさっきから変なものばかり目に入ってくるし、もう本当に勘弁して欲しいんだけど。
「うぅ~ん。こんなときスマホがあれば便利なのにねー」
「え? ああ、うん、確かに便利かもだけど……ってか茜さん、まだそれ持ってたんですか?」
「もちろんだよっ! お兄ちゃんといつでも連絡取れるように、肌身離さないもん!」
「あー……そうかよ」
「なんだよー、冷たいね。私とお兄ちゃんの仲じゃん?」
「いや別にそんなんじゃねえけどさぁ」
僕はスマホの画面を見る。そこには妹からのメッセージが表示されていた。『今日は何して遊ぼっか?』という内容だ。いつも通りのやりとり。僕の日常だった。
僕の妹──如月彩乃は、今時の女子高生らしくSNSにハマっているらしい。友達とのやり取りはもちろんのこと、ゲームアプリなんかにも手を出しているとかなんとか。まぁ要するに、そういう年頃なのだ。
だがしかし、一つだけ解せないことがある。
どうしてこうなった? 僕と妹の関係性ってこんな感じじゃなかったはずだろ? 少なくとも僕はそう思っていた。
事の始まりは一年前に遡る。中学二年生になったばかりの春休み。両親の仕事の都合で一人暮らしを始めた矢先のことだった。
「お兄ちゃ~ん♪」
インターホンを押しながら元気よく呼びかけてくる声の主は、何を隠そう我が愛しの妹

大翔

魚の子
と呼ばれた少年は、その日、初めて人の血を見た。いつものように学校から帰ろうとした時だった。後ろから何か大きなものがぶつかってきたと思ったら、背中が熱くなった。痛みを感じて振り返るとそこにはナイフを持った見知らぬ男の顔があった。彼は自分の胸に突き刺さったナイフを見てようやく理解した。自分が今殺されようとしていることに……
(死にたくない!まだやりたいことがいっぱいあったんだ!!こんなところで終わりたくなぃいい!!!)
そんな願いも虚しく、2025年に勃発した世界大戦にて、その技術は軍事転用された。各国軍による人体実験により、新たな発見がなされた。不死化の際に現れる肉体の変化だ。これはつまり、死を回避してしまえば、不死者として更なる変化を遂げる可能性があることを意味していた。
それから100年後、21世紀の終わりには、不老不死を望む人々が一定数存在した。彼らは自ら「不老不死の会」を組織し、自らの体液と引き換えに、それを実現させようとしていた。
そして22世紀に入り、不老不死を求める人々の会は不老不死の薬を完成させた。それを知った裏社会の者達は、彼らに対抗するために死をもたらす毒を手に入れた。これは、そんな時代の物語だ。
「死なない人間がいるって? 馬鹿げた話だよ全く……」
私はそう呟きながら、手にしていたコーヒーを飲み干す。目の前にいる男は私の言葉を聞いて苦笑すると、肩をすくめてみせた。
「俺だって最初は信じちゃいなかったさ。だが実際に会ったんだ、間違いねぇよ。まぁもっとも、あいつの場合は不老不死じゃなくて死ねなかったんだけどな」
「どういう意味だい?」
私が尋ねると、彼は煙草を取り出して火をつける。紫煙が立ち上り、部屋の中に広がっていった。
「あいつはな、死ぬ直前に必ず夢を見るんだよ。自分の命の終わりを告げるような悪夢をな」
「それで、どうなったっていうんだい?」
「決まってるだろう? 目を覚ましたらまた生きてるのさ。まるで何事もなかったかのようにな」
「……つまり、その少年は何度も死んで、生き返っているということかい?」
「あぁ、そうだ。だからあいつには『不死』なんて大層なものじゃないが、『死ねない体』になってしまってるわけだ」
「ふぅん……」
私は顎に手を当て考える。その話を鵜呑みにするならば、確かに彼が言った通り「死ねる人間

大翔

酸素の供給を絶ち窒息させ、あるいは心臓を停止させて殺す あるいは直接の接触による体温の低下を以て殺害する そうした手法を用いずとも、ただ一滴の薬剤を用いるだけで、容易に人を殺せるようになった。
かくして人類の半数が死に絶え、残った者も文明の崩壊とともに散っていった
「なあ……お前さぁ、何考えてんだ?」
少年の声だった。まだ幼く、高い声だ。
「別に? ただ少し考え事をしていただけよ」
答える声は低い。落ち着いた女性の声だった。
「そうかよ。ならいいけど」
少年はまだ納得してなさそうな顔をしながらも引き下がった。だがすぐにまた口を開く。
「なんにせよ!俺は絶対に許さないからな!」
「まぁそう怒んなって。こっちだって好きでやってんじゃねぇんだよ」

