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数日後。
奏の風邪はすっかり良くなり、彼は再びキャンパスに姿を現した。
いつものように講義を受け、いつものように目立たない席に座る。
けれど、一つだけ「いつも」と違うことがあった。
瀬戸 ハル
休み時間、当然のようにハルが隣の席に滑り込んできた。
金髪が陽光を反射して、教室の片隅がパッと明るくなる。
周囲の女子たちが「あ、ハルくんがまたあの地味な子と……」とヒソヒソ囁くのが聞こえるが、ハルは一ミリも気にしていない。
市川 奏
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
市川 奏
市川 奏
奏は少しだけ気まずそうに視線を泳がせ、カバンから一通の封筒を取り出した。
市川 奏
瀬戸 ハル
市川 奏
奏がその言葉に目を瞬かせる。
ハルは「あ」と少し照れたように鼻の頭を掻いた。
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
市川 奏
市川 奏
奏は意を決したように、ハルの袖口を指先で少しだけ引いた。
市川 奏
市川 奏
ハルの心臓が、跳ねた。
モテ男として、デートの誘いなんて腐るほど受けてきた。
なのに、この「地味で普通な」男からの控えめな誘いに、喉の奥がカラカラに乾く。
瀬戸 ハル
市川 奏
__放課後。
二人が向かったのは、大学のメイン図書館……ではなく、その裏手にある、古びた資料館の自習室だった。
高い天井まで届く書架。古い紙の匂い。
窓からはオレンジ色の夕日が差し込み、埃の粒がキラキラと舞っている。
市川 奏
市川 奏
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
市川 奏
市川 奏
奏は自分の席を確保すると、ハルの分まで椅子を引いてくれた。
ハルは、奏の「特別」を共有してもらえたことが、たまらなく嬉しかった。
一時間ほど、静かな時間が流れる。
シャープペンシルの走る音と、ページを捲る音だけが響く。
ハルは集中している奏の横顔を、盗み見るように観察した。
真剣に結ばれた唇。
普段は「普通」に見えるそのパーツ一つ一つが、ハルにとってはどんな芸術品よりも魅力的に映る
市川 奏
瀬戸 ハル
見惚れていたのがバレたかと思い、ハルは激しく動揺した。
奏は呆れたようにペンを置く。
市川 奏
市川 奏
瀬戸 ハル
市川 奏
奏が小さく笑う。
その時、窓の外から部活動の掛け声が遠く聞こえてきた。
夕闇が迫り、部屋の中が濃い影に包まれていく。
市川 奏
瀬戸 ハル
市川 奏
市川 奏
奏の問いかけは、静かだけど鋭かった。
ハルは苦笑いして、背もたれに体重を預ける。
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
市川 奏
瀬戸 ハル
ハルは、机の上に置かれた奏の手に、そっと自分の手を重ねた。
奏は一瞬ビクッとしたが、振り払わなかった。
市川 奏
市川 奏
瀬戸 ハル
市川 奏
奏の指が、かすかに震えている。
夕暮れの魔法か、それとも積み重なった時間のせいか。
二人の距離が、自然と縮まっていく。
ハルがゆっくりと顔を近づけると、奏は静かに目を閉じた。
重なる寸前、廊下を歩く警備員の靴音が響き、二人は弾かれたように離れた。
瀬戸 ハル
市川 奏
奏の顔は、夕日のせいだけではなく、真っ赤に染まっていた。
ハルもまた、自分の鼓動がうるさすぎて、立っているのがやっとだった。
瀬戸 ハル
市川 奏
繋いだ手の熱が、まだ残っている。
二人の物語は、ついに「ただの友人」という境界線に足をかけ始めていた。