柊 綾人
「ずっとこそこそ隠れて見てるの趣味悪いですよ」
柊 綾人
俺は後ろの方に隠れている"ある人"に向けてそう言葉を発した
柊 綾人
「もう今結衣はいませんから出てきてくださいよ」
柊 綾人
俺がそういうと同時にその人は姿を現した
天音 未央
「いや〜これでもちゃんと隠れてたつもりだったんだけどな〜」
天音 未央
「私を見つけられるなんてなかなかやるじゃん。綾人も探偵になってみたりはしないか?」
柊 綾人
「残念ながら探偵業には興味ないんでね」
天音 未央
「そっか。にしてもいつから気づいてたんだ?」
柊 綾人
「数時間前からですね。なんかずっと視線を感じたんで」
天音 未央
「ほーん。でもそれだけじゃないだろ?」
柊 綾人
「まぁそうですね」
柊 綾人
「そもそもとして天音さんが俺にこの遊園地のチケットを送ってきた時から違和感はありましたね」
柊 綾人
「俺たちはお互い依頼し合ってる関係ではあるけど、だからといってさすがに遊園地のチケットってのは裏があるとしか思えませんでしたよ」
天音 未央
「まぁさすがにそうだよな」
柊 綾人
「天音さんは俺にバレないと思ってこのチケット送ってきたんですか?」
天音 未央
「バレなかったらラッキーぐらいの気持ちだったな」
柊 綾人
「それじゃ最初からバレても問題はなかったってことなんですか?」
天音 未央
「綾人の場合はな」
柊 綾人
「僕の場合…?」
天音 未央
「あぁ。結衣にさえバレなきゃいいかなって思っててな」
柊 綾人
「結衣に…?」
天音 未央
「さすがに結衣にバレたらいろいろとまずいだろ?」
柊 綾人
「まぁ…そうですね」
天音 未央
「私名義で出せばお前は結衣に私の存在を知らせることもないだろうし私が結衣の調査もしやすくなるしな」
柊 綾人
「まぁそうですけど…それでも一言ぐらい言ってくれてもよかったんじゃないですか」
天音 未央
「結衣が私の存在を認知するのとしないので振る舞いが変わっちまうんじゃないかなって思ってな」
天音 未央
「綾人の演技力がどれだけあるかなんてわからないしな」
柊 綾人
「まぁ…そうですね…」
天音 未央
「それに私の前じゃキスできないだろ?」
柊 綾人
「なんでキスすることになってるんですかしばきますよ?」
天音 未央
「おぉ怖い怖い」
天音 未央
「あれてか付き合ってるんじゃないのか?」
柊 綾人
「結衣はレンタル彼女って言いましたよね?」
天音 未央
「いやでもお前ら見たら普通のカップルにしか見えないぞ?」
柊 綾人
「結衣はプロのレンタル彼女ですよ。彼女としての立ち回りみたいなのもわかってると思いますし、周りから見たら普通のカップルに見えるようにしてるんですよ」
天音 未央
「いやでも結衣はお前のこと…」
柊 綾人
「どうしたんですか?」
天音 未央
「いやいやなんでもない」
天音 未央
「まぁさすがプロって感じだな」
柊 綾人
「ていうか最初に聞くべきだったんですけどなんで俺たちを尾行してるんですか?」
天音 未央
「普段お前といる時の結衣がどういう人物なのかを確認したくてな」
柊 綾人
「なんでですか?」
天音 未央
「まぁそうだな…これも話した方がいいかな」
柊 綾人
「ん?なんです?」
天音 未央
「実はな、私は昔結衣に会ったことがあるんだ」
柊 綾人
「え!?それ本当ですか!?」
天音 未央
「あぁ。会ったのは数年前のあの事故の直後だ」
天音 未央
「あの事故で姉の円は重症だったが妹の結衣は軽症だったって前言ったよな?」
天音 未央
「それであの事故の後結衣は軽症治療もすぐ終わったから警察の事情聴取を受けたんだ」
天音 未央
「実はその事情聴取をした刑事さんが私との仲が良くてな」
天音 未央
「特別にその事情聴取に私は同席させてもらったんだ」
柊 綾人
「なるほど、そうだったんですか。それでその時に結衣と会ったってことですか」
天音 未央
「あぁそういうことだ」
柊 綾人
「それで結局のところなんで結衣がどういう人か確認しようと思ったんですか?」
天音 未央
「当時の結衣と今の結衣の人間像の違いを知っておいた方がいいと思ってな」
柊 綾人
「そういうことですか。それで違うところとかあったんですか?」
天音 未央
「あぁ。違うというよりもな…」
天音 未央
「…」
柊 綾人
「天音さん?」
天音 未央
「真逆なんだ」
柊 綾人
柊 綾人
「え?」
天音 未央
「当時と性格が真逆なんだ」
天音 未央
「今の結衣は明るくて人懐っこいイメージがあるが当時は違かったんだ」
天音 未央
