テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

一覧ページ

LINE１３９２

第1話 - あ

2023年12月08日

#スカッと

タナカトシキ

ミサエ

ヒロシ、悪いんだけど帰りにトイレットペーパーとお米買ってきてもらっていい？

ミサエ

動くのしんどくて…

ヒロシ

はぁ？

ヒロシ

今日1日何してたんだよ

ミサエ

ごめん

ミサエ

もう少しで出産だからなのか腰が痛くて

ヒロシ

出産の予定日は分かってるんだからさ

ヒロシ

買いだめするとか逆算して行動しろよな

ヒロシ

俺を当てにされても困るんだよな

ミサエ

うん…

ミサエ

でも、初めての出産なんだから何が起こるか分かんないよ

ミサエ

逆算なんてそんな上手くできないし

ミサエ

私だって不安なんだよ？

ヒロシ

不安っていうことと主婦の仕事の両立ができないことは別問題だろ？

ヒロシ

俺は仕事で疲れてるっていうのにさ…

ミサエ

仕事で疲れてるのは分かってる

ミサエ

本当に毎日ありがとう

ミサエ

でもさ

ミサエ

そんな言い方しなくても良くない？

ミサエ

私だって動けるなら自分で買いに行くよ…

ヒロシ

こっちは仕事で疲れてるって言ってるだろ！？

ヒロシ

しんどいんだよ

ヒロシ

仕事がうまくいってないんだよ

ヒロシ

何もかも！

ヒロシ

せめて家でくらいストレスを発散させてくれよ！

ミサエ

だからさ

ミサエ

何度も話し合おうって言ってるじゃん

ミサエ

それをいつも疲れたとかしんどいとかで話してくれないのはコウじゃん

ミサエ

お前に言っても分からないだろ、無駄だって…

ヒロシ

分かった分かった

ヒロシ

買って帰ればいいんだろ？

ヒロシ

はぁ…

ヒロシ

せっかく、これから呑みに行くとこだったのによ…

ミサエ

お酒飲むのは疲れないんだね

ミサエ

今の時期くらい協力してくれても良いじゃん

ヒロシ

子供が生まれたらちゃんとするっつの

ヒロシ

いちいち揚げ足取んなよ

ミサエ

私だけの子供じゃないんだよ？

ミサエ

もっと親になるっていう自覚を持って欲しいんだけど…

ヒロシ

男は女よりも自覚するのが遅いってテレビでも言ってたろ？

ヒロシ

男って妊娠しないからさぁ

ミサエ

性別でくくらないでよ

ミサエ

ちゃんと協力してる世の中の男性たちに失礼だよ

ヒロシ

そんな奴いるか？

ヒロシ

居たとしてもソイツはソイツ、俺は俺だ

ミサエ

男で一括りにしてたくせに

ミサエ

都合が悪くなるとすぐに意見変えるんだね

ヒロシ

最近ずっとイライラしてないか？

ヒロシ

当たられるコッチの身にもなれよ

ヒロシ

俺の話する前に妊婦として情緒の不安定をどうにかした方が良いんじゃ無いか？

ヒロシ

母親は強くなきゃいけないんだよ

ヒロシ

旦那が少し居ないくらいで甘えんなよ

ミサエ

何その言い方…

ミサエ

もういい…

〜数日後〜

ツル

ミサエさん、お腹の子供の調子はどう？

ミサエ

もう

ミサエ

お義母さん、何回連絡してくるんですか

ミサエ

ここのとこ毎日ですよ？

ミサエ

ありがたいですけど

ツル

だって、孫が産まれてくるのが待ち遠しくて

ツル

それに、この前お腹が痛い時があったって言ってたでしょ？

ツル

それが、心配でね…

ミサエ

わざわざ何度も心配してくださりありがとうございます

ミサエ

たしかに、もうすぐ予定ですからいつ産まれてもおかしくないですもんね

ミサエ

安心してください

ミサエ

陣痛が来たら約束通りご連絡しますから

ミサエ

絶対よ？

ミサエ

すぐに駆けつけるからね？

ミサエ

本当に心強いです！

