テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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永遠にそこにいろ

第1話 - 永遠にそこにいろ

2022年05月02日

#ホラー

#サスペンス

#青春恋愛

#一次創作

摩訶子(まかこ)2nd

『エイエンニ、ココニイロ……エイエンニ、ココニイロ……』

有紗(ありさ)

(…誰かの声が聴こえる)

有紗(ありさ)

(正確には、聴こえているわけではない。
音という概念を持たず、言葉の意味だけが重く心にのしかかってくるようで、誰の声なのか……誰の言葉なのか、わからない)

有紗(ありさ)

誰よ！私に文句があるのなら、堂々と出てきなさい！

有紗(ありさ)

私が一声かければ、あなた一人なんか袋叩きにできる人数を集められるわ。
…だから怖くて出てこられないのでしょう？可哀想にね。

——

爽太(そうた)

有紗………

美歩(みほ)

おはよう有紗！

有紗(ありさ)

遅い。
私を待たせるなんて、随分偉くなったのね。

大地(だいち)

おいおい、友達に偉いも偉くないもないだろ？

大地(だいち)

今日はこうしてみんなでお前の誕生日を祝いに来てやってるんだ！
もっと嬉しそうにしたっていいだろ〜？

大地(だいち)

なぁ爽太？

爽太(そうた)

…なんで僕に振るの？
僕は別に嬉しくないし、今すぐ帰ったっていいんだけど？

美歩(みほ)

ま、まあまあ、みんな！
今日は有紗の誕生日なんだから、ちょっとぐらい有紗のわがままも許してあげよう！ねっ？

大地(だいち)

今日だけじゃない！
いつも許してやってんだよ！
とくに俺は〜！

美歩(みほ)

そりゃあ大地は有紗の彼氏なんだから当然じゃない。

大地(だいち)

召使いの間違いじゃねぇのか？

美歩(みほ)

あはは……

有紗(ありさ)

………

美歩(みほ)

…？
有紗、どうかした？

有紗(ありさ)

……いいえ。
ちょっと最近変な声が……耳鳴りがうるさくて。

有紗(ありさ)

それで、どこに行くっていうの？

美歩(みほ)

今日はね、レンタルルームを用意してるの。
そこでみんなでバースデーパーティーしようと思って！

大地(だいち)

美歩すげぇ張り切って準備してたんだぞ？
ちゃんと感謝しろよ？

有紗(ありさ)

なんであんたに言われなきゃいけないのよ？
私に指図するんじゃないわ。

大地(だいち)

へいへい、すいませんでしたーお姫様ー。
あ〜、俺って苦労人！

有紗(ありさ)

何ですって？

美歩(みほ)

ま、まあまあまあ…

爽太(そうた)

有紗。いい加減にしなよ。
みんなこうして有紗のお祝いしようって言って休みの日に集まってるんだ。

爽太(そうた)

こっちに祝う気持ちがなくなれば、パーティーなんてそれまでだよ。
僕はここで失礼する。

美歩(みほ)

ちょっと、爽太…！

有紗(ありさ)

えぇ。どうぞ帰って頂戴。
私だって誕生日にわざわざこんな陰気な顔なんか見たくないわ。

美歩(みほ)

有紗っ！

有紗(ありさ)

だいたい、あなたって大地の親友ってだけで、別に私とも美歩とも関係ないじゃない。
何でいつも付いてくるのかわからないのよね。

美歩(みほ)

有紗！そんなこと言っちゃ…

大地(だいち)

なぁ〜に言ってんだよ。
俺らいつもこの４人でつるんでんだろ。
複雑なこと考えなくていいんだって！

大地(だいち)

ほら爽太もヘソ曲げんなよ〜。
仲良くお姫様のバースデーパーティーしようじゃないか♪

爽太(そうた)

………

有紗(ありさ)

……ふんっ。
ここであれこれ言い返したら、私が子供みたいじゃない。
行くなら早く行きましょう。

美歩(みほ)

え？う、うん！そうだね！

大地(だいち)

はぁ〜い、お姫様１名様ご案内〜。

美歩(みほ)

さすが大地。
やっぱ彼氏は違うね〜。ね、爽太？

爽太(そうた)

……だから、僕に振らないでくれる？

美歩(みほ)

最寄り駅に到着〜！
ここから少し歩くよ。

有紗(ありさ)

ねえ、レンタルルームなんてその辺にいくらでもあるんじゃないの？
何でこんなに遠くまで来る必要があるのよ？

大地(だいち)

