悪魔達が通う学校、バビルスには様々な師団がある。
魔具研究師団や遊戯師団、我々師団なんていう非公認師団まで存在しているが
私が所属しているのは白尾師団だ。
因みに我が師団も非公認である。
団員は6名。
今日はその中でも少し厄介な奴と2人きり。
シャークン
彼の名はシャークン。
何を隠そう戦闘中毒者である。
キリヤン
シャークン
尻尾をブンブン振って魔具の開発をしている私の後ろをぴょこぴょこしている彼には申し訳ないけど丁重にお断りしたい。
友達だし遊んであげたいのはやまやまなんだけど、ナイフを持ち出してくる未来しか見えないんだもん。
てか収穫祭で直接攻撃しに行こうとした彼は今ナイフ使用禁止の罰が課せられている。
そのルールを破ろうものなら一緒に居た私まで怒られてしまうよきっと。
キリヤン
シャークン
キリヤン
あぁそんな尻尾を垂れ下げないで。
罪悪感が募るけれど、私だってただ意地悪を言っている訳では無い。
これを機にお友達を作るべきだと思うんだ。
だっていつも白尾師団のメンバーとしか関わらないから。
キリヤン
シャークン
キリヤン
急にシャークンが静かになる。
その顔には大きく嫌だと書かれていた。
キリヤン
シャークン
キリヤン
このままでは絶対に動かないだろうと思いシャークンの背中を押して無理矢理外に出す。
不服そうな顔を向けられたが無視して扉を閉めてやった。
彼の為にも心を鬼にしなくては。
とはいえ心配であることに変わりは無い。
私は窓から外に出てシャークンの様子をこっそり見守ることにした。
シャークンは廊下を少しウロウロしていたが、道中すれ違う悪魔と距離を取り見事に存在感を消していた。
友達を作る気がまるで無い動きだ。
そうだよね、戦闘にしか興味無いもんね。
どうにか助け舟を出してあげられないだろうか。
と私が1人で悩んでいると、前方から見覚えのある悪魔が歩いて来ていることに気づく。
収穫祭でシャークンがずっと闘いたいと気になっていた相手。
我々師団のゾムさんだ。
ゾム
シャークン
これはチャンスかもしれない。
這い寄る脅威の名で有名な彼となら、きっとシャークンも話が出来るはずだ。
だってほら、垂れ下がっていた尻尾が上を向いているもの。
シャークン
ゾム
ん?あれ?
どちらも黙り込んでしまった。
ソワソワしてはいるけれど、もしかして…。
ゾム
シャークン
いや全然曇ってますけど!
何なら白一色ですけど!
お前ら会話下手か!
もしかして、ゾムさんも人見知りだったりするのだろうか。
2人して窓の外を見たまま固まってしまっている。
これは流石に助けを出してやろう。
一旦師団室へ戻り私が開発したエメラルドとスケルトン人形を手に取る。
そしてシャークンのヘッドセットに通信を入れた。
キリヤン
シャークン
明らかに声色が明るくなった。
仲間からの連絡に喜ぶ所は可愛いと思うけれど、残念ながらゆっくり話をするつもりは無い。
キリヤン
シャークン
キリヤン
シャークン
シャークンの言葉を最後まで聞かずに通信を切る。
さてさて、上手くいくといいのだけれど。
シャークン
ゾム
師団室を出て再び2人の様子を見てみると、いい感じにゾムさんが事情を聞いていた。
シャークン
ゾム
シャークン
ゾム
シャークン
ゾム
よし。
ゾムさんなら興味を持ってくれると思っていた。
それにその後の言葉も想像がつく。
ゾム
シャークン
ゾム
怖いくらいに順調だ。
やはり戦闘狂のシャークンと爆弾魔のゾムさんは言葉ではなく体を動かしてコミュニケーションを取らせる方が良いだろう。
ゾム
シャークン
ゾム
シャークン
ゾムさんとシャークンが翼を広げ森に向かって飛び出す。
私も透明化ポーションを飲んでその後を追った。
ゾム
シャークン
森に到着した2人は辺りを見回しながら奥へ奥へと進んで行く。
よし、そろそろ良いだろう。
持ってきた緑色の石をスケルトン人形の中に埋め込む。
すると人形は魂が宿ったかのように動き出した。
シャークン
スケルトンを地面に下ろし暫くするとシャークンが見つけ、ゾムさんはフードに隠れた目をキラキラさせた。
ゾム
シャークン