大翔

言いながら俺は目の前の机の上に置かれた、透明な瓶に入った紅い水の入った小さめの注射器を見た。俺の言葉を聞いたせいか怒りに震えていたはずの少年の顔が一瞬にして青ざめる。そりゃそうだろ?これから自分の腕の中に死が入り込んでくるんだもんな。
「安心しろって。お前みたいなガキを殺すつもりはないよ。ただちょっとの間眠っていてもらうだけだ」
「え……?」
困惑の色を浮かべている少年に向かって、俺はニヤリと笑みを見せた。そしてポケットの中から小型のナイフを取り出して、その刃先を彼の首筋に当てながらこう言った。
「なあ坊主、お前の望みは何だ?金か、名誉か、それとも女?」
彼は怯えた表情のまま何も答えなかった。俺としてはそんな事はどうだって良かったし、そもそも答える必要も無いと思っていた。だがこのまま黙っていても仕方が無いと思ったのか、おずおずといった様子で口を開いた。
「……僕は、死ぬ前に何か一つ願い事を叶えてくれるっていうなら、僕の家族に会いたいなぁ……」
「あら、それじゃあ私と一緒に死にましょうか?お兄さん?」
「えっ!?いや、あの……そういう意味じゃないんですけど……。あと君、何歳ですか?」
「女の子に年齢を聞くなんて失礼ね!私は17よ!」
「うーん、やっぱりまだ子供だよね……。僕の方が大人に見えるだろうし」
「そ、そんなこと無いもん!!もうすぐ

大翔

いつもなら僕が起きる時間まで眠っていることが多いのだけど……珍しいこともあるものだ。まぁ偶々目が覚めたとかそういうことなんだろうけどね。
僕はそう思いながら台所に行き、冷蔵庫の中から牛乳を取り出してコップに注ぐ。それからそれを一口飲み込んで喉を潤すと、洗面所に行って顔を洗い歯磨きをして髪をセットして服を着替えた。そして最後に鞄を持って家を出る。玄関の鍵を閉めてマンションの敷地から出たところでスマホを操作して時間を確認すると8時45分だった。
9時に駅集合だからあと15分ほど余裕があるなと思いつつ、少し早足気味に待ち合わせ場所に向かう。すると5分くらい歩いた辺りで後ろから聞き慣れた声がかけられたので振り返った。そこには僕と同じ制服を着た茶髪の女生徒が立っている。彼女の名前は小鳥遊優衣、僕のクラスメイトだ。
「おーい!悠真!」

大翔

優衣は大きく手を振りながら駆け寄ってくると勢いよく抱きついてきた。突然の出来事だったので思わずよろけてしまったけどなんとか踏ん張って倒れることだけは防ぐことが出来た。そんな僕の反応を見た彼女が悪戯っぽく笑う。
「おっ?さすが男の子だね〜、こんな可愛い女の子に飛びつかれて倒れなかったなんて偉いぞ〜」
そう言いながら僕の頭を撫でるのは、僕と同じぐらいか少し下に見えるような子だった。
肩口まで伸びた髪と、それとお揃いの色をした瞳を持った綺麗な顔立ちをしている。
だがそれよりも目を引くのはその服装だろう。白衣を着ているということは研究者なのか……それにしてはかなり若いように見えるけど……。
「んー?」
そんな風に観察していたら、その子が不思議そうな顔をこちらに向けてきた。僕は慌てて視線を外す。
「あぁ、ごめんなさい!ちょっとびっくりしちゃって!」
「いいよ別に気にしないから。それより立てるかな?」
差し出された手を取って立ち上がると、改めて自分の身体を見下ろす。あちこち汚れているけれど、幸い怪我らしいものは見あたらなかった。
「うん、大丈夫みたいです」
「そっか、なら良かった」
ニコッと笑う彼女に釣られて僕も笑みを浮かべると、彼女の後ろに控えていた男性が声をかけてきた。
「あの、ありがとうございます。おかげで助かりました」
「うぅん、困った時はお互い様だからねぇ。ところで君の名前は何て言うんだい?」
「えっと、タケルといいます」
「ふむふむ、良い名前じゃないか」
満足げに微笑んでから彼女は俺に背を向ける。
その背中に向けて俺は声をかけた。
「おい!待ってくれ!」
足を止めてこちらを振り向く。
「……何?」
「お前はいったい誰なんだ?どうしてこんなことをしてるんだ?」
彼女はまた口元に手を当てながらクスリと笑った。
「そんなこと聞いてどうするつもりなのよ。あなたにとって私はただの通りすがりの女に過ぎないでしょう?」
そう言って首を傾げる。
「確かにそうだ。だけど、俺はどうしても知りたいんだよ。君みたいな女の子に会っておいて何も知らないままじゃ嫌だ」
彼女の目を見ながらはっきりと伝える。
「ふぅん……変な人ね」
「よく言われるよ……」
「まあいいわ。それなら教えてあげる」
彼女が死んだ。彼女の名を記すことはもう無いだろう。だが私は彼女に感謝しなければならない。彼女が私に与えてくれたものは余りにも大きい。私が今ここにこうしていられるのは間違いなく彼女のお陰だ。彼女と過ごした時間はとても楽しかった。何時かまた会える日が来ることを願っている。
「さあ、早く行きなさい」
「…………」
「何をぐずぐずしてるんです!早くしなさい!」
「…………はい」
私の父は厳格な人だった

