で?
今日は何の依頼だよ
この女を
12月25日に、
殺して欲しいんだ
殺して欲しいんだ
スーツ姿の真面目そうな紳士は
そう言って俺に、女の写真を 手渡した。
クリスマスの日ねぇー。
まるでお前への
クリスマスプレゼントだな
クリスマスプレゼントだな
この女を殺すことが。
良心なサンタクロースから
の贈り物とでも言おうか。
の贈り物とでも言おうか。
良心なサンタクロース
だと?
だと?
殺し屋のお前が?
はっ、笑わせるな
んで?殺す時間は?
時間はいつでもいい
俺はその日、女を
このビルに連れ出す。
このビルに連れ出す。
男は紳士からビルの写真と資料を 受け取った。
このビルの10階
204号室に居るから
そこで女を殺してくれ
報酬は後で支払う。
とにかく、頼んだぞ
紳士は人混みに紛れて姿を消した。
何でクリスマスに
こだわるのかねー。
こだわるのかねー。
ま、どうせ去年の
クリスマスに
クリスマスに
その女に浮気された
とかでしょ
とかでしょ
おぉー、怖い怖い
勝手な想像だけどね
まぁ、ちゃんと仕事は
こなしますよ。
こなしますよ。
12/25 PM11:50
男は焦っていた。
(やっべー)
(彼女とデートしてたら
遅くなっちまった)
遅くなっちまった)
(もう少しで25日が
終わっちまう)
終わっちまう)
(でも絶対に間に合わ
せないと)
せないと)
(俺は約束を守る
男だからな)
男だからな)
ダッシュでビルに駆け込み、 エレベーターで10階へ上がっていく
言われていた部屋の中に、こっそりと 忍び寄った。
部屋の中は明かりがついておらず、 暗かった。
寝ているのだろうか、人の寝息が 聞こえる。
壁を伝い、寝息のする方へ近寄っ ていく。
ベッドの上に人が寝ているのが 分かった。
ここだ!
人がいる事を認識したや否や、 すぐさまそいつの首に手をかける。
しばらくうめき声を上げていたが、 それもすぐ聞こえなくなった。
…あれ
そして、重大なことに気づく。
暗かったから気付かなかった。
目が慣れてきて、殺したやつの顔を 認識し、しまった、と思う。
そいつは俺の依頼主だった。
あちゃー、やっちゃった
隣のベッドには、殺すはずだった 女が寝ていた。
…ま、いっか
女はあんま殺したく
なかったし。
なかったし。
報酬はもらえねーけど
男は持って来たリュックに、息をしなくなったそれを入れて
また静かにビルを出た。
この男どこに
隠そうかなー
隠そうかなー
…しっかしまぁ、
殺すやつを間違えるなんて
殺し屋として
許されない失敗だ
許されない失敗だ
でも俺焦って慌てて
たんだよなー。
たんだよなー。
その時男は、ある歌を思い出した。
…あわてんぼうの〜
サンタクロース〜
男は口ずさみながら
リュックを背負い、夜の街を 歩いていった。