テラーノベル
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その日、空は不自然なくらい青くて―― 夏の終わりの空気が、少しだけ肌を焦がしていた。
放課後、呼び出されたのは、校舎裏の木陰のベンチ。 私の前には、凪と玲王。 ふたりとも、なんか…いつもより真剣な顔。
御影玲王
最初に口を開いたのは、玲王だった。
御影玲王
御影玲王
言葉が、心に突き刺さる。 目をそらした瞬間――
凪誠士郎
凪が、ゆっくり口を開いた。
凪誠士郎
凪誠士郎
心臓が跳ね上がった。 まさか…同時に、こんなふうに言われるなんて思ってなかった。 言葉が出ない。 手も、足も、体も、心も、全部固まっていく。
どっちも、好き。
頭の中で、そうつぶやいた瞬間、 涙がこみ上げて、怖くなって、混乱して、 ――気づいたら、走ってた。
「ごめん、無理!!」 そう叫んだかもしれない。
返事もできないまま、校門を飛び出して、 夕暮れの道を、走り続けた。 スカートが揺れる。 呼吸が苦しい。 でも止まりたくなかった。
どうして、こんなに苦しいの? どうして、こんなに好きなのに、選べないの? どっちかなんて、選べないよ。 そんなの、無理だよ――。
家の玄関をバンって閉めて、靴も脱ぎ捨てて、 床に座り込んだ。汗と涙でぐちゃぐちゃのまま。 スマホが震える。 画面を見ると、LINEの通知。
画面が滲む。 指が震える。 返信、できない。 胸がギュッて痛くて、息ができないくらい苦しいのに―― その言葉は、優しくて、真っ直ぐで。
どうすればいいの…? 私は…誰を選べばいいの…?
次の日の朝―― 教室のドアを開けた瞬間、 空気が違った。 教室の隅に立っていた凪と玲王が、 私に目を向けたその瞬間。
御影玲王
玲王が、軽く私の腕を引く。
凪誠士郎
凪の手が、もう片方の腕をそっと掴んで――
気づいたら、両腕を引かれていた。 そのまま渡り廊下を抜けて、 階段を駆け上がっていく。 どんどん胸が高鳴る。 イヤな予感もするのに、足は止まらなかった。
そして―― 屋上のドアが、バンッと開かれた。
空はどこまでも青くて、 風が制服のスカートを揺らす。 でもそんな爽やかさとは裏腹に、 ふたりの表情は、本気だった。
御影玲王
玲王が、背後の扉を静かに閉めた瞬間ーー
ドンッ…!
私は壁に追い込まれていた。 左右に凪と玲王。 どちらも、私の顔を見つめて離さない。
凪誠士郎
凪が、珍しく目を細めて言う。
凪誠士郎
御影玲王
御影玲王
心臓が、また跳ね上がる。 選ばなきゃ、いけないの? この関係を、終わらせなきゃいけないの?
怖かった。苦しかった。 でも、もう逃げたくないと思った。
だから、私は―― 唇を噛みしめて、ふたりの目をまっすぐ見て、言った。
〇〇
〇〇
凪誠士郎が、驚いたように目を見開いた。 玲王は一瞬だけ目を伏せてそれから――笑った。
御影玲王
玲王の声が震える。
御影玲王
凪誠士郎
凪がポツリと呟いた。
風が吹き抜ける。 屋上で、私の涙が頬を伝う。
〇〇
〇〇
〇〇
沈黙が流れる。 でもそれは、すごく優しい静けさだった。 ふたりとも、私を見つめたまま、何も言わない。
それでも、私は胸を張って言えた。
〇〇