ミサエ

実はさっきトイレでパンツが濡れてたんですよ…

ツル

え？

ツル

本当？

ミサエ

尿もれかもしれないです

ミサエ

そんなに出てないですし

ツル

破水かもしれないわ

ツル

破水って人によって違うからちょっとでも破水してる場合があるのよ？

ツル

病院に電話した方が良いと思うわ

ミサエ

お義母さん、落ち着いてください

ミサエ

とりあえず病院に電話してみますね

〜30分後〜

ミサエ

ねぇ、ヒロシ帰って来れる？

ミサエ

破水したかもしれなくてこれから病院に行くことになったの

ミサエ

車で病院に送ってくれないかな？

ヒロシ

破水？

ヒロシ

まだ、産まれないんだろ？

ミサエ

まぁ、はっきりとは…

ミサエ

病院に行かないと分かんないけど

ミサエ

じゃあ、産まれそうになったら教えてくれよ

ミサエ

俺もう酒飲んでるから運転できないし

ヒロシ

は？

ヒロシ

まだ仕事中だよね？

ヒロシ

接待だよ

ヒロシ

接待

ヒロシ

仕事なの

ミサエ

分かったわよ…

ミサエ

でも、陣痛が始まったら来てよね？

ヒロシ

はいはい

ヒロシ

分かったって

〜数時間後〜

ミサエ

ヒロシ、陣痛来たんだけど

ミサエ

まだ感覚は長いみたいだけど早朝には産まれそうだって先生が言ってたの

ミサエ

ヒロシ？

ミサエ

なんで返事してくれないの？

〜さらに数時間後〜

ミサエ

ヒロシ？

ミサエ

陣痛が凄いの

ミサエ

痛くて…

ミサエ

早く来てよ…

〜早朝〜

ミサエ

赤ちゃん産まれたよ？

ミサエ

結局来なかったんだね

ヒロシ

お、産まれたか

ヒロシ

お疲れさん！

ミサエ

お疲れさんじゃないよ…

ミサエ

看護師さんだって携帯にかけてくれてたのにさ…

ミサエ

飲み歩いてたんでしょ

ヒロシ

悪かったって

ヒロシ

頭いてぇから寝てから行くわ

ヒロシ

夕方ごろ着く！

ヒロシ

しばらく入院だから大丈夫だろ？

〜夕方〜

ツル

まだ来ないの？

ツル

もう、日が沈むけど

ヒロシ

しつこいなぁ

ヒロシ

行くって言っただろ？

ヒロシ

二日酔いで頭痛がすごいから動けないんだよ

ツル

奥さんが自分の子供を頑張って出産したのに、自分は飲み歩くってどういうこと？

ツル

看護師さん達も協力してくれて夜通し連絡してたのにさ

ツル

頭おかしいんじゃない？

ヒロシ

うるせぇなぁ

ヒロシ

すぐにキレるんじゃねぇよ

ヒロシ

陣痛ぐらいで大袈裟なんだよ

ツル

陣痛ぐらい？

ツル

アンタ、何考えてるの？

ツル

陣痛の痛みがアンタに分かるのかぃ！

ツル

どれだけ女性にとって辛いか

ツル

1人で迎える初めての出産が妻にとってどれほど不安なのか！

ツル

少しでも考えたことがあるのか！

ツル

考えたことはないだろうね…

ツル

無いからそういう頭の悪い発言ができるんだろうね…

ヒロシ

は？

ヒロシ

黙って聞いてりゃ良い気になるなよ？

ヒロシ

頭痛で動けないと言ってもお前くらいどうとでもできるんだぞ？

ツル

やれるもんならやってみな！

ツル

どうするって言うんだ！

ヒロシ

なんだ、その言い方は！

ヒロシ

誰に向かって口聞いてるんだ！

ツル

アンタこそ誰に口聞いてるのさ！

ヒロシ

は？

ヒロシ

ミサエだろ？

ツル

よく見な

ツル

アンタの母親だけど？

ヒロシ

へ？

ツル

これはどういうことだぃ！

ヒロシ

あー…いや…

ツル

なんだ！

ツル

言い訳できることがあんのか！

ヒロシ

いや、まだ酔いが覚めてなくてさ…

ツル

だろうね

ツル

でも、今覚めたんじゃないのか？

ヒロシ

はい…

