K
なあなあお前ら首あり地蔵って知ってるか?
数年前の話ななる。僕らは当時、大学3年生だった。季節は夏。大学の食堂で三人昼飯を食っていた時に、怪談好きなKが、雑談のふとした合間に話し始めたのが、そもそもの始まりだった。
S
首あり地蔵ってお前、そりゃ普通のお地蔵様だろ。
僕の隣に座って、味噌汁を飲んでいたSが、馬鹿にしたように言う。KとSと僕、Kはカレーの大盛りで、Sはしゃけ定食で、僕は醤油ラーメン。いつものメニュー、いつものメンバーだった。
でも確かに、首なし地蔵だったならば、はっきりとは思い出せないが、何かの怪談話で聞いたことがあるかもしれない。話のネタにもなるだろう。しかしKは、首あり地蔵と言ったのだ。Sの言うとうり、それは首のある、普通のお地蔵様だ。
K
ちげーんだよ!!あのな!その地蔵の周りには、もう五体地蔵があってな?首あり地蔵の一体以外は、全部頭がねぇんだってよ!
なるほど、だから首あり地蔵か、僕はその様子を想像してみた。6体の地蔵のうち、一体しか首がない。
ぼく
ねえ、なんでそうなってんの?
K
それがなぁ?その一体だけ首のある地蔵が、ほかの地蔵の首をチョンパしたっつう話なんだこれが!
そう言ってKは下を出し、自分の首をかっ切る仕草をした。
ぼく
でも、そんなことして地蔵になんの得があるんだよ
K
さぁ?知らねぇよ。お供えもん独り占めしたかったとかじゃね?
S
ごっほゴホッ!
Kがそう答えると、Sがかなりの勢いで咳をした。それからポケットティッシュを出し、口元を拭うと、
S
バカヤロー、喉につっかえたじゃねえか。
K
んだよぉ、俺のせいかよぉ?
S
おめぇのせいだよ!
漫才コンビは、今日もさえている。
ぼく
それで、それ以外に首あり地蔵に都市伝説ってあるの?
K
ああ、
K
なんでも、首あり地蔵は、
K
人を襲う!
S
ゴホッ!
またSがかなりの勢いで咳をした。
K
なんだよS、俺の話が信じられねえのかよ!
S
お前、すぐにでもその地蔵に謝ってこい!
K
それだって!
Kの大声に驚き、咳き込んだ。
すると、鼻からラーメンの切れ端がでてきた。
久しぶりだ。こんなこと
K
今夜、行こうぜ!
Kのあまりの勢いに、行かざる得なかった。
そして夜の2時
ぼく
Kの奴、俺ら誘っといて遅刻か?
すると向こうから、Kが走ってきた。
K
すまんすまん。遅れた!
ぼく
ったく、
K
あれ?そういえばSは?
ぼく
あっ、そういえば来てないね。
話してるうちに、Sが、あくびをしながら走ってきた。
S
すまん。寝てた。ハァーあ
K
あくびしてるんじゃねえよ!
K
行こうぜ!
ぼく
おいっ、はえーよ!
S
お前おせえな!
ぼく
2人とも待ってくれよ!
運動神経が悪いぼくは、ビリだった。
ぼく
やっと追いついた……
K
これだぜ、噂の地蔵。
K
ぼく
結構雰囲気出てんじゃん。
S
だな。