コメント
2件
若干借金組要素が...尊いんだが⁉︎
シャークんはいつも怯えていた。
スマイル
Nakamu
スマイル
スマイルに呼ばれ実況部屋へ入る。
きりやん
きりやん
中ではきりやんが身を屈め机の下を覗き込んでいた。
Nakamu
シャークん
きりやん
Nakamu
きりやんか部屋を出て行く。
付けっ放しのモニターには主人公の女の子がぽつんと佇んでいた。
その視線の先には互いに背を向け怖い顔をした父親と母親の姿が。
Nakamu
机の下で膝を抱え震えるシャークんの頭に手を置く。
Nakamu
Nakamu
Nakamu
何度目かの呼び掛けで漸く動いたシャークんは、俺の胸に涙で濡れた顔を力無く押し当てた。
シャークんとの出会いは高校2年目の夏休み。
夜中に小腹が空いてコンビニでお菓子を買った帰りの途中で、誰も居ない公園のベンチに一人で座っているのを見つけたのが始まり。
Nakamu
普段なら見ず知らずの他人に一々構ったりはしないのだけれど、その子には興味をそそられた。
余りにも小柄で小中学生に見えたからかもしれないし
夏だというのに長袖のタートルネックを着ていたからかもしれない。
シャークん
俺の声に驚き慌てて立ち上がったその子は、思っていたよりも背が高く、でも俺よりは低かった。
何かに怯えているように震え、目には涙まで溜まっている。
Nakamu
Nakamu
彼はどうしたら良いのか分からずあわあわした後、俯いて公園の出口へ向かおうとするものだから、咄嗟にその腕を掴んだ。
彼の肩が大きく跳ねて顔が歪む。
Nakamu
強く握ったつもりは無いが離してやると細い腕を撫でていた。
Nakamu
彼は足を止めてくれたけど、まだ一度も会話をしてくれていない。
見ず知らずの他人にだって少しくらい声を聞かせてくれてもいいではないか。
Nakamu
シャークん
Nakamu
シャークん
Nakamu
シャークん
Nakamu
シャークん
何を聞いても話してくれない彼に段々イライラしてきて、最後はつい強い口調になってしまって
そしたら急に彼の口が開かれた。
シャークん
想像より遥かに低かったその声は酷く弱々しい。
Nakamu
何だか弱いものいじめをしている様な気分になって慌てて笑みを浮かべる。
少しでも肩の力が抜ければ良いのだけれど。
シャークん
シャークん
シャークんと名乗った彼はゆっくりと俺の質問に答えてくれた。
Nakamu
シャークん
Nakamu
シャークん
Nakamu
シャークん
シャークんは服の裾をぎゅっと握り締めて俯いてしまった。
不味い事を聞いてしまっただろうか。
Nakamu
シャークん
Nakamu
シャークん
絶対に年下だと思っていたからつい大きな声が出てしまった。
またシャークんが体を震わせてしまう前に謝り落ち着かせる。
どうやら大きな音が苦手らしい。
Nakamu
シャークん
Nakamu
公園にそびえ立つ時計を見てみると22時を越えていた。
確か未成年者が外出して良い時間は23時までだったはず。
自分も人のこと言えないがこんな所に居て良いのだろうか。
シャークん
Nakamu
シャークん
Nakamu
シャークんが小さく頷く。
両親の喧嘩なんて俺の家でもよくあるし、珍しい事では無いと思う。
そんな事で態々外に出るなんて、余程大きな喧嘩なのか、それとも気遣いさんなのか。
どちらにせよ補導されてしまう前に何とかしないと。
Nakamu
シャークん
Nakamu
シャークん
シャークん
てっきり断られると思っていたけれど、シャークんは俺の後を着いてきた。
家に上げたら物珍しそうにキョロキョロしていて、案外好奇心は旺盛なのかもしれない。
お菓子を出してやれば躊躇いながらも一口齧り美味しいと目を輝かせた。
コンビニで売っているただのビスケットなのに大袈裟だなと、この時の俺はまだ彼からのサインに気付くことが出来なかったんだ。
それからは時々シャークんと会うようになり、学校に通っていないらしい彼をこっそり高校へ連れ込んで中を案内した。
夏休みだから人は少ないし、私服でも全く怪しまれない。
シャークんはあれは何?これは何?とまるで小さい子みたいに色んな物に興味を持っていたけれど、どうやらピアノが一番気になる様で、先程から音を鳴らして遊んでいる。
だから友達でピアノが引けるBroooockを呼んでみることにした。
Broooock
シャークん
急な呼び出しに文句の一つも言わず来てくれたBroooockに、シャークんは驚いて俺の後ろに隠れてしまう。
Broooock
Nakamu
シャークん
シャークん
Nakamu
どうやらクラスでも1、2を争う高身長なBroooockが怖いみたい。
Nakamu
Broooock
怖がられたのがショックだったのかBroooockの眉が少し下がる。
でもきっと彼の演奏を聴けばシャークんも少しは心を開くはずだ。
Broooockの指が鍵盤の上を走る。
するとシャークんが俺の後ろから顔を出しビスケットを食べた時みたいに目を輝かせた。
Nakamu
シャークん
