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宮野は、昔から変わった奴だった。
口癖は「いやーん」「これ可愛い」「ねぇねぇ」など。
体育の授業でも、走り方は女みたいで、
クラスメイトからは「オトコ女」「オネェ」と言われ、からかわれていた。
でも、本人はあまり気にしていなかった。
宮野
宮野
…俺は、たまたま宮野と席が隣だったから友達になっただけで、
共通の趣味も無ければ、
委員会だって違う。
あまり接点はなかったはずなのに、
気がついたら、いつも一緒にいた。
高校三年生
一学期
鉄矢
宮野
宮野
鉄矢
宮野
宮野とは高校も同じだったし、
同じクラスになることが多かったから、
しょっちゅう遊んだり、
一緒に買い物に行ったりした。
鉄矢
宮野
宮野
宮野
鉄矢
鉄矢
宮野
宮野
鉄矢
宮野
宮野
鉄矢
宮野
鉄矢
宮野
宮野
…宮野は、昔から言葉とは裏腹に悩んでいることが多く、
一人の時は、よく暗い顔をしているようだった。
俺も担任から教えてもらわなければ、知らなかった事実だ。
鉄矢
宮野
鉄矢
鉄矢
宮野
宮野
鉄矢
宮野
鉄矢
宮野
宮野
鉄矢
宮野
宮野
鉄矢
鉄矢
宮野
宮野
鉄矢
宮野
まだ、受け入れられない。
鉄矢
お前がいない生活を送ることが
こんなにも苦痛だなんて、知らなかった。
いままで近くにいすぎて、わからなかった。
宮野の存在が 俺の中でこんなに大きくなっていたなんてー
宮野が死んだのは
8月31日だった。
最高気温が40度を超えた日で、
こんな日にわざわざ学校に行くなんて、
宮野は阿呆だな、って思った。
「暑いから、やめた。」
「面倒くさいから中止!」
そんな感情が彼にあったなら、
その日 彼が学校で自殺することはなかっただろう。
鉄矢
暑いのに、
体の震えが止まらなかった。
怒りと、悲しみで
俺まで、どうにかなりそうだった。
鉄矢
鉄矢
宮野の自殺の原因を考えた。
1.家庭環境
宮野の家は、母親が3回結婚し、2回離婚していた。
母親が再婚するたびに、名字が変わり、母親が離婚する度に「宮野」姓に戻った。
小学生の頃は、からかう子供たちもいたが、
中学生になってからは、家庭の事情に立ち入るような奴、デリカシーのない奴は周りから消えていた。
…ただ、宮野が苦労していたのは間違いない。
鉄矢
2.進路
宮野はいわゆる「天才」だった。
授業を聞いていなくても、テストは毎回高得点。
本人が自ら努力しなくても、英語や中国語をマスターしていた。
宮野
宮野
鉄矢
鉄矢
宮野
宮野
宮野
…本当は、宮野は大学に行きたかったのではないか?
家にお金がないから、
あるいは、新しい父親に気を使って、進学を諦めたのではないか…?
鉄矢
3.アルバイト
宮野は放課後に飲食店でアルバイトをしていた。
そこの仕事が激務で、勤務中に怪我をすることがあると本人から聞いたことがある。
鉄矢
宮野
鉄矢
宮野
鉄矢
鉄矢
鉄矢
宮野
鉄矢
宮野
その時は、寂しそうに笑っていたけれど、
俺は宮野のバイト先に行ったことがないから何も分からない。
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
調べたいことは合計で3つあったが、
まずは、宮野の家に向かうことにした。
鉄矢
鉄矢
俺はまず、宮野の家に行った。
宮野 母
線香を上げ、
まじまじと宮野の仏壇を見る。
鉄矢
鉄矢
正直、今でも実感は沸かない。
俺は夢を見ているだけで、
本当は 宮野は生きているのではないか…?
一人でフラリと
海外旅行に、行ったのではないか?
あんなに、英語が得意だったんだから。
習ってない中国語だって、俺には聞き取れなかったけど、ペラペラだったんだから…!
宮野 母
宮野 母
宮野の母親の表情を見ると、
ああ こっちが現実なんだ…
そう、思わざるを得なかった。
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
宮野 母
鉄矢
宮野 母
宮野 母
宮野 母
宮野 母
宮野 母
宮野 母
鉄矢
宮野 母
宮野 母
宮野 母
宮野 母
鉄矢
急に俺は 怖くなってしまった。
もし、自殺の原因が
俺の存在だったら…?