大翔

民俗学
会 通称ミケ学会は、古代神話を研究している団体だ。主な活動は、各地に残る伝承の調査と考察だが、他にも研究の成果を発表し、議論を交わす場を提供している。

大翔

ミケ学会本部のある、ミケ市は人口15万人程の地方都市であり、その中核を成すミケ市は県有数の商業都市である。ミケ市の繁華街にある、喫茶店「パフェナ」に、民俗学界の重鎮、田中喜三郎博士の姿があった。
「いらっしゃいまし。お好きな席へどうぞ」
店に入ると、すぐにウェイトレスの女性が声をかけてきた。店内はそこそこ混み合っているようだ。田中は窓際の席を選び腰掛けると、コーヒーとショートケーキを注文した。
「今日は何の御用ですか? また新しい説をお持ちになったとか?」
田中が座るとほぼ同時に、ウェイターの女性が水の入ったコップを置きながら言った。
「うむ……まあな。実は少し、聞きたいことがあってね」
そう言うと、田中は鞄から紙束を取り出した。そしてその中の一枚を抜き出すと、机の上に広げて見せた。そこには何やら奇妙な図形が描かれている。円の中に三角形が二つ描かれたものだ。
「これは何か分かるかね」
「さぁ……何でしょう。魔術陣でしょうか」
「そうだ。我々の世界に伝わる『魔法』を使う為に必要な道具の一つだよ。この世に魔力と呼ばれるものが存在するならの話ではあるが」
「ああ! 聞いたことがあります!」
「知っているのか?」
「はい! 確か……そうです!
『死』の概念を抽き出す実験の失敗作、だったかと思います!」
「なるほど……つまり、アレだな? いわゆる失敗作って奴だ」
「えぇっと……」
「まぁいいさ。それで? そいつらはどうなったんだい?」
「いえ、それきりです」
「ふぅん」
「あ、あの……」
「なんだい?」
「あなたが私にそれを望むなら」
そう言ったのは誰だったろうか。私はそんなことを思いながら、目の前の少女を見た。少女は私の手を握り締めると、真っ直ぐな瞳を向ける。
「私はあなたの望むようにします」
彼女の声は震えていた。手は小さく震えているし、目元には涙の跡がある。それでも彼女は笑っていた。だから私は安心して彼女に言うことができたんだと思う。
「じゃあ、お願いしようかな。……ありがとう」
「はい!」
少女は満面の笑顔を見せた。そして、握ったままの手を引くようにして歩き出す。

