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「あの人が悪い」と誰かが言ったとする。
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それが本当に悪いことなのかはわからない。
黒
けれど、多くの人が「悪い」と言えば、その人は悪と呼ばれる。
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逆に、良いことをした人は善とされる。
白と黒の世界で、優劣が決められていく。
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僕は思う。
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オセロという盤面の中で、白から黒に、黒から白に駒をひっくり返していく。
黒
ひとつ返すごとに、相手の顔色を伺い、判断を鈍らせる。
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次第に相手は考える時間が長くなり、一枚の駒を返す。
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彼は、僕の動きを見定めたいのだろう。
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容赦なく白を黒に染めていくが、相手もまた黒く染まった駒を白に戻そうと反撃を考えている。
黒
なあ、この白い駒をお前はどう思う?」相手がふと問いかけてきた。
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僕は答える。
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「どう思うって、ただの真っ白な駒だよ。曇りひとつない、ただの駒さ」
黒
「そうか。じゃあ、こうしたらどうだ?白は漆黒の闇に染まるだろう」
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「そうだね。でも、こうすればまた、漆黒の闇から輝く白になるよ」
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互いに譲らない思いがある。
黒
白と黒
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光と闇
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相手はネガティブな思考を持ち、何を考えているのか見当もつかないが、天才と呼ばれる変わり者だ。
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僕とは対照的に、僕はポジティブな考えを持つ、普通の人間だ。
駒が盤上に響く。空気が静まり返る。
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汗がじわりと額に浮かび、ハンカチで拭う。
黒
相手も同じように汗を拭った。真似をするなと言いたいところだが、汗をかいているなら仕方がないかと思い直し、勝負を続ける。
まだ始まったばかりだ。これから白黒、はっきりさせようじゃないか。