あちゃ〜、電車乗せられすぎてご機嫌損ねちまったぜ。

有紗(ありさ)

うるさいわね。

美歩(みほ)

えーっと……それは着いてからのお楽しみだよ！

美歩(みほ)

その辺のレンタルルームとはちょっと違うの。
特別な場所を用意してるんだから。

有紗(ありさ)

特別？

美歩(みほ)

そう。
……だって、今日は特別な日だから。

爽太(そうた)

………

大地(だいち)

なに妙な顔してんだよ爽太！
特別な日だろ？有紗が生まれた日なんだからな。

有紗(ありさ)

あんたも大袈裟よ。
恥ずかしいからやめて。

大地(だいち)

怒られちゃったー。

美歩(みほ)

もうすぐ着くよ。
ごめんね、主役をこんなに歩かせて。

大地(だいち)

それはいいんだけどよ、

有紗(ありさ)

なんであんたが答えるのよ。

大地(だいち)

いや、それより随分と寂れた所に来たもんだなぁと思ってさ。

爽太(そうた)

…そういえば、急に人けがなくなってきたね。

美歩(みほ)

あ！着いたよ！ここ、ここ。

有紗(ありさ)

え？
ちょっと、着いたってどういうことよ？
レンタルルームなんてどこにもないじゃない。

美歩(みほ)

あのね、レンタルルームっていうか、みたいなものっていうか、まあ、中に入っちゃえば似たようなものなの！

大地(だいち)

そっか！なら入ろうぜ！

有紗(ありさ)

入るってどこによ？

美歩(みほ)

だからぁ、これだよ？

有紗(ありさ)

これって……この倉庫のこと言ってるの？

美歩(みほ)

うん！

有紗(ありさ)

なんで倉庫なのよ！
ちょっと待ってよ、ちゃんと説明して…

大地(だいち)

あ、俺もう入っちゃったけど。

有紗(ありさ)

バカ。何してんのよ、早く戻って来なさい！

美歩(みほ)

戻る必要なんてないよ？
パーティー会場はここなんだから。

有紗(ありさ)

は？
ちょっと美歩、あんたさっきから調子に乗ってんじゃないの？

美歩(みほ)

はぁ〜い、入ってくださぁい！

――ドンッ

有紗(ありさ)

きゃあっ！

大地(だいち)

おっ、と！
ナイスキャッチ俺！

美歩(みほ)

……それじゃ、有紗、大地。
………楽しいお誕生日を過ごしてね。

大地(だいち)

…？

有紗(ありさ)

美歩…？
美歩、ちょっと、何してるのよ！
何でドア閉めるの！？美歩！美歩！！

大地(だいち)

えっ！な、何！？
ドア閉められたのか！？
何で！？
おい、美歩！？爽太！？

有紗(ありさ)

開けなさい！！！

爽太(そうた)

『……有紗』

有紗(ありさ)

！？
爽太…？

爽太(そうた)

『…反省しろ。自分の愚かさを』

有紗(ありさ)

……え…？

大地(だいち)

美歩！爽太！おぉい！！
………マジかよ……マジでアイツら……俺らを閉じ込めやがった……？

有紗(ありさ)

なん……でよ……なんで？何でなのよ？

大地(だいち)

有紗？

有紗(ありさ)

意味がわからない！
何で私が美歩にこんなことされなきゃいけないっていうの！？

大地(だいち)

おい、落ち着けって。

有紗(ありさ)

何で！？
私はあの子に感謝こそされても、恨まれる覚えなんて何もないわ！！

大地(だいち)

…感謝……？

有紗(ありさ)

そうよ！
子供の頃から、あの子はずっと、私のおかげでいい生活が出来てるのよ！

大地(だいち)

………

有紗(ありさ)

小学校の時、あの子の家の工場が倒産しかけて、私の父の会社からの融資で何とか持ち直したの。

有紗(ありさ)

一家で路頭に迷わずに済んだ上、それをきっかけに私とお友達になれたことで、それまで学校で虐められていたあの子が虐めにもあわなくなったのよ。

大地(だいち)

………

有紗(ありさ)

中学も、高校も、父の力添えがなかったら私と同じ学校になんて入れなかったわ。

有紗(ありさ)

美歩は私と一緒にいられることでこんなに幸せに過ごしてこられたのよ！
なのに何で……？何でその私に、美歩がこんなことをするっていうのよ！？

大地(だいち)

………落ち着け、有紗。

有紗(ありさ)