ゾム
シャークン
2人は同時に地面を蹴り走り出した。
それに反応したスケルトンが矢を飛ばすが、透かさずゾムさんがミサイルを飛ばし相殺する。
そして煙の中から飛び出したシャークンがスケルトンにナイフを突き刺した。
しかしヒビが入っただけでスケルトンはまだ動く。
シャークン
ゾム
シャークン
ゾム
ゾムさんが丸い爆弾を3つ放り投げた。
スケルトンは爆弾に向けて矢を撃つが今度はシャークンがそれを弾き道を作る。
ゾム
シャークン
見事に命中した爆弾によりヒビが割れ、崩れたスケルトンの中から緑色の石がポロリと落ちた。
それをシャークンが拾う。
ゾム
シャークン
ゾム
シャークン
ゾム
ゾムさんが凄い凄いと無邪気な声で褒めてくれるものだからつい鼻が高くなってしまう。
しかしシャークンの興味は他にある様で
シャークン
目の色が反転する。
するとゾムさんも尖った歯を見せてニッと笑った。
ゾム
2人の動きがピタリと止まり、私が瞬きをした瞬間。
ゾムさんはミサイルを放ち、シャークンは地面を蹴った。
爆発の中から鋭利な刃物が飛び出す。
容赦無く振るわれたそれをゾムさんは後ろに飛び退くことで避けた。
ゾム
シャークン
2人とも完全にスイッチが入ってしまっている。
シャークンが思い切り戦える相手が見つかったのは良いけれど、このままでは森を破壊しかねない。
仲良くなってもらいたいだけで環境破壊は望んでいないのだ。
水を差すようで悪いけれどヘッドセットに通信を入れる。
キリヤン
シャークン
走りかけていたシャークンの動きが止まり、ゾムさんもキョトンとした顔をする。
キリヤン
シャークン
キリヤン
シャークン
キリヤン
シャークン
少し声色を低くすればシャークンは分かりやすく焦った声を出した。
キリヤン
シャークン
キリヤン
シャークン
キリヤン
シャークン
キリヤン
シャークン
厳しいようだけど実際すぐ戦いたがる性格は直すべきだと思うし仕方が無い。
その後一言二言会話をし通信を切った。
さてさて、いい子に遊べるかな?
ゾム
シャークン
ゾム
シャークン
ゾム
シャークン
シャークン
ゾム
シャークン
ゾム
ゾム
シャークン
ブツブツと文句を言いながらもシャークンはナイフを仕舞い、ゾムさんも戦闘態勢を解いた。
ゾム
シャークン
ゾム
ゾム
シャークン
ゾム
そう言うとシャークンの返事も聞かずにゾムさんは翼を広げて飛び上がった。
シャークンもそれに続き私も慌てて後を追う。
しかし2人のスピードが速過ぎて途中で見失ってしまった。
一体何処へ行ってしまったのやら。
ゾム
森の奥の更に奥。
ゾムさんに連れて来られた場所は色鮮やかな花畑だった。
避けたのかと思うくらい見事にその空間だけ木が生えていない。
ゾム
イタズラっ子のように笑うゾムさんはその場にコロリと寝転がる。
確かに凄い。
凄く綺麗だ。
ふと後ろを振り返る。
ゾム
シャークン
ゾム
シャークン
ゾム
シャークン
ゾムさんが隣をポンポンと叩くから真似をして寝転ぶ。
ゾム
シャークン
思わぬ言葉に間抜けな声が出てしまった。
シャークン
ゾム
ゾム
ゾムさんはうんうんと唸り言葉を探すが出て来ない。
でもわかる気がする。
ゾムさんは白尾師団のメンバーとはちょっと違う。
シャークン
ゾム
ゾム
弾かれるように身を起こしたゾムさんの周りにキラキラと光るエフェクトが浮かぶ。
その屈託の無い笑顔に何だか心が軽くなるのを感じた。
友達って、いいな。
ゾム
シャークン
ゾム
シャークン
ゾム
シャークン
ゾム
シャークン
ゾム
シャークン
ゾム
シャークン
ゾム
シャークン
そしてライバルというのも、またいいものだ。
後日。
シャークン
ゾム
キリヤン
シャークン
キリヤン
ゾム
キリヤン
シャークン
キリヤン
ゾム
キリヤン
キリヤン
厄介なメンバーに厄介な友達ができ、
そして私の苦労が倍になったとさ。
めでたしめでたし。
キリヤン
シャークン
ゾム
シャークン
ゾム
キリヤン
END
コメント
2件
ここで魔主役出してくれるとは嬉しい てかゾムシャケが尊い そしてきりやんさんの過保護感がまた良い