Nakamu
シャークん
気付けばシャークんは俺から離れ、ピアノの周りをうろちょろと観察し、曲が終わっても逃げ出さなかった。
Broooockの口角が嬉しそうに上がる。
Broooock
シャークん
Nakamu
がばっと抱き締められたシャークんが困惑する姿は見ていて面白い。
Broooockの膝に引き上げられてそのままピアノの弾き方を教わっていたから助けなくても大丈夫だろう。
Broooock
シャークん
Broooock
先生に褒められてシャークんの頬が緩む。
学校に連れて来たのは正解だった様だ。
暫く2人の演奏に耳を傾けていたが、自分もギターを弾きたくなり、楽器が沢山置いてある隣の部屋へ向かおうとしたその時。
突然音楽室の扉が開かれた。
きんとき
シャークん
Broooock
シャークん
Broooock
突然友達のきんときが現れ膝の上から落ちそうになったシャークんをBroooockが抱き止める。
しかしBroooockの手がお腹に当たるとシャークんの顔が歪んだ。
何だろうか、前にも似たような事があった気がする。
Broooock
きんとき
そうだ、思い出した。
初めて公園で会った日。
あの日も俺に腕を引かれたシャークんは同じ反応を見せていた。
Nakamu
シャークん
夏なのにタートルネックを着ている理由が漸くわかった。
体の至る所に痣や傷があって痛々しい。
状況を理解していないきんときも目を見開いていた。
Broooock
シャークん
きんとき
シャークん
シャークんは軽くパニックを起こしポロポロと泣き出してしまった。
Broooockときんときが慌てる中、俺は彼の頭にそっと手を置き胸に抱く。
Nakamu
Nakamu
Nakamu
これは弟を慰める時によくしていたこと。
その人の気持ちなんてその人にしかわからない。
だから下手に共感するのではなく肯定してあげるのだ。
シャークんが俺の服を握る。
Nakamu
シャークん
小さく頷いた彼にBroooockもきんときも安堵の息を漏らした。
でも全てが解決した訳では無い。
Nakamu
今度は首を横に振った。
Nakamu
シャークん
Nakamu
シャークん
皆の顔が強ばる。
シャークんは明らかに怯えていた。
Nakamu
Broooock
シャークん
再び部屋にピアノの音が響き出すと俺はきんときを連れて廊下に出た。
Nakamu
きんとき
Nakamu
Nakamu
きんとき
Nakamu
Nakamu
Nakamu
きんとき
Nakamu
Nakamu
きんとき
Nakamu
きんとき
きんとき
Nakamu
きんとき
きんとき
Nakamu
Nakamu
きんとき
Nakamu
きんとき
Nakamu
と今後について話していると
シャークん
控えめな声で名前を呼ばれた。
Nakamu
シャークん
時計を見てみると16時を少し過ぎたくらいだった。
高校生の門限にしてはかなり早い。
Nakamu
シャークん
Broooock
きんとき
俺達は4人揃って学校を出た。
翌日。
音楽室には既にBroooockときりやん、スマイルが来ていた。
きりやん
予想はしていたけれどシャークんは俺の後ろから出てこない。
Nakamu
シャークん
シャークん
Nakamu
シャークんの視線を辿ると無表情のスマイルと目が合った。
Nakamu
スマイル
Nakamu
きりやん
スマイル
俺が指摘すると透かさずきりやんがスマイルの後ろに回り込み、指で口角を持ち上げて無理矢理笑顔を作らせた。
そんなやり取りを見て少しは安心出来たのかシャークんが恐る恐る顔を出す。
Broooock
Broooockが気を遣って笑いかけるとシャークんは戸惑いながらも頷いた。
この調子ならスマイルにも直ぐに慣れるだろう。
Nakamu
きりやん
Broooock
シャークん
Broooock
Nakamu
シャークん
きりやん
部活の見学をしに行く約束をしていると、きりやんが持っていた本を机に並べた。
小学一年生、中学一年生、高校一年生の教材だ。
きりやん
シャークん
スマイル
きりやん
シャークん
今から何が行われるのか理解していないシャークんが助けを求めるように俺を見る。
Nakamu
シャークん
Nakamu
背中を押して椅子まで誘導すれば大人しく座り渡されたシャープペンを握った。
スマイルが小学一年生と書かれた問題集を開く。
スマイル
シャークん
問題集の上をペンが走る。
解くのも早いし間違いも無い。
きりやん
スマイル
きりやん
スマイル
その後もスマイルが作った問題を解き、間違えている所をきりやんに教えて貰っていた。
シャークんは足し算や引き算、それに簡単な漢字くらいなら知っているみたい。
特に計算が得意みたいで、難しい数式も教えればすぐに解いてしまった。
Broooock
シャークん
Nakamu
きりやん
スマイル
きりやん
Broooock
Nakamu
きりやん
シャークん
Nakamu
プールサイドに到着すると丁度きんときがバタフライを泳いでいる所だった。