なによ偉そうに！

大地(だいち)

大丈夫だ。一人で閉じ込められたわけじゃないだろう？
…美歩はお前のことを本気で恨んでるわけじゃない。本気だったら、お前を一人にしたはずだ。

有紗(ありさ)

……それは…

大地(だいち)

俺がいるだろう？
二人なら必ずここから出られる。

大地(だいち)

いくら彼氏だからって、関係ない奴のことまで一緒に見殺しにするほどあいつらも狂った奴らじゃないさ。

有紗(ありさ)

………そうね。
ごめんなさい、大騒ぎして。

大地(だいち)

わぁー！謝った！
有紗様が謝ったぞー！

有紗(ありさ)

……バカ。

大地(だいち)

はは。落ち着いたみたいだな。

大地(だいち)

さてと、大丈夫だとは言ったものの、あいつらが飽きるのをただボケっと待ってても仕方ない。

大地(だいち)

何か自力で脱出できる方法がないか、ちょっとその辺見てくるよ。

有紗(ありさ)

わかった。
怪我とかするんじゃないわよ。

・

『エイエンニ、ココニイロ……』

有紗(ありさ)

…！？

有紗(ありさ)

ここに……永遠に………？

『有紗ちゃん！！怖いよぉぉ！！美歩を一人にしないでええええ！！』

有紗(ありさ)

！！

有紗(ありさ)

嫌……嫌……っ！
助けて！大地！大地ぃぃ！！

大地(だいち)

はぁーい？

有紗(ありさ)

！
大地！！

大地(だいち)

なんですか〜っと……！

――バシッ！

有紗(ありさ)

きゃあっ！？

有紗(ありさ)

………なん………で……？

大地(だいち)

なんでなんでなんで……お前今日そればっかりですねえ！？

有紗(ありさ)

……っ…

大地(だいち)

そんなに知りたきゃ教えてやるよ！
知らねえのお前だけなんだからなあ！！

有紗(ありさ)

………？…

大地(だいち)

俺がお前の彼氏だって？
本気でそう思ってたのかめでてえ奴だなテメェはよお！

大地(だいち)

ふざけんな。
俺が大事なのは、ガキの頃からずっと美歩だけなんだよ！！

有紗(ありさ)

……！？
……な…に……言って…

大地(だいち)

…俺が何も知らないとでも思ってんのか？

大地(だいち)

……【あの日】の翌日、俺は美歩に、全部聞いたんだ……。

もういいかーい

まあだだよー

・

もういいかーい

もういいよー

美歩(みほ)

あーあ…かくれんぼ嫌なのに、有紗ちゃんがやるっていったら、みんなやろうやろうって言うんだもん。

美歩(みほ)

……はぁ、この倉庫怖いよぉ。
こんな所に隠れるんじゃなかった。

美歩(みほ)

早く誰か来ないかな。
鬼の有紗ちゃん、早く見つけてくれないかな…。

有紗(ありさ)

あ、美歩みーつけた。

美歩(みほ)

有紗ちゃん！
よかったぁ。
じゃあ次は美歩が鬼ね。みんなの所に…

有紗(ありさ)

見つけたけど、見つけなかったことにする。

美歩(みほ)

え……？

有紗(ありさ)

わたし今、面白い遊びを思いついたの。

美歩(みほ)

え？え……？

有紗(ありさ)

あのね、美歩はずっとここにいるの！

美歩(みほ)

……え？
それ、どういうこと……？

有紗(ありさ)

わたしが『美歩は先に帰っちゃったのかもね』って言ったら、みんな『そうだね！』って言ってお家に帰っちゃうんじゃないかなって、今ふと思ったの！

美歩(みほ)

………

有紗(ありさ)

だからやってみるの。
いい？美歩はまだ見つかってないから、ずっとここに隠れてるの。

美歩(みほ)

で、でも……みんな帰っちゃった後は……？美歩も、帰っていいの……？

有紗(ありさ)

んーと………だめ！

美歩(みほ)

………

有紗(ありさ)

みんなが帰っても、美歩だけ隠れたまま、ずっとここに居たら面白くない？

美歩(みほ)

有紗ちゃん……

有紗(ありさ)

まあでもどうせ、夜遅くなったら大人達が探しに来ちゃうと思うよ？つまんないけど。

美歩(みほ)

………

有紗(ありさ)

そしたら美歩は、私に言われたって言っちゃだめだからね！

有紗(ありさ)

かくれんぼが続いてると思って勝手に隠れ続けてたんだって言うのよ？

有紗(ありさ)

