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何もない日

何もない日

「何もない日」のメインビジュアル

1

何もない日

♥

750

2019年11月17日

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今日は、
「食べ物がない日」よ!

私は今日何も
作りませんから!

えーっ!

じゃあご飯はどうすれば
いいんだよー

食べ物が無かったら
死んじゃうじゃんか!

だから、それをあんたらで
食材買ってきて作るのよ!

えぇ〜…

母は、3ヶ月に一回

「何もない日」をつくる。

その理由は、俺たちを自立 させるためや

母のありがたみを感じさせる ため、らしい。

まあ、そんなこんなで今まで

「何もない日」 を突破して来た わけだが

「その日」は、いつもと違った。

その日は休日だった。

いつものように朝起きて、 リビングに行くと

テーブルの前で椅子に座っている母と

その母を囲うようにして立っている 妹と弟の姿があった。

あ、お兄ちゃん
やっと来た

待ってたんだから

あ、あぁ、ごめん

この雰囲気…

「アレ」だ。

ゴクリと唾を飲み込む。

前にあった、「食べ物が何もない日」から

3ヶ月が経過していたのを忘れていた

今から「何もない日」のお題が 発表されるのだろう。

今日は…

母は、静かに口を開いた。

母からの愛情が
ない日よ

そう言うと母は、ゆっくりと二階に 上がっていった。

……

……

……

ちょ、どうするの!

やばくない?お母さん

あんな母さん、
初めてだよな

「心ここに在らず」
って感じだったな

大丈夫かな…

母はその日、ずっとうわの空だった。

食事もろくにとらず、話しかけても いつものように明るく接してくれない

昼過ぎ。俺たち兄弟は集まって 会議を開いた。

そして、一つの結論に達する。

「やっぱり、今日がーーだから…」

母さん…

母の部屋にノックして、

扉を開け、兄弟みんなで足を 踏み入れた。

入るよ、お母さん

……

母はずっと黙ったままだった。

みんなで、母を囲んで座る。

母さん…。

今日は

父さんの命日だもんな

……

今からみんなで

一緒に墓参り、行こう?

俺がそう言うと、たちまち母の目から

滝のようにドバーッと大量の涙が 溢れ出た。

う"、う"ん…

墓参り、行く…

お母さん、ほら、
ティッシュ

あ"りがと"う…

今日はご飯も洗濯も、
私たちでやるから

み"ん"な"…

思えば、母は今まで

父さんのことで俺たちの前で涙を見せることは、一度もなかった。

三年前、葬式の後泣きじゃくって いた俺たちを

母はずっと慰め続けていた。

きっと俺たちを心配させないように、我慢していたのだろう。

その母が今子供のように泣いている。

愛していた人を亡くしたにも関わらず

「母」でなければいけなかった彼女は

きっと誰よりも一番辛かっただろう。

皆、本当にごめんね…

墓参りからの帰り道、母はそうポツリと零した。

気にしてないよ

元気出して、お母さん!

…うん、

ありがとう…!

そう言って笑った顔は眩しくて

いつも笑っていた母だけど

今の顔が、母の本当の笑顔のような 気がした。

人はいつか必ず死ぬ。

それがどのタイミングなのかは、 誰にも分からない。

だからこそ、今を大切にしよう。

俺は、暖かく俺たちを照らす 太陽を背に

何もない日を大切にしようと思った。

この作品はいかがでしたか?

750

コメント

12

ユーザー

初めまして!FF外からですがコメント失礼します🙇‍♀️ とてもいいお話でした…!✨子供たちの気遣いとお母さんの涙にとても感動しました…!! フォロー失礼します!!

ユーザー

お父さああああああん ハートをとりあえずお供えしますね

ユーザー

このテーマでこんなお話が書けるなんて、本当にカサミネさんの発想力はどうなってるんですか……

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