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hr
ur
hr
そう言うと、うりは少しだけ目を瞬かせてから、
ur
と、小さく返した。
ぶっきらぼうに聞こえるのに、嫌がっている感じはしない。
それだけで、ひろはちょっと嬉しくなった。
うりは紙パックのジュースを飲み終えると、手の中で軽く潰してから立ち上がった。
ur
ひろは一瞬だけその言葉を聞き返しそうになった。
もう戻る、って。
たしかに昼休みなんて、そんなに長いわけじゃない。
そろそろ予鈴が鳴ってもおかしくない時間だ。
なのに、思っていたよりずっと早く感じてしまった。
hr
少しだけ名残惜しさを誤魔化すように、ひろは明るく返す。
ur
そう言いかけて、まだそこまでの距離じゃないかもしれないと思い直す。
けれど、うりはほんの少しだけこちらを見て、
hr
と、小さく頷いた。
たったそれだけなのに、胸の奥が妙にあたたかくなる。
階段を降りていくうりの背中が見えなくなるまで、ひろはしばらくその場に立ち尽くしていた。
hr
思わずひとりで呟く。
短い時間だったはずなのに、たったそれだけで一日が少し違って見える。
完全に、浮かれてる。
自覚した瞬間、なんだか急に気恥ずかしくなって、ひろは頭を掻いた。
それでも、口元が少し緩んでしまうのはどうしようもなかった。
結局、そのあとの五時間目も六時間目も、授業の内容はほとんど頭に入らなかった。
黒板の文字を写していても、先生の声を聞いていても、ふとした拍子に思い出すのは、昼休みの階段で見たうりの横顔ばかりだ。
……じゃ、戻るね
たったそれだけの、なんでもない言葉。
なのに、その声がやけに耳に残って離れない。
気づけばノートの隅に、意味もなく『うり』と書きかけて、ひろは慌ててペンを止めた。
hr
小さく呟いて、消しゴムで擦る。
たった一日でここまで気になるなんて、我ながらちょろすぎる。
でも、どうしようもなかった。
また会いたい。
ちゃんと話したい。
今度はもう少し、笑わせてみたい。
そんなことばかり考えているうちに、窓の外の光は少しずつ橙色に変わっていく。
放課後になったら、もう一度だけ会えたりしないだろうか。
そんな期待を抱いてしまうくらいには、もう、遅かった。
放課後を告げるチャイムが鳴る頃には、ひろはほとんど反射みたいに顔を上げていた。
教室のあちこちで椅子を引く音がして、鞄を持つ気配が広がっていく。
クラスメイトに「また明日な」と声をかけられて、ひろも曖昧に手を振り返した。
けれど意識はもう、別のところに向いていた。
別に、約束をしているわけじゃない。
探す理由なんて、どこにもない。
それでも、教室を出た足は迷うことなく廊下へ向かっていた。
窓の外はすっかり夕方の色をしていて、昼間より少しだけ静かだ。
部活へ向かう生徒たちの声や、遠くで鳴るボールの音が、どこか別世界みたいに聞こえる。
ひろは当てもなく校舎の中を歩いた。
図書室の前を通って、特別棟へ続く渡り廊下を抜ける。
用もないのにこんなふうに歩き回っている自分が、少しだけおかしくて、思わず苦笑が漏れた。
hr
小さく呟いても、足は止まらない。
この広い校舎のどこかに、うりがいるかもしれない。
ただそれだけで、帰る気にはなれなかった。
特別棟の二階まで来たとき、ふと一つの教室の前で足が止まる。
扉が少しだけ開いていた。
中から差し込む夕方の光が、廊下に細く伸びている。
人の気配がした。
なんとなく、そのまま通り過ぎられなくて、ひろはそっと中を覗き込む
hr
窓際の席に腰を下ろして、外をぼんやり眺めている横顔。
頬杖をつくでもなく、何かをしているわけでもなく、ただ静かにそこにいるだけなのに、どうしてこんなに目を引くんだろう。
春の終わりみたいなやわらかい光が、うりの横顔を薄く照らしていた。
男に使う言葉じゃないのかもしれないけど、やっぱり、綺麗だと思った。
そのまま見ていたら、うりがふいにこちらへ顔を向けた。
目が合う
一瞬、息が止まりそうになる。
hr
先に言葉を失ったのは、ひろの方だった。
見つけたのに、いざ目の前にすると何を言えばいいのかわからなくなる。
けれど、うりは驚いたように少し目を瞬かせたあと、小さく首を傾げた。
ur
名前を呼ばれた瞬間、胸の奥が変に熱くなる。
hr
我ながら情けない声が出た。
hr
半分は本当で、半分は嘘だった。
こんな言い訳、絶対苦しい。
そう思ったのに、うりはそれを笑うことも疑うこともなく、ただ静かにこちらを見ている。
その視線に、ひろの方が落ち着かなくなって、思わず頭をかいた。
hr
ur
短い返事。
でも、昼休みより少しだけ柔らかい気がした。
ひろは開いた扉に手をかけたまま、少しだけ迷う。
入っていいのか、ここにいていいのか。
踏み込みすぎたくはない。
けれど、離れるのも惜しかった。
hr
そう聞くと、うりは一瞬だけ目を伏せてから、小さく頷いた。
ur
たったそれだけのことなのに、どうしようもなく嬉しくなる。
ひろはなるべく静かに教室へ入って、うりからひとつ空けた席に腰を下ろした。
すぐ隣じゃない。
でも遠くもない。
今はそのくらいが、ちょうどいい気がした。
窓の外では、運動部の掛け声がかすかに聞こえる。
夕方の教室は思ったより静かで、ふたりの間に流れる沈黙さえ、不思議と居心地が悪くなかった。
hr
なんとなくそう尋ねると、うりは窓の外を見たまま、小さく息をついた。
ur
それだけの答えなのに、ひろは妙に納得してしまう。
たしかに、うりは騒がしい場所より、こういう空気の方が似合っていた。
hr
短く返してから、ひろも同じように窓の外へ目を向ける。
沈黙は続いているのに、なぜか落ち着いた。
誰かといて、こんなふうに何も話さなくても苦じゃないなんて、少し不思議だった。
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