赤い葉っぱ

…季節はすっかり秋らしい。 ハンターになってからというもの 時間がよく分からない。 あぁ、なんで、なんで この荘園にまで秋が来るんだよ！？ てっきり季節なんかないもんだと思ってたのに！ …僕は秋が嫌いだ。 丁度僕が首を切り落としちゃった 季節だから。

ま、頭がないのも、 悪いことばかりじゃ ないんだけどね！ 歯磨きしなくていいし 顔も洗わなくていいし！ ………

毎日歯磨きも 顔を洗うのも 別になんでもする！ だから僕の頭を返してよ！ 何度神様に頼んだか！ だってつまらないよ… 笑えないし、泣くこともできない… ご飯だって味がしない！ でも…お腹は空くから…

美人の美智子お姉ちゃんに 優しいヴィオお姉ちゃん！ 皆大好きだけど 今日はあんまり遊びたい 気分じゃないな… ……ベインお兄ちゃんが 両手にトレーを持って 部屋に入ってきた

ソテーをちびちび口に入れながら お兄ちゃん達の喧嘩を見る。 これが毎日の日課で いっつも面白いと思うんだけど 今日はなんだか ムカムカした。

ヴィオお姉ちゃんは 凄く心配そう。 優しいお姉ちゃんに 心配かけちゃ駄目なのに 僕ってほんと ダメな奴。

長い舌をベロベロ出しながら 僕の後輩の…（年上だけどね！） ルキノが声をかけてきた。 ルキノは僕にだけ敬語使ってくれる。 分かってるよ、僕が喜んだからって 慣れてないくせに敬語使ってくれてるの。

二回も言われちゃったよ！ 次は何？ あの背高ノッポの必安お兄ちゃん が言うの！？ なんなのさ！ ホントに… ホントに…… ……あれ？ なんでこんなに苛ついてるんだろ

涙が出そう！（目は無いんだけど） 美味しい！ ものすごく美味しい！

久々に幸せを感じて 僕は上機嫌だった。

僕が指さした 庭の真っ赤な巨木は メープル…つまりカエデの木。 僕が薪にしようとした木。 僕の頭の代わりに 切られるはずだった木。

使徒の声がしたけど 僕は振り返らずに 部屋まで走った

ドンッ

ニコニコと微笑んでるけど 美智子お姉ちゃん 気づいてる？ その真っ暗な目から 涙がでてるの

タッタッタッ

〜ある日の荘園〜

青い芝生が広がっていた庭は 茶色い葉っぱに覆われて ふかふかの絨毯みたいになってた。 真ん中にあるカエデの木も あと一枚の葉を残して あとは丸裸。 僕みたいに 着替えたのかな

僕の悲しみ。 この麻縄みたいに 僕の首を締め付けてた悲しみ。 この秋最後の葉っぱと一緒に 僕の首からスルリと 手を離していった。

誰にも聞こえないような 小さな声は この青い空に 吸い込まれていった。