水面から手が出る度に水飛沫が上がる。
スマイル
きりやん
Broooock
冷めたコメントをする3人とは反対に、シャークんは彼の泳ぎを静かにじっと見つめていた。
Nakamu
シャークん
Broooock
きりやん
と話していると、壁をタッチしたきんときが俺達に気付きプールから上がって来た。
きんとき
Nakamu
きんとき
シャークん
きんとき
Broooock
きんとき
きんときがバスタオルで体を包みそうだと何かを思い出す。
きんとき
そう言ってベンチに置いてあった鞄から取り出したのはスマホだった。
Nakamu
きんとき
スマイル
きんとき
きりやん
シャークん
きんとき
シャークん
シャークん
きんとき
シャークんが両手で大事そうにスマホを握る。
するとBroooockが自分のスマホを取り出した。
Broooock
シャークん
Broooock
きんとき
きりやん
スマイル
Broooock
スマイル
Nakamu
Broooock
Broooockがシャークんのスマホに全員の連絡先を登録していく。
これで何があっても安心だ。
きんとき
きりやん
きんとき
Nakamu
きんとき
また後でと軽く手を振りきんときと別れて音楽室へ戻る。
勉強会を再開させ、偶に休憩を挟んで16時過ぎには学校を出た。
次の日も、また次の日も。
俺達は学校に集まって勉強をしたり遊んだりして、家に帰ったらシャークんとメッセージのやり取りもして。
楽しい夏休みを過ごしていた。
シャークんが姿を現さなくなるまでは。
シャークんが姿を見せなくなって5日。
暫く様子を見ようということになったが、メッセージを送っても返信が無いし不安が募る。
何か家で問題が起きたのでは。
何か事故に巻き込まれてしまったのでは。
頭に浮かぶのは良くないことばかり。
外もすっかり暗くなったし寝てしまおうか。
きっと明日にはひょっこり現れるだろう。
そう思いベッドに入ろうとした、その時。
スマホから着信音が鳴った。
画面を見てみると頭の中を支配していた彼の名前が表示されていて、慌てて電話に出る。
Nakamu
シャークん
父
シャークん
父
シャークん
全身から血の気が引いていく。
父親と思われる男の怒号にシャークんの悲鳴、そして鈍い音が聞こえたかと思えばブツリと通話が切れてしまった。
あのシャークんが助けを求めてくるなんて。
早くしないと、殺されてしまうかもしれない。
Nakamu
警察に連絡を。
いや時間がかかり過ぎる。
なら俺が直接。
でもシャークんの家を知らない。
どうしたら。
ふと握ったままのスマホに目をやる。
確かシャークんが持っているスマホは子供用のものだったはず。
Nakamu
俺は急いで家を飛び出しきんときに連絡した。
きんときに案内してもらい辿り着いた家はお世辞にも綺麗と呼べるものでは無かった。
玄関には鍵が掛かっていたが窓が開いていた為そこから侵入する。
足音を立てないように慎重に廊下を進むと奥の部屋から物音が聞こえた。
ゆっくりと扉を開け、途端に香った酷い悪臭につい鼻と口を押さえる。
蹲るシャークんと、そんな彼を踏み付ける男。
血を流し倒れている女性。
俺は咄嗟にタバコが詰め込まれた灰皿を手に取り男の頭目掛けて振り下ろした。
Nakamu
シャークん
Nakamu
シャークん
シャークんを抱き起こし顔を覗き込んでみたが涙で濡れた目は焦点が合っていない。
今彼に必要な言葉は何だろう。
きっと「大丈夫」だなんて根拠の無い言葉では無い。
Nakamu
Nakamu
Nakamu
ゆっくりとシャークんの体から力が抜けていく。
遠くでパトカーのサイレンが鳴っていた。
その後、男は妻殺害及び児童虐待の罪で逮捕された。
病院で治療を受けたシャークんは暫く精神科病院に入院していたが、俺達が高校を卒業するタイミングで一緒に暮らすことになり、7年以上共に過ごしている。
Nakamu
シャークん
Nakamu
シャークん
Nakamu
シャークん
シャークんが袖で涙を拭っている間に2人を呼びに行く。
きりやん
スマイル
シャークん
きりやん
きりやん
シャークん
きりやんが持って来たマグカップをシャークんに渡す傍らで、スマイルが今回の原因と思われるゲームをセーブもせずに閉じた。
スマイル
どうやらスマイルが見つけてきたゲームを3人で遊んでいたらしい。
まさかシャークんのトラウマを呼び起こすシーンがあるなんて思ってもみなかったのだろう。
シャークん
スマイル
シャークん
スマイル
シャークん
Nakamu
きりやん
スマイル
きりやん
シャークん
シャークん
きりやんに手を引かれ部屋を出て行くシャークんの背を見つめる。
幼少期からのトラウマは彼の中に深く刻み込まれ、そう簡単に消えることは無い。
だからせめて俺達が楽しい思い出で隠してあげるんだ。
シャークんに幸せというものを教えてあげると心に決めたから。
シャークん
Nakamu
消えない傷も、溢れ出る涙も
何もかも忘れられるくらいの愛をあげるから。
だからね、シャークん
笑って。
END