大翔

神食たい、神の肉を食べたい。そう言い出す人間が少なからずいる。これは宗教的なものではなく、単に栄養失調による飢餓感に由来するものだ。だが、それは決して叶えられない望みだった。
人の手が届く範囲に居る生物の中で、最も美味しいとされているものは豚だ。それでも、毎日食べるわけにはいかないし、そもそもそんな余裕はない。
次に高い地位にいるのは牛だろう。ただ、牛を食べることは禁じられているわけではないものの、牛を育てるにも金がかかる。
最後に高い地位にいるのは鶏だ。鳥の中でも一番安い鶏肉ですら、1羽100円程度で手に入ることを考えると、かなり安く買えることがわかる。
もちろん、牛も豚も鶏も、その命を刈り取られれば死ぬ。だが彼らにとっての死とは、心臓の停止による仮死状態を指す。故に、彼らが死に瀕すれば、それを看取る者達の手によって蘇らせることが可能だ。
ただし、牛が死んだらどうだろう? 当然、心臓マッサージなり人工呼吸なり蘇生措置は行われるだろう。それでもダメなら救急車を呼ぶし、そもそも死んだら終わりなのだから火葬してしまえばいい。
つまり牛の命は、人間よりも遥かに簡単に救えるものだ。ならば何故、人々は牛を殺したくないのかと言えば、そこには理由がある。例えば牛を殺すことで、肉屋が儲かるとか。あるいは乳を取る牧場主にとって、牛の死とは即ち商品の損失だ。だから殺したくはない。しかし牛の肉を食べることはできるし、ミルクを飲むこともできる。ならば、殺すことに問題は無いはずだ……。いや、そんなことはないだろう。牛だって生きているんだぞ? 生きるって言うなら、もっと大切に扱えよ!……まあ、こんな感じのことを言ったところで、今更どうしようも無いんだけどな。
そもそもの話、俺には家畜を殺すことなんてできないわけだし。俺はただ単に、牛殺しを嫌悪しているだけの、普通の大学生に過ぎないのだ。そう、普通なのだ。別に特別ではない。それなのに……。どうしてこうなったんだろうか。
「おい、そっち行ったぞ!」
「了解ですっ!!」
「……ふぅ、これで全部か?」
「みたいですね」
「よし、じゃあさっさと帰ろうぜ」
「はい」
目の前に広がる光景は、とてもじゃないけど正視に耐えられるものではなかった。辺り一面に転がるのは大量の死体。それも一つ残らず、首が切断されていた。それだけじゃない。体中の至る所に切り傷があり、中には内臓まで引きずり出されているものもある。酷い有様だった。
俺は思わず顔を背けたくなる衝動を抑え込みながら、自分の足下に落ちていた血まみれのナイフを拾い上げる。これが何

大翔

冥界探索部隊『ナイトウォーカー』に所属する男・アルフは、ある日、同僚である女性隊員リリアナとともに任務へと赴くことになった。
依頼主から提示された情報をもとに、目的地へ向かう二人だが……。
―――――
【あらすじ】
◆死者の蘇生を可能とする薬の開発に成功した企業があるという噂を聞き付けた主人公。彼は真偽を確かめるべく調査に乗り出すが……? ◆シリアスあり、ほのぼのあり、ギャグもありな作品です! ◆基本は一人称視点ですが、途中から三人称視点になります

大翔

魔に惹かれる裏社会に そして、今まさに死の抽出を試みる者達がいる……。
――『ゼェーベルン・オンライン』第1章より抜粋
***
薄暗い部屋に、一台のPCがあった。モニターには複数のウィンドウが表示されており、その内の一つには、簡素な文字列が書かれている。"To be continued…….."――『ゼェーベルン・オンライン』第一話「はじまり」より抜粋
「あぁ~! くそっ!!」
薄暗い部屋の中で、俺はそう叫びながら頭を抱えていた。
ここは俺の部屋だ。高校二年生になったばかりの俺は、今日から一人暮らしを始めることになっていた。両親は仕事の都合で海外へと行ってしまい、家には誰もいない。だからこうして、夜遅くまでゲームをしていたんだが……。
「まさか、こんな事になるなんてなぁ」
画面を見ながら、ため息をつく。そこには、こう書かれていた。
【プレイヤーネームを設定してください】
キャラクター作成用のページだろう。
このゲームの名前は、『ゼェーベルン・オンライン』と言うらしい。意味はよく分からないけど、まぁそんな事はどうだっていいか。
名前を入力する欄の下には、いくつかの選択肢がある。上から順番に見てみると、まず一つ目。『あなたの死に方』だ。これはもう説明不要だろう。つまり、自分がどのように死ぬかの選択画面。二つ目は、『あなたの死』。こちらは、文字通り自分の死因を選ぶことができる。三つめ、四つめの項目を見ていこう。
一つ目の項目は、ずらりと並んだ無数の選択肢の中から選ぶようだ。どれどれ……『安楽死』『毒殺』『刺殺』『絞殺』『銃殺』『爆死』『焼死』『餓死』……なんじゃこりゃ。ほとんど殺人じゃないか! いや待てよ、よく見ると一番下にも何か書いてあるぞ?
『自殺』ってなんだ? 普通こういうときは、寿命とか病気による自然な死とかを選ばせるもんじゃないのか? まあいいや。とりあえず適当に選んでみよう。えーっと……そうだなぁ、じゃあやっぱりここは王道の事故死で。死因は……ん?これ何だっけ。ああそうか。あれだ。交通事故! よし決定。これでいこう。
俺はマウスを操作して、『死に方を選ぶ』を選択した。
すると画面が変わった。どうやら今度は選択肢が表示されるようだ。
『事故』『病死』『老衰』……どれもピンとは来ないが、さっきと同じように直感的に選択してみることにする。
ポチッ……カチリ……ブゥン…………ヴウウン……!!!!
「あーっ!! あっああ~~!!」
「どうだ? いい気分だろう?」
「ひゃぁいぃい!! きもちいでしゅぅうう!」
「ほらもっと喘げよぉおおお! アハァ!」
「んぎゅうぅううう!? イッググゥウウウウッ!」
ビュルルルルーーーーッ!! ドピュッドピューーーーーッ!!
「ハッハーッ!! まだまだこんなもんじゃないぜぇええ