わかった？

美歩(みほ)

そんなの………

有紗(ありさ)

約束。
もしやぶったら、……もう美歩のことは【しらない】から。

美歩(みほ)

！

美歩(みほ)

……や、やだ……有紗ちゃん………

有紗(ありさ)

じゃ、永遠にここにいてね〜♪

美歩(みほ)

待って……待ってよ………怖いよ、……有紗ちゃん、お願い………

美歩(みほ)

美歩を一人にしないでえええええ！！

｢ねーみんなー、美歩もう先に帰っちゃったんじゃないかなー？」

美歩(みほ)

………！

大地(だいち)

美歩！有紗から聞いたぞ！
お前きのう夜遅くまで一人で神社の倉庫に隠れてたんだって！？

美歩(みほ)

大地………

大地(だいち)

なんでそんなバカなまねしたんだよ！？
お前のことだから、何か事情があったんだろ！？

美歩(みほ)

………

有紗(ありさ)

大地〜！行くわよ〜！

大地(だいち)

へ〜い！

大地(だいち)

(……学校終わったら公園に来い。
ちゃんと話してくれよ？)

美歩(みほ)

大地……

大地(だいち)

ざっけんな！
何でそこまで言いなりになってんだよ！？

大地(だいち)

今から先生に言いに行くぞ！

美歩(みほ)

待って！だめ！

大地(だいち)

なんで！？

美歩(みほ)

わたしは……有紗ちゃんがいないとだめなの…。
……今はまだ、待って。

大地(だいち)

………

美歩(みほ)

今は、有紗ちゃんも子供だから、よくわからないでいじわるしちゃうだけかもしれない。

美歩(みほ)

……もう少し大きくなったら、有紗ちゃんも本当の……優しい有紗ちゃんになってくれるかもしれないから。

大地(だいち)

……それまで黙って見てろってのか？

美歩(みほ)

変わらないってわかったら、大人になる前でもいい。
……その時は、私が自分の手で復讐する。

美歩(みほ)

だからその時まで、わたしたちは有紗ちゃんに嘘をつく。

大地(だいち)

……それで、いいんだな？

大地(だいち)

だから俺達は、今日までずっとお前を見てきた。

大地(だいち)

お前が成長して、美歩の言う『本来の優しい有紗』になるのを、ずっと待ってたんだ。

有紗(ありさ)

………

大地(だいち)

もういくら待っても無駄だと、俺もあいつもわかった。
大人になるにはまだ少し早いが、…もう充分だろ？

大地(だいち)

……ここで俺と二人になった時にお前が少しでも反省や後悔を見せれば、美歩に連絡して、すぐに解放してやってもいいかと思ってたけど………

大地(だいち)

結局、お前の口から出たのは、一番聞きたくない言葉だった。

有紗(ありさ)

………私、は……

大地(だいち)

……お前はどうせ、ガキの頃のかくれんぼのことなんか覚えてもいないんだろう？

大地(だいち)

美歩にとってどんなに恐ろしい夜でも、お前にとっては記憶の片隅にも残らない、どうでもいいことだったんだろうな。

有紗(ありさ)

………忘れて、ない………

『エイエンニ、ココニイロ……』

有紗(ありさ)

(私は……忘れてない………あの声は………)

『エイエンニ、ココニイロ……』

有紗(ありさ)

………

美歩(みほ)

大地、出てきて。

大地(だいち)

遅せぇよ。

美歩(みほ)

ごめん。…ありがとう。

有紗(ありさ)

………

大地(だいち)

じゃあな、有紗。

大地(だいち)

……お前は永遠にここに居ろ。

・

有紗(ありさ)

(……今、何時なんだろう…？)

・

有紗(ありさ)

(…あの時の美歩も、こんな気持ちだったのかな……？)

有紗(ありさ)

(…いや、あんなに小さかったんだから、もっとずっと……怖かったんだろうな…)

有紗(ありさ)

美歩……

『有紗ちゃん！怖いよぉ！美歩を一人にしないでえええ！』

有紗(ありさ)

美歩……ごめん………ごめんね………っ…

爽太(そうた)

…有紗。

有紗(ありさ)

……！？

爽太(そうた)

……ボロボロ。
…立てる？

有紗(ありさ)

爽太……

爽太(そうた)

…ひどい顔。

有紗(ありさ)

爽太……助けに、来てくれたの…？

爽太(そうた)

……僕は、……その顔が見たかった。

有紗(ありさ)

