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何度目だろう。
彼の夢を見るのは。
梨奈
数日前に彼を振ったのは私だというのに。
彼の
冬馬
の一言をまだ求めている。
私が彼を振ったのは、決して彼が嫌いだからではなかった。
私の脳に悪性の腫瘍が見つかったのだ。
末期だった。
医師からの余命宣告も受け、私は彼との別れを決めた。
彼の重荷になりたくないからと、
自分の気持ちに嘘をついて。
梨奈
梨奈
梨奈
梨奈
梨奈
梨奈
違う。
分かっている。
私が彼に腫瘍のことを言わなかったのは
別れを告げられる可能性を少しでも感じたからだ。
怖かった。
嫌われたくなかった。
だったら、
自分から振ってやろうって。
私の臆病な心が最悪の結果を生み出した。
私の
梨奈
という一言だけで
彼と私の関係は終わった。
梨奈
病室で1人つぶやく声は
いつも以上に孤独に感じられた。
全て自分のせい。
これが自分がした選択の結果だ。
私は、
もうあまり動かない体を無理やり動かしながら
病室の窓へと向かった。
梨奈
花びらがひとひら、私の元へと舞い降りた。
しかしその花びらも、
ほかの花びらにつられて
また宙を舞っていく。
梨奈
彼もきっと
先程の花びらのように
私以外の誰かと人生を共にすることになるのだろう。
私がいなくなった世界でも
彼の人生は続いていくのだ。
悔しい。
悔しい。
ただただ悔しい。
私だって、
彼と人生を歩みたかった。
……まだ、一緒に居たかった。
しかしそれはもう叶わぬ夢。
私は虚空を眺めながらただ一言
梨奈
と呟いた。