大翔

無料より恐いものはない。これは真実だ。しかし、世の中には、無料で手に入るものが山ほど存在することをあなたはご存知か? 例えば、あなたの手元にあるスマートフォン。これは無料ではないけれど、買うにはそれなりのお金が必要だ。
だが、もしこれがタダになったらどうだろう。もちろんそんなことはあり得ないし、そんなことになったら大変な騒ぎになること請け合いだが、万一そういうことが起こったとしたら……。
***
『本日のニュースです』
テレビの中でキャスターが原稿を読み上げる。それをぼんやり眺めながら、私は朝食をとっていた。トーストに目玉焼き、サラダ、インスタントコーヒーといったありふれたメニューだ。いつもなら、ニュース番組を見ながら食べることはないのだけれど、今日だけは特別だった。
昨晩、私のもとに一本の電話が入った。相手の名前は、瀬野真樹。私が付き合っている男性の名前だ。
真樹とは大学1年生から付き合い始めてもう6年目になる。お互いに社会人になってからもずっと交際を続けていて、そろそろ結婚の話が出てもいい頃だと思う。事実、何度かそういった話が出たことはあったし、私の両親にも挨拶をしたこともある。だけど、いざ具体的な話をしようとすると、どうにも話が進まなくなってしまうのだ。理由はいくつかあって、まずは彼が仕事に夢中になっていることがあげられると思う。彼は製薬会社の営業マンなのだけど、入社して3年目にして大きなプロジェクトを任されているらしく、毎日

大翔

立て札の読み方がわからなかったんだろうなあ……。まあいいけどさ。
「おーい! そこのお兄さん!」
ん? 俺か? 声の方を見ると、そこには、俺と同年代くらいの少女が立っていた。
髪の色は黒に近い茶色だ。
服装は上下とも黒を基調とした服だが、袖口や裾などに白いラインが入っている。
あと目を引くのはその背丈だろう。150センチ前半ってところかな。
「えっと、何か?」
「お兄さんの持ってるもの見せてもらってもいいですか?」
「これのことかい?」
俺は手に持っていた袋を差し出す。

大翔

そこまで急いで死ぬ必要のない裏社会の人々に そして、死に怯える人々にとって 死という概念を抽出し、それを加工して作り出す「死の概念薬」は、まさしく夢のような品物だったのだ。
死の抽出による不老長寿の実現と、それを用いた不死化 それこそが、後に人類の文明史を大きく揺るがす大事件の始まりであった……
―――――――――
これは、そんな世界の片隅の物語だ。
薄暗い地下

大翔

求めるのはワンフレーズだ。「死なないこと」
裏社会に求めたのはワンワードだ。「死ぬこと」
そうして生まれたのが、死をもたらす存在「死神」である。
死神は、死に焦がれるものの前に現れる。死を望むものは、死神と契約を交わすことでそれを得られるようになる。契約とは、つまり魂を売り渡すことだ。一度売ったら最後、二度と戻らぬそれを手放す代償として、対価を得る。
対価は様々だが、死神はそれらを全て受け入れた上で契約を結ぼうとする。契約は、必ずしも一方的なものにはならない。死神との契約は、両者の同意があって初めて成立するものだからだ。
しかしそれでも、死神と契約した者は例外なく不幸になると言われる。何故なら、死神はその力を持ってしても

大翔

無声動画投稿サイトにアップロードされた一編の詩がある。詩と呼ぶべきなのかさえ分からないほど稚拙な文章だ。それでも私はそこに込められた思いを想像し、胸を締め付けられるような思いだった。
『わたしたちはいつも誰かの死を願う。』
「お前さん、名前は?」
男が問うてくる。答えようと思ったけど、声が出なかった。男は少し困ったように笑みを浮かべると私の額に手を当ててきた。ひんやりとした手が心地よくて思わず目を細める。
「喋れねえのか……じゃあ無理して話さなくていいぜ。俺は別にお前さんの過去に興味なんてないしよ」
私の名前を知る必要はないということだろう。だけど、私がここにいる理由は知りたいはずだ。だから伝えようとした。