……え…？

爽太(そうた)

…きっと、美歩も、大地も……これが見たかったんだろうな。

有紗(ありさ)

……な、何……？

爽太(そうた)

有紗。

有紗(ありさ)

嫌……来ないで………あなたも、私が憎かったのね……？

有紗(ありさ)

……ふふ、ふふふっ………みんな、私に復讐したかったのか…。

有紗(ありさ)

関係ないと思ってた爽太にまで、憎まれるようなことを何かしてたんだ。
…そっか。……私は、それだけのことをしてたんだね。

爽太(そうた)

………………違う。

有紗(ありさ)

…？

爽太(そうた)

…ねえ、君さ。
さっきも、今朝も、僕のこと【関係ない】って言ったよね。

爽太(そうた)

……正直、悲しかったな。

有紗(ありさ)

…爽太……？

爽太(そうた)

僕にとって人生が変えられたことでも、君にとってはすぐに忘れちゃうようなことなんだよね。
…わかってても、やっぱりちょっと、悲しくなるな。

有紗(ありさ)

…え……？

爽太(そうた)

覚えてない？初めて話した日のこと。

爽太(そうた)

中学の時、屋上で……

有紗(ありさ)

そこの男子！何をしているの！

爽太(そうた)

うるさい！

有紗(ありさ)

あ…。
あなたよく見たら、私の彼の友達じゃない！

爽太(そうた)

だったら何だ。

有紗(ありさ)

友達が死んだら彼が悲しむでしょ！
そんなの私が許さないわ！

爽太(そうた)

関係ないだろ。

有紗(ありさ)

関係あるわよ。

爽太(そうた)

君に僕の気持ちなんてわからない！
虐めにあったことのない君になんて！

有紗(ありさ)

理由は虐めってことね。
それなら反論の余地はあるわ。

有紗(ありさ)

あなたは虐められてるにしても、少なくとも一人は友達がいるんだから、死ななくてもいいじゃない。

爽太(そうた)

僕はクラス中から虐められてるんだ！
よそのクラスの大地１人だけいたって、何も変わらないんだよ！

有紗(ありさ)

スケールの小さい話ね。
クラスどころか学校中から虐められていても立派に立ち直った子を知っているから、あなたなんてとても小さく見えるわ。

爽太(そうた)

君みたいな人間には、僕のこともその子のこともわからないよ！

有紗(ありさ)

あの子とあなたを一緒にしないで頂戴。

有紗(ありさ)

こっちに戻ってくる気があれば、あの子の顔を見せてあげるわ。
子供の頃、家が貧乏だからって学校中から虐められていたのに、たった一人友達ができただけで毎日ヘラヘラ笑えるようになった、私の自慢の友達の顔をね！

爽太(そうた)

………

爽太(そうた)

あの日から、僕らは何となく４人で一緒にいるようになった。
君にとっては、僕は大地に付いてくるだけのおまけみたいなものだったのかもしれないけど。

有紗(ありさ)

………

爽太(そうた)

…僕は子供の頃の君達を知らないから、彼らに話を聞いた時は結構ショックを受けた。

爽太(そうた)

そんな復讐めいたことはやめろって言ってやるべきだったんだろうけど……君のいつもの自己中心的な、みんなを蔑ろにするような振る舞いは、確かに目に余る。

爽太(そうた)

……僕は君の本心を知っているから、……証明して欲しくて、二人に協力した。
ここは僕の家の会社が管理している倉庫なんだ。
最初から、誰も君を置き去りにするつもりはないよ。

有紗(ありさ)

………

爽太(そうた)

……君の泣き顔が見たかったなんて言ったら、まるで変態みたいだね。
……でも、本当のことだから。

有紗(ありさ)

…爽太………

それから私達は、もう今までのように４人で仲良く一緒にいることはできなくなってしまったけれど……それは仕方のないことなのだと思う。

子供だったら、また何事もなかったように一緒に過ごせるのかもしれないけれど、私達はもう、そんな純粋な歳ではない。

エイエンニ、ココニイロ……あの声が、美歩だったのか、大地だったのか、それとも、私自身の声だったのか……わからないまま、もうあの声は聞こえなくなった。

自分の愚かさで失ってしまった大切なものは、もう戻らないけれど………

…それでも、いま隣にいる、一番大切なものだけは。もう二度と傷付けない。

私にできることは、きっとここから。

有紗(ありさ)

ここから少しずつ、私も変わっていこう！

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摩訶子(まかこ)2nd

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