「あの事情聴取の時の結衣はまぁ事故の後だからってのもあるんだが人と話すのを嫌がってるというか人との対話を拒絶しているような印象だったな」
柊 綾人
「それって…」
天音 未央
「あぁ、今と本当に正反対なんだ」
天音 未央
「今日結衣の行動を見てかなり驚いたよ」
柊 綾人
「でも…だとしても…なんでここまで結衣は変わってしまったんだ…」
天音 未央
「それはわからない…なにかしらのきっかけがあったのかどうか…どちらにしろそれを知るのは結衣だけだな」
柊 綾人
「そう…ですよね…」
天音 未央
「ていうかそろそろ結衣が戻ってきてもおかしくないな」
柊 綾人
「そうですね。僕たちが話してるの見たら結衣もなんか変に思うでしょうね」
柊 綾人
「天音さんはこの後どうするんですか?」
柊 綾人
「まさかまだ僕たちを尾行するとか言わないですよね?」
天音 未央
「いや、もうお前たちを尾行する理由もなくなったからな。まぁこの圏内のどっかのカフェぇ色々調べたりしてるよ」
柊 綾人
「そうですか。わかりました」
柊 綾人
そういって俺たちは別れ俺は結衣が帰ってくるのを待つのだった
如月 結衣
如月 結衣
「よし、そろそろ戻ろうかな…」
如月 結衣
公衆トイレから出て私は待たせているあやと君のところへ戻ろうとしたのだが…
如月 結衣
如月 結衣
「はぁ……」
如月 結衣
私は息を吐き、そして告げた
如月 結衣
「バレないとでも思った?普通にやってることストーカーだからね」
如月 結衣
如月 結衣
「社長」
如月 結衣
私がそういうと同時にその社長は姿を現し…
社長
「ストーカーだなんて心外だな、結衣」
社長
「俺はただお前がちゃんと職務を全うしているか確認してただけなのに」
如月 結衣
「またそうやってめちゃくちゃなこと言って」
如月 結衣
「わざわざ遊園地に来てまで確認するなんてうちの事務所はそんなに暇だったの?」
社長
「そんなわけないだろ。ただ結衣はうちの事務所の中でも優れた逸材だからな。これくらいの時間の犠牲くらい安いもんだ」
如月 結衣
「その割に一生分レンタルされたときは全然焦りもしてなかったけどね」
社長
「まぁあれはどうしようもなかったしな。それに結局収益にマイナス…それどころか理論値にまで達してるんだからな」
如月 結衣
「結局お金じゃん」
社長
「この世の中そうゆうもんだからな。それに結衣、お前だって変わらないだろ?」
社長
「一度スカウト断ったにも関わらずわざわざ…」
如月 結衣
「社長なんかと一緒にしないで!!」
社長
「そんな怒るなよ結衣。そんなんじゃ仕事に支障をきたすぞ」
如月 結衣
「勝手に言ってれば。前も言ったけど私はあなたのそのやり方は嫌いだから」
社長
「見ないうちにずいぶん反抗的になったな結衣」
社長
「そんなに楽しい楽しいデートを邪魔されたのが気に入らなかったのかな?」
如月 結衣
「っ……」
社長
「まぁ悪かった。少しからかいすぎたな」
社長
「ちゃんとお客さんのことは楽しませてあげられてるようだし、俺から言うことは特にないよ。引き続き頑張りたまえ」
如月 結衣
そう言いこの場を立ち去ろうとする社長の背に向けて私は言った
如月 結衣
「私この遊園地に行くこと事務所に報告してないけどなんで社長は知ってたの?」
社長
社長
「さぁな。俺の口から言うようなことでもない」
如月 結衣
そうして社長はこの場を後にした
如月 結衣
如月 結衣
「これは仕事じゃない…それに…」
如月 結衣
「あやと君はお客さんなんかじゃない…」
如月 結衣
私はそう言葉を漏らすのだった
如月 結衣
「ごめん、お待たせ〜!」
柊 綾人
「おう、全然待ってないぞ!」
如月 結衣
「おぉ。あやと君もやればできるじゃん!結衣ちゃん感動しちゃったよ」
柊 綾人
「いちいち煽りに聞こえるんだよなぁ」
如月 結衣
こうやってあやと君と話していて思う
如月 結衣
あやと君はやっぱり今までのお客さんとは違う
如月 結衣
数ヶ月関わったからなのかわからないが彼だけはお客さんとしては見れない
如月 結衣
さっきの社長との会話であやと君との関わりを振り返って思う
如月 結衣
あやと君との生活は私にはほとんど感じたことのない家族のような安心感がある
如月 結衣
なぜか彼のことをただのお客さんと言われるとモヤモヤした気持ちになる
如月 結衣
私はいつしか彼のことをお客さんとしてではなく私に関わってくれる一人の男性として見るようになっていた
柊 綾人
「おーい結衣?大丈夫かぼーっとして」
如月 結衣
「あ、うん!大丈夫!早く次行こ!」
如月 結衣
私はそう言いながら彼の手を引くのだった