大翔

不健康バンジージャンプは流行の兆しを見せ始め、裏社会では公然と流通するようになった そうして人々は、いつ自分が死んでもいいように準備を始めた。
その日、私はいつものようにベッドの上で目を覚ました。
寝ぼけ眼をこすりながら起き上がると、窓の外に広がる青空を見て思わずため息をつく。
ああ……今日も一日が始まるのかあ。
そんな憂鬱な気持ちを抱えつつ、とりあえず朝食を食べようと部屋を出た。
すると廊下の向こう側から、誰かがこちらに向かって歩いてくる姿が見えた。
――げっ! あいつ

大翔

証明不可な裏社会の手に 世界は今一度、揺れ動く これはそんな時代の物語だ。
『死神』
そう呼ばれる男は、今日も人を殺める。彼の目的はただ一つ。彼が望む死に方ができる相手を探し出すことのみ。彼はそれを叶えるためならなんでもやった。
殺人はもちろんのこと、強盗、恐喝、詐欺……果ては麻薬密売にまで手を出した。
それでもまだ、彼を満足させられるほどのものではなかったけれど……
彼の名は、アヴィリオ・ザナルディエッリ。齢20にして、世界最高峰の天才科学者と称される男だ。
彼が生み出した理論と装置は、後に『紅涙』と名付けられることになる。その名は彼の故郷に由来するものだ。
彼は、自身の提唱する理論に基づいて、『死の抽出装置』を完成させた。これは人体に埋め込まれることで作動し、人の体内に眠るエネルギーを直接抽出することで、対象の命を奪うことができる。
ただし、これは理論上の話。実際には、一度使用しただけで対象は絶命してしまうだろう。なぜならば、人体とは元来、死にたくないと思っているからだ。だからこそ、これを使用する者は皆、自分が死ぬことを受け入れているか、あるいは自分を殺すことでしか命を絶てないものに限られる。
さて、ここで一つ疑問が生じるはずだ。ならばなぜ、そんなものが世に広まったのか? 答えは極めて単純だ。
この技術は、殺人よりも効率よく人を殺せるからである。
例えば、死刑囚がいるとする。彼は処刑されるまであと1週間の命となったところで、この技術を用いることができる。するとどうなるか? まず、彼は自分の死刑執行日の前に自殺し、次に、彼の肉体から抽き出された精気が、彼の魂

大翔

虚数領域と呼ばれる異世界がある。そこには、異能を持つ者たちが集まる世界だ。ここでは、様々なルールが存在する。例えば、能力の使用許可証というものがあって、これは、能力を使った犯罪を犯した者が取得するものなのだ。また、虚数空間内でのみ有効な通貨もあるし、逆に、虚数領域でしか使えないものもある。他にも、虚数領域にしか生息しない生物もいる。
そんな世界で、ある時事件が起きた。なんと、虚数領域の管理者の一人である神格が何者かに襲われて瀕死の重傷を負ってしまったのだ。当然、管理人たちは犯人探しを始めた。その結果、犯人は見つかったものの、返り討ちに遭ってしまったらしい。この事件を契機に、世界は大きく動き始めた。まず、事件を起こしたのは、虚数領域の管理人たちであったことが判明した。彼らによると、自分たちの権限を使って世界を滅ぼそうとしたそうだ。幸いにも、その計画は阻止されたようだった。しかし、彼らがそこまでして世界を滅ぼそうとする理由は不明だ。ただ一つ言えることは、彼らの行動は決して許してはいけないということだろう。そして、もう一つ明らかになったことがある。それは、この事件を引き起こした黒幕についてだ。どうやら、この事件の裏には、虚数領域の管理者たちが暗躍していたようだ。しかも、彼らは自分たちが管理する世界の人々を実験台にして、何やら人体実験をしていたらしい。これは、決して許されることではない。そこで、我々はこの事実を公表しようと試みるが、我々の前に敵が立ち塞がった。そう、我々を裏切ったのは、かつて仲間だった者たちなのだ!我々は裏切り者たちを追い詰めるも、惜しくも逃してしまった。しかし、奴らはまた必ず現れるはずだ。その時こそ、我らの手で裁きを下してやる!! 俺は今、非常に困っている。なぜなら、目の前にいる女の子からずっと質問攻めされているからだ。
「ねえ、君はどこから来たの?」
「えっと……日本ってところだよ」
「ニホン?聞いたことがないわね……」
「そうか……ありがとう」
俺の言葉を聞き流し、女性は手元の資料に目を落とす。
ここはニホンの首都トーキョー。俺はそこで最も栄えていると言われる街に来ている。
「悪いけど私も忙しいのよ。あなたみたいな訳ありそうな人に構ってられないの。他の職員にあたってちょうだい」
「そこをなんとか!な?」
「無理なものは無理!」
女性職員はそう言って資料をまとめ始めた。
「じゃあせめて、ここら辺で一番いい宿を教えてくれないか?礼ならちゃんとするからさ」

