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夢鬱🪐
49
もふくんから送られてきた写真を、俺は何度も見返していた
商店街の古い看板
川に映った夕日
そして、変な顔をして笑っている俺たち
どれも、特別な写真じゃない
でも、画面の中の俺たちは、確かにあの日を生きていた
暑いねって笑って、くだらないことで言い合って、いつもの道を歩いて
何も変わらないと思っていた一日
その一日が、今はどうしようもなく大切に思えた
スマホが震える
もふくんからだった
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mf
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そういえば、子どもの頃に何度か見かけたことがある
いつも同じ道を走っている、古い路線バス
その先に何があるのかなんて、考えたこともなかった
jp
mf
mf
画面を見つめながら、俺は少しだけ迷った
知らない場所へ行く
それは、もふくんがずっと話していたことだった
遠くへ行きたい
見たことのない景色を見たい
ここじゃないどこかで、新しいことを見つけたい
俺も、同じ気持ちだった
ただ、俺はもうすぐ、本当にこの町を離れる
だからこそ、今はまだ、この町にいたかった
もふくんの隣で
いつもの夏を、もう少しだけ
jp
jp
そう返信すると、すぐに返事が来た
mf
mf
俺はその言葉を見て、ゆっくりと笑った
約束
その響きが、最近は少しだけ怖い
翌日の午後
俺たちは、町の端にある小さなバス停で待ち合わせた
屋根は古く、ベンチの塗装もところどころ剥がれている
時刻表の横には、色あせた路線図が貼られていた
jp
mf
mf
もふくんはベンチに座って、時刻表を眺めていた
足元には、小さなリュック
jp
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jp
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もふくんは、楽しそうに笑った
その笑顔を見ていると、俺までわくわくしてくる
どこへ行くのかもわからない
何があるのかもわからない
だけど、隣にいるのがもふくんなら、それだけで十分な気がした
やがて、遠くからエンジンの音が聞こえてきた
古いバスが、ゆっくりとこちらへ近づいてくる
mf
もふくんが立ち上がる
mf
jp
俺たちは並んでバスに乗り込んだ
運転手さんに行き先を告げて、整理券を受け取る
空いている席を見つけて、二人で窓際に腰を下ろした
ガタン、と小さく揺れて、バスが動き出す
見慣れた町並みが、窓の向こうへ流れていった
いつもの商店街
いつもの交差点
何度も通った細い道
少しずつ、見慣れた景色が遠くなっていく
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もふくんは窓に顔を向けて、次々と見つけたものを教えてくれた
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会話をしながら、俺は窓の外を眺めた
町の景色は、知っているはずなのに、少しずつ知らないものに変わっていく
道路の先に続く田んぼ
遠くに見える小さな山
道沿いに並ぶ、見たことのない家
この町の向こう側にも、ちゃんと世界は続いている
当たり前のことなのに、今さら気づいたような気がした
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jp
mf
jp
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もふくんは、窓の外を見ながら笑った
mf
その言葉が、胸の奥にゆっくりと染み込んだ
知らない場所
これから俺が暮らす場所も、きっとそうなのだろう
見たことのない景色
知らない道
新しく出会う人たち
そこには、もふくんはいない
そう思った瞬間、窓に映った自分の顔が、少し寂しそうに見えた
俺は慌てて、外へ視線を戻した
終点は、思っていたより小さな町だった
バスを降りると、少しだけ潮の匂いがした
遠くには低い山が連なり、駅前には小さな商店がいくつか並んでいる
見慣れない看板
初めて見る道
知らない人たちの話し声
どれも新鮮で、どこか遠い世界に来たようだった
mf
もふくんが辺りを見回す
mf
mf
jp
もふくんに引っ張られるようにして、俺は歩き始めた
細い商店街を通り抜ける
小さなパン屋さんを見つけて、二人でパンをひとつずつ買った
少し歩くと、川に出た
知らない町の川は、いつもの川と似ているようで違っていた
橋の形も、川岸に生えている草も、流れてくる風の匂いも
mf
もふくんがカメラを取り出した
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mf
jp
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言われたとおりに立つと、もふくんは少し離れたところからカメラを構えた
カシャッ
mf
画面を確認したもふくんが、嬉しそうに笑う
jp
mf
近くの柵にカメラを置いて、タイマーを設定する
俺たちは慌てて並んだ
シャッターが切れる瞬間、もふくんが俺の肩に軽く寄りかかった
カシャッ
今度の写真には、二人ともちゃんと笑って写っていた
jp
mf
mf
もふくんは、何度も画面を見返していた
俺も、その写真を覗き込んだ
知らない町の、知らない橋
その真ん中で、俺たちは笑っている
いつか、この写真を見返したら、今日のことを思い出すのだろう
知らない場所に来たこと
二人でパンを食べたこと
もふくんが、写真を撮るたびに嬉しそうにしていたこと
そんな細かなことまで
全部、覚えていられたらいいのに
mf
jp
mf
jp
そう答えると、もふくんは少し照れくさそうに笑った
mf
俺は、その顔を見つめた
この笑顔を、忘れたくない
この声も
この夏の匂いも