宮野 母
宮野 母
宮野 母
鉄矢
鉄矢
鉄矢
宮野 母
宮野 母
鉄矢
鉄矢
ここで、沢山話をした。
宮野の、新しい父親のこと、
名字が変わっていじめられること、
部活で使う道具の費用が捻出できなくて宮野は部活を辞めたこと…。
俺に好きな人ができたこと、
俺がふられたこと。
鉄矢
鉄矢
これからも、ずっと一緒にいるつもりだった
それが自然なことで、当たり前だと思っていたからだ。
鉄矢
意を決して、
日記を開いた。
✗月●日
今日は鉄矢と宿題をした。俺はつい宿題をやり忘れるから、鉄矢がいると、提出物を出す習慣がつきそうだ。
鉄矢
鉄矢
✗月▲日
ふと、保健体育の教科書を開く。
“男女の体の違い“
ドキッとした。
そもそも、男でも女でもない俺はどちらなんだろうか?
自分の体は男だけど、
中身は女…と言い切れない部分もある
文章にできない、気持ち悪さが残る
鉄矢
鉄矢
●月◆日
深夜のラジオで、とある歌が流れた
歌詞は、こうだ
“自分が男とか女とか“
“そんなカテゴライズ、どうでもいいんだ”
“自分らしく 生きていきたい!”
ーああ、これは、俺のことを歌っている!
こんなふうに思う人が、世の中には俺以外にもいたんだと、嬉しくなった
鉄矢
●月✗日
この前聞いた歌をヒントにスマホで調べてみたら、
「Xジェンダー」という言葉がヒットした。
どうやら、性自認が曖昧な人、
性別が男になったり、女になったり揺れ動く人、
男女どちらの感覚にもあてはまらない人などを…そう呼ぶらしい。
鉄矢
鉄矢
●月■日
担任から、将来どうするか細かく聞かれる。正直、うざったい。
俺は自分が何者かわからないのに、
将来なんか、想像つく訳ない。
キャビンアテンダントになってみたいし、
ラーメン屋の店長も、やってみたい。
ライブハウスのオーナーも、いいと思っている。
でも、今の担任は俺の本気の回答を冗談に思っているらしく、信じてもらえない。
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
必ず毎日書かれていたのに、そこから先の記載は無かった。
鉄矢
鉄矢
コンコン
宮野 母
鉄矢
鉄矢
宮野 母
宮野 母
宮野 母
日記を閉じた、その時だった。
鉄矢
しおりには手書きで、コメントが書かれていた。
宮野 母
宮野 母
そこには こう書かれていた
性別なんて、あっても無くても関係ない
あなたは隆盛として 生きればいい。
私が見られなかった“性別に囚われなくなった世界”を、
あなたは自身の目で 見られるといいわね
鉄矢
宮野 母
宮野 母
鉄矢
宮野 母
宮野 母
宮野 母
鉄矢
宮野 母
本当に俺は 宮野のことを何も知らない。
リビング
宮野 母
鉄矢
宮野 母
宮野 母
宮野 母
宮野 母
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
宮野 母
宮野 母
鉄矢
宮野 母
鉄矢
宮野 母
鉄矢
鉄矢
鉄矢
宮野 母
宮野 母
宮野 母
鉄矢
アイツが一時期 擦り傷だらけだったのは
それが理由だったのか…
宮野 母
宮野 母
鉄矢
宮野 母
宮野 母
宮野 母
宮野 母
宮野 母
鉄矢
宮野 母
宮野 母
鉄矢
宮野 母
鉄矢
宮野 母
宮野 母
宮野 母
宮野 母
「俺、実はもうすぐ死ぬんです」
「店は、他に継いでくれる奴が見つかったんだけど、」
「身寄りがないから、家とか、土地とか、誰に譲るか決めてなかったんだよね…」
「俺の私物を、できることなら隆盛に、全てあげたい、余命宣告を受けた時から、ずっとそう思ってたんだ」
「流石に、エゴかなぁ」
宮野 母
宮野 母
宮野 母
宮野 母
宮野 母
鉄矢
今まで、宮野からは新しいお父さんの話はあまり聞かなかったが、
アルバイト先の店長の話は沢山してくれた。
鉄矢
鉄矢
鉄矢
宮野、今まで理解してあげられなくてごめん。
大切な人を失って、辛かったんだな。
性自認のことも、きっと幼少期から悩んでいたはずだ。
鉄矢
鉄矢
宮野の母親から、帰り際に聞いた話によると、
宮野は、亡くなる前に、双極性障害だったそうだ。
双極性障害は、寛容したときに自死してしまうことがあるらしい。
回復の兆しが見えてきて、行動を起こす元気がある時、一番危ないそうだ。
宮野 母
宮野 母
宮野 母
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
宮野 母
宮野 母
宮野 母
宮野 母
鉄矢
鉄矢
宮野、俺はまだそっちには逝かないよ。
宮野みたいな存在を、一人でも減らしたいから。
でも、いずれそっちで再会することができるだろうから、
その時には、互いに腹割って話そう、
今度こそ。
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
鉄矢
いつだって
俺には、お前が
必要なんだからさ。