ツル

私には仕事で忙しいから立ち会えないとか嘘ついて

ツル

私がミサエさんの元に駆けつけたらこれだよ

ツル

ミサエさんから全部聞いたけどどういうことだい？

ツル

アンタ、ミサエさんがしんどいって言ってるのに家事も手伝わなかったんだって？

ツル

ついでの買い物頼んだくらいでいちいち文句言ったりしてさ

ツル

アンタ出産をナメてんじゃないのか？

ツル

女は命削って産んでるんだよ

ツル

アンタの子供をよ！

ヒロシ

はい…

ツル

それなのにアンタは妻を放っといて飲み歩くなんて…

ツル

アンタ父親になるんだろ？

ツル

妊娠がわかった時に泣いて喜んでたのはどこのどいつだぃ

ツル

産まれた子が大きくなって自分が産まれた時に父親は飲み歩いてたなんて

ツル

知ったらどう思うかね

ヒロシ

はい…

ツル

アンタ、仕事が上手く言ってないって当たったんだって？

ツル

仕事のストレスを酒とミサエさんに当たってたんだろう？

ヒロシ

何もかもうまく行かなくて…

ヒロシ

ずっと辞めたいって思ってたけど…

ヒロシ

でも、辞めたら家族で暮らせないし

ツル

何をウダウダ言ってるんだ！

ツル

だったら家族を大切にしなさい！

ツル

お金は仕事をすれば稼げるけど、家族との時間は失ったら戻らないんだよ！

ツル

自分が辛い時にこそ共有して乗り越えるのが家族ってもんじゃないのか？

ツル

どんなに辛いことがあっても、ミサエさんや子供のことを考えて頑張れないのか？

ヒロシ

はい…

ツル

夫婦っていうのはね

ツル

共感することが大切なのよ

ツル

良いことも悪いことも

ツル

まったく…

ツル

とにかく

ツル

産後、ミサエさんはしばらく実家に帰るみたい

ヒロシ

え…

ツル

ミサエさんの希望よ

ヒロシ

だって…

ヒロシ

実家遠いじゃん…

ツル

今はそっちの方が安心するんだって

ツル

そりゃそうだわね

ツル

でも

ツル

こんな状態でアンタと暮らしてるとまた同じことを繰り返して

ツル

アンタとの関係が切れるのが怖いって言ってるのよ

ツル

このことはミサエさんのご両親にも伝わってるから

ヒロシ

大丈夫だよ！

ヒロシ

俺、家事と育児をきちんと手伝ってミサエを支えるからさ

ヒロシ

だから、母さんもミサエのご両親も家に居てくれよ

ツル

手伝うって何？

ヒロシ

え…

ヒロシ

ミサエの手伝いをして負担を減らそうかと…

ツル

その考え方が間違ってるってことにまだ気づかないの？

ツル

アンタも仕事してるから家事を全てすることはできないかもしれないわ

ツル

でもね、育児は手伝うものじゃないのよ

ツル

自ら率先してやるの

ツル

それが当たり前なんだけど

ツル

ねぇ

ツル

改めて聞くけど

ツル

子供は誰の子供なの？

ヒロシ

俺の子供です…

ツル

そうよね？_

ツル

それを手伝うって何？

ツル

他人事なんじゃない？

ヒロシ

はい…

ツル

とにかく出産後はミサエさんのためにご実家へ子供と一緒に帰ってもらいます

ツル

ミサエさんのご両親とも今後のことを含めて、よく話しておきます

〜３週間後〜

ミサエ

ヒロシ、ごめんね

ミサエ

連絡を返してなくて

ヒロシ

ミサエ！

ヒロシ

良いんだよ

ヒロシ

全然良いんだよ！

ヒロシ

大丈夫か？

ヒロシ

ミサエも子供も

ミサエ

うん、元気だよ

ミサエ

私のお父さんとお母さんから聞いたよ

ミサエ

毎日、仕事終わりに電話かけてたんだってね

ミサエ

毎日毎日謝ってきてたって聞いたよ

ヒロシ

うん…

ヒロシ

許されるまで毎日謝るつもりだから

ミサエ

うん…

ミサエ

ごめんね