今日、二人で歩いた道も
忘れたくないものが、またひとつ増えてしまった
帰りのバスを待つ間、俺たちは停留所のベンチに並んで座った
日差しは少しずつ弱くなっていたけれど、空気にはまだ夏の熱が残っている
jp
俺が言うと、もふくんは大きく頷いた
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mf
jp
mf
mf
もふくんは、停留所の先に続く道路を眺めた
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mf
jp
mf
jp
mf
もふくんは、こちらを向いた
mf
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられた
どうして、もふくんはいつも、こんなにまっすぐなんだろう
どうして俺は、その言葉に、すぐ返事をすることができないんだろう
jp
やっとのことで、それだけ言った
もふくんは満足そうに笑って、また道路の向こうへ視線を戻した
しばらく、二人とも黙っていた
風が吹く
停留所の古い看板が、小さく揺れた
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jp
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その声は、いつもより少しだけ静かだった
俺は、もふくんの横顔を見た
jp
mf
もふくんは、膝の上で指を組んだ
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jp
mf
もふくんは笑おうとして、少しだけ失敗した
mf
mf
jp
mf
俺は何も言えなかった
もふくんも、俺も、きっと同じことを考えている
今が終わってほしくない
できることなら、ずっとこのままでいたい
だけど、時間は止まってくれない
どんなに願っても、季節は変わっていく
それに
俺たちの夏には、もうすぐ終わりが来る
俺が、それを知っている
もふくんの知らないところで、別れの日が少しずつ近づいている
jp
mf
言わなきゃ
今なら、まだ言える
俺がこの町を離れること
夏が終わったら、今までみたいには会えなくなること
本当は、ずっと前から伝えたかったこと
唇を開いた
けれど、声は出なかった
目の前に、もふくんの笑顔があったから
俺の言葉を、何の疑いもなく待っている顔が
jp
結局、俺が口にしたのは、そんな言葉だった
もふくんは一瞬だけ俺を見つめ、それから小さく頷いた
mf
mf
その声を聞いて、俺は胸の奥で何かが沈んでいくのを感じた
また、言えなかった
帰りのバスは、行きよりも少し空いていた
もふくんは窓際の席で、今日撮った写真を確認している
時々、思い出したように笑う
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jp
mf
mf
jp
二人で小さく笑った
そのあと、もふくんはカメラをしまい、窓の外に目を向けた
夕方の光が、田んぼの向こうに広がっている
行きに通った道が、少しずつ戻ってくる
遠くの山
見慣れた看板
町の入り口
もうすぐ、いつもの景色に戻る
それを嬉しいと思う一方で、俺は少しだけ怖かった
帰れば、またいつもの毎日が始まる
もふくんと笑って、何でもない話をして、何も変わらないふりをする
でも、本当は何も変わらないわけじゃない
俺の中では、もうとっくに何かが変わってしまっている
窓に映ったもふくんの横顔を、そっと見た
もふくんは、眠ってしまったのかもしれない
目を閉じて、静かに座っていた
俺は声をかけなかった
今だけは、起こしたくなかった
ほんの少しでも長く、隣にいられたらいいと思った
家に帰ると、玄関の隅に見慣れない段ボール箱が置かれていた。
俺は立ち止まった
箱の側面には、太いペンで文字が書かれている
――衣類
その隣にも、同じような箱がいくつか並んでいた
まだ全部ではない
けれど、確かに始まっていた
俺がこの町を離れるための準備が
jp
誰に向けるでもなく呟いて、自分の部屋へ向かう
机の上には、今日撮った写真を確認したスマホが置いてあった
画面を開く
知らない町の橋の上で、俺たちは笑っていた
あんなに楽しかったのに
あんなに、ずっと続いてほしいと思ったのに
写真の中の俺は、何も知らない顔をしている
もふくんも、何も知らずに笑っている
俺はスマホを伏せた。
窓の外は、もう暗くなり始めていた
遠くで、蝉が鳴いている
明日も、きっと鳴くだろう
もふくんからも、きっとメッセージが届くだろう
また遊ぼうって
次はどこへ行こうって
何も変わらない毎日の続きを、当たり前みたいに話してくれるのだろう
だからこそ、怖かった
何も言わないまま、いつもの笑顔に甘えている自分が
いつか突然、その笑顔を悲しませてしまうことが
俺は今日の写真を、もう一度だけ開いた
知らない町で、二人で撮った一枚
いつか遠い思い出になってしまうとしても
この日のことを、俺は忘れないと思う
もふくんが楽しそうに笑っていたこと
帰りのバスで、窓の外を眺めていたこと
そして、俺が何度も言葉を飲み込んだこと
全部、覚えていたい
だけど、本当は
覚えているだけじゃ、足りないんだ
――さようならなんて、まだ言いたくない
そう思っているのは、俺だけなのかな
夏の夜は、静かに深まっていく
終わりが近づいていることを、俺だけが知っているみたいに 第五話 終
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
夢鬱
コメント
1件
たった一日のバス旅行なのに、知らない町の橋の上で撮った一枚の写真がこんなに重く響くんですね。「覚えているだけじゃ、足りないんだ」って、じゃっぴくんのあのつぶやきが切なくて…。もふくんが楽しそうに笑えば笑うほど、言い出せない秘密が胸を締めつける。何も変わらないふりを続けることの怖さ、よくわかります。そしてラスト、段ボール箱が並ぶ玄関の光景で現実が一気に迫ってきて、心臓がギュッとなりました。素敵な夏の思い出だからこそ、その終わりがこわい…。