大翔

船の中。
私は今、船に乗っている。いや、正しく言うならば「乗せられている」だ。
何故なら私の足には鎖が付いているからだ。私の名前は「藤木愛理衣」16歳。高校二年生だった。つい先日までは……。
事の始まりはある日の朝の事だった。いつものように目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋だった。慌てて起き上がり辺りを確認すると、部屋の隅っこに見慣れない装置が置かれていた。どうやらあれが原因でここに連れて来られたようだ。そういえば寝る前に変な夢を見た気がするが思い出せない。
とにかくここから逃げなければ! と思い立ち上がって扉の方へ向かうと、ガチャリと音がして鍵がかけられていた。そして壁際にはモニターが設置されていて、そこには白衣を着た男性の姿があった。彼はこちらを見るとニタァと笑った後、手に持っていたスイッチを押した。すると突然天井が落ちてきて私は押し潰された。
次に目が覚めた時、私はベッドの上にいた。身体を起こすと全身の痛みを感じた。どうやら怪我をしているらしい。私は辺りを見渡してみた。そこは病院だった。何が起こったのか理解できずにいる私の元へ医者らしき人物がやってきた。彼は私のことを酷く心配してくれたようだったが、私自身なにがあったか覚えていないし、思い出せないのだから説明しようがなかった。私が目を覚ました時には既に日は落ちていたようで、窓の外は薄暗くなっていた。
それからしばらく入院していた私の元に警察が訪れ、私は逮捕された。理由は簡単だ。私の病室には死体があったからだ。それもただの死体ではない。死んでいるはずなのに動いている、奇妙な死体だったのだ。警察は当然それを私が殺したと思い込んだようだ。
だが私は無実を主張し続けた。そうして3日ほど勾留された後、ようやく釈放された。しかし警察は納得しなかったようで、またすぐに呼び出されることになった。今度は弁護士まで連れてこられて、長々と取り調べを受けた。その間、私はずっと黙秘を貫き通したが、結局最後まで罪を認めることはなかった。
そんなこんなで、実に一週間ぶりに外に出ると、そこは見知らぬ街になっていた。
まず第一に、空の色が違う。私が最後に見た時はまだ夕方くらいだったが、今はもう夜になっていて、星が見えていた。

大翔

次に道行く人々の格好が違う。私の知っている制服姿ではない。私服だ。それも見覚えのないデザインのものばかり。皆、何かしら武装をしている。中には拳銃のようなものまで持っている者もおり、まるでSF映画の世界にいるようだ。私は自分の服装を見る。スーツではなく、私服を着ている。やはりおかしい。ここはどこなのか?そもそもいつの間にこんな場所に来たのか?そんなことを考えながら辺りを見回していたら、後ろから声をかけられた。振り向くと、そこには男が立っていた。背が高く、細身の男だった。歳は20代後半くらいか。どこか冷めたような目をしており、感情を感じさせない表情をしていた。男は口を開く。
「君は誰?」
男の問いに対し、私は答えることができなかった。どうしていいかわからず戸惑っていると、再び男が話しかけてきた。
「君の名前は?」
名前……そうだ、名前はなんと言うんだったっけ。思い出せない。そういえば私は誰なんだ。わからない。何もかも。自分が何者かすら思い出せないことに困惑していると、また男が話しかけてくる。

大翔

何でそんなレベルの感情で悪に
手を染められるのか理解に苦しむなぁ……まあそういう訳だ、私は君の敵ではないよ 君だって私のような存在を相手にして良い事なんて無いだろう? だからお互いにここは退こうじゃないか そう言って手を差し伸べる。握手の形ではなく、あくまで敵対の意思が無いことを示すためのものではあるが、それでも私の誠意は伝わったようで、彼はゆっくりとこちらに手を伸ばしてきた。
「悪いけどお断りだよ、俺はまだお前を信じられないんだ」
差し出された手に握力を込めて握り潰す。
「ぐっ!」
「君は勘違いをしているようだけれど、私は善良な一般市民であって悪人じゃないんだよ?」
「なら!どうしてこんなことを!?」
「死の抽出」
「死の抽出」
その日、世界は恐怖に包まれていた。誰もが明日を恐れている。明日死ぬかもしれないと怯えている。だがそれでも人々は生きている。生きることに意味などなくとも、ただ死にたくない一心で足掻いている。
そんな人々が身を寄せ合うシェルター都市、ゼェーブル市。
そこの一角にあるレストランで、少年はコーヒーを口に運んでいた。
彼の名はシン・アスカ。今年から