ミサエ

私どういう顔して会ったら良いか分からなくて…

ミサエ

私は連絡ができなかったの…

ヒロシ

そうだよな

ヒロシ

本当に俺が悪かった

ヒロシ

いつ帰ってきてくれるんだ？

ミサエ

うーん…

ミサエ

ここだと育児に集中できるからなぁ…

ミサエ

でもね

ミサエ

全くと言って良いほど寝る時間がないんだ…

ヒロシ

そうなのか？！

ヒロシ

それは大丈夫なのか？

ミサエ

うん…

ミサエ

でね、そろそろそっちに戻ろうと思うんだ

ヒロシ

本当か？！

ミサエ

ヒロシが頑張ってるの聞いてるよ？

ミサエ

お義母さんに叩き直してもらってるんだって？

ミサエ

家事全般しごかれてるって

ミサエ

私たちがいつ帰ってきても良いように色々準備してくれてるんだよね

ミサエ

あれ以来飲みにも行ってないって聞いてるよ

ヒロシ

うん

ヒロシ

あの日以来禁酒してるんだ

ヒロシ

俺は頼る相手を間違えてたんだ

ヒロシ

でも、口で何を言っても信用にはならないと思う

ヒロシ

俺のやったことは本当に酷いことだ

ヒロシ

だから、行動で変わったって証明するしか無いかなって…

ヒロシ

だから…

ヒロシ

だからさ…

ヒロシ

頼むよ

ヒロシ

離婚はしないでくれよ

ヒロシ

本当に大切なものに気づいたんだ

ミサエ

離婚はしないよ

ヒロシ

本当か？！

ミサエ

うん

ミサエ

ヒロシが変わるために頑張ってくれてること知ってるから

ミサエ

私も頑張るんだ

ミサエ

もちろん、うちの両親も知ってるよ？

ミサエ

今度、家に来たら許すって言ってたよ

ミサエ

妊娠した時のこと思い出してくれたんだよね？

ヒロシ

うん

ヒロシ

俺はミサエと子供のために頑張るんだ

ヒロシ

本当にありがとう…

ミサエ

でもね

ミサエ

私や私の両親に謝ったりお礼を言うのは良いんだけど…

ミサエ

ちゃんとお義母さんにも言わなきゃダメあよ？

ミサエ

自分の家のこともあるのにヒロシのために時間を割いてくれてるんだよ？

ヒロシ

ちゃんと伝えます

ミサエ

私が帰ったからって楽になるわけじゃないからね？

ミサエ

家事は手伝うけど、育児があるんだからね？

ミサエ

ちゃんと父親してよね？

ヒロシ

もちろんだよ

ヒロシ

もう絶対に家族に当たったりしない

ヒロシ

ちゃんと仕事のことも家族のことも話し合うからさ…

ミサエ

本当だよ

ミサエ

お願いしますね

ミサエ

お父さん

ヒロシ

わかりました

ミサエ

じゃあ、明日の夕方ごろにそっちに着くと思うからさ

ミサエ

お出迎えよろしくね

ヒロシ

心待ちにしてまーす

〜後日談〜

ミサエ

それからのヒロシは人が変わったように家事をしてくれるようになりました

ミサエ

家での素行が直ったからか、仕事も上手く行くようになってきたそうです

ミサエ

今では昇進の話もでてるんだとかで、帰ってくるとルンルンです

ミサエ

このまま、家族として上手く過ごす日々が続くことを祈るばかりです

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

タナカトシキ

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

LINE１３９２

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#スカッとの新着小説
一覧

関連するタグ

LINE１３９２

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#スカッとの新着小説一覧

関連するタグ

#スカッとの新着小説
一覧