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『キリクチ』

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『キリクチ』

1 - 『キリクチ』

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2018年12月26日

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部内分裂が起こり、止められない自分が悔しいのと、部が割れてしまうのが恐ろしい。 精神を安定させる薬を使って無理矢理心を鎮めて笑顔でいた。そして、問題を解決しようとするが部員のほとんどはその言葉に振り返らなかった。 そんなとき体調を崩した彩は、一人、寮にある自分の部屋に戻る。 しかし一人でいるとどうしても不安になり、昔癖だった自傷行為をしてしまいそうで安定剤を飲もうとするが、薬が切れてしまっていた。でも、体調は優れず、買いに行ける余裕は体にも心にもなかった。

月見 彩

…うそ。

彩は震える声で安定剤の空の瓶を取り落とし、体ごと脱力したように崩れ落ちた。

月見 彩

ーーーー怖い…怖い…どうしよう

両腕で体を押さえてみるが震えが止まらない。そんな時、ふと、目の前の机の引き出しが目に入る。

月見 彩

ーーーー痛いのが欲しい…。

机の引き出しにもうしないと誓いしまい込んだカッターナイフを思い出す。ずっと我慢してきた自傷行為。今はそれがとてつもなく欲しくて仕方がない。 震える手で静かに机の引き出しを開け、カッターナイフを取り出した。カチッカチッ…とカッターナイフの刃を伸ばす音が独りぼっちの部屋に響く。そして、そっと手首に下ろす刃物。

月見 彩

ーーーー痛い…。

でも、自分の傷口から溢れだしてくる赤い液体。そしてその傷は気持ちが悪いはずなのに何故か彩の心を落ち着かせた。 彩は今まで必死に安定剤と忍耐で我慢してきた、たったそれだけの行為に心が落ち着いてくることが、堪らなく恐ろしくて、また、耐え難い不安が心につのってくる。彩はまた、カッターを握り直す。そして何度も何度も切りつけて、怖くて、血が流れたせいでか白くなった頬に暗い涙が溢れた。

中山 拓人

彩、入るぞ。

彩は、はっと顔をあげた。突然の来客。入ってきた来客、中山拓人が彩の姿を見ていきを飲んだのがわかった。

中山 拓人

…なに、やってんだ。

月見 彩

あっ、あのっ…、あの、これは…

責め立てるように冷たく、いつもと雰囲気の違う中山の声に、彩は顔を伏せてカッターナイフの刃を切りつけていた方の手できつく握り込んだ。

月見 彩

ーーーー痛い。

カッターナイフの刃が手の平に食い込んで血が流れるのを感じる。

中山 拓人

っ…やめろ!

その行為に驚いたように中山は彩の手からカッターナイフを慌てて取り上げた。

月見 彩

いやっ返してっ!

彩は中山に懇願するように、泣き声で取り上げられてしまったカッターナイフを求める。一時的にでも不安を薄めてくれるそれが取り上げられてしまった。

月見 彩

ーーーー怖い…、怖い…

また、心が不安に埋め尽くされていく。 中山は冷たい目で彩を見下ろしていた。そして、聞いたことのないような冷たい声で彩に問った。

中山 拓人

どうして、こんなことしたんだ。

月見 彩

いやっ…

しかし、不安で思考が働かない彩はただその言葉を繰り返すしかなかった。

中山 拓人

どうして…

月見 彩

いや…

中山の声音がかわる。

中山 拓人

どうして、こんなことしなくちゃならなくなるまで、こんなに傷つくまで、我慢して、俺になにもいってくれなかったんだ。

月見 彩

……っ

急に変わった中山の雰囲気に彩は涙に濡れた顔をゆっくりと上げた。そこには、つらそうに目をうつむかせた中山が顔を歪ませて立っていた。 すると、痛そうな、切なさそうな頼りない顔をして彩を抱きしめる。彩の手から流れる血と、溢れてもとまらなくなっていた涙が中山の服に吸い込まれていく。

月見 彩

なか…やま?

中山 拓人

拓人。

月見 彩

え…

中山 拓人

拓人って言って。

中山は彩を抱き締めたままそう言う。 何が起こっているのか理解が追い付かない彩は中山に言われるがまま、その名を呼んだ。

月見 彩

た…拓人…

中山 拓人

あぁ。

続きはまた気がむいたら投稿します。

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