大翔

優秀さが全然伝わってこない
それどころかむしろ劣っているようにすら見える そんな小説を書いてみたいものだ。
さしあたって、この一文を読んでみてほしい。
【あらすじ】
主人公は高校二年生、成績も普通、部活にも入らず帰宅部のエースと呼ばれている。
夏休みのある日、主人公の元に届いた手紙をきっかけに、彼は奇妙な冒険に巻き込まれることになる―――。
【登場人物】
・主人公……ごく普通の高校生だが、実は隠された才能があるらしい。
・ヒロイン……主人公の幼馴染。いつも元気いっぱいな女の子。
・クラスメイトA……クラスの中心人物でサッカー部に所属している爽やかなイケメン君。
・クラスメイトB……クラスの隅っこにいる地味な男の子。
・担任教師……主人公たちのクラスの担任を務める女教師。
こんな感じだ。
読み終わったあなたならきっとこう思うだろう。
なんだこれ? 意味がわかんねーよ! なんの才能だよ!? まったく伝わらねえじゃねぇか!!…………まあ落ち着け。
確かに一見すると何を伝えようとしているのか全くわからない。
しかし、これは立派な伏線なのだ。
つまり、本文を読み終えた読者は、作者が伝えたいことを理解出来るようになっているのだ。
そう、この作品を読んだあなたには、すでに隠された才能があったのです。
だからと言って別に何か特別なことが出来るようになるわけではないけどね。
それに

大翔

領域は侵すなかれと定められた裏社会に 世界はその日を境にして変わった。
これは、そんな世界で生きる者たちの物語だ。
——————
『あーあーテステス』
耳に付けたイヤホンマイクから聞こえてきた声に、僕は思わず顔をしかめた。
「これ、やっぱり慣れませんね……」
「まぁ、仕方ないよ。私だってまだ違和感があるし」
僕の声に答えたのは、同じイヤホンマイクを付けた先輩だった。先輩は苦笑しながら続ける。
「それにしても、まさかこんな事になるなんてねぇ」
「全くですよ」
僕らは今、とある建物の中にいた。建物の外には大勢の人が群がり、中にはテレビの中継車まで来ているようだ。
事の始まりは3時間前に遡る。
いつも通り、僕こと藤代 亮介は大学の講義を終え、バイト先へと向かうべく電車に乗っているところであった。僕の通う大学は都心からは少し離れた所にあり、駅から出るバスに乗るか自転車を使うかしない限り移動手段がないような場所にあった。なので、必然的に通学時は電車を利用するしかない。
講義が終わったと言っても、今日はまだ木曜日で普通なら午後5時くらいの時間である。だが、ここ最近はそうではない。というのも、最近都内で連続殺人事件が多発していたからだ。犯人は不明。被害者は全て女性ということ以外は何もわかっていない。警察も全力を挙げて捜査をしているらしいが、手がかりすら掴めていない状況だという。
そのため、最近は下校時の時間帯でも警戒するようにと学校側から通達があった。なんでも、若い女性ばかりを狙って犯行に及んでいるらしく、最近では女子学生の間でも物騒だからと早めに帰るように言われ始めているそうだ。
実際、昨夜も女子大生が殺された

大翔

何を満足に終わったんだ? そんなことはどうだっていいんだよ。問題はそこじゃない。問題は、お前が今どこに立ってるかってことさ。そうだな……じゃあこうしようか。俺が質問をする。お前はその問いに対してYESなら右手を上げろ。NOなら左手を上げるんだ。簡単だろ? よし、始めようぜ。まず最初の質問だが、お前は自分のことを何だと思う? 自分をどんな人間だと考えている? 俺はね、自分っていう存在について考えたことがあるし、今も考えてるよ。自分が自分のことを考えることの

大翔

真似っこをしたい裏社会に 金儲けを目論む非合法組織に 殺人鬼や快楽殺人犯に 犯罪者たちに
「……」
何だかんだあって、俺こと真崎悠斗は、今日から死神になりました。えぇそうですとも。なりたくなんてなかったけどね!
『いらっしゃーせー』
「……?」
コンビニ店員の声じゃないな?それに客じゃなくて店に入るって言い方だったし……。ここはどこなんだろ

この世界で根付く意識もなく

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