テラーノベル
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──あの日から、何かがゆっくりと動き出していた。
あれから3ヶ月が経った。 春だった季節は、もうすっかり夏の手前。 放課後は3人で帰ったり、週末には一緒に遊びに行ったり、LINEグルチャではくだらないことで盛り上がったり。
「仲良し」って言葉がぴったりな関係。 …だけど、ただの“友達”でいられるほど、私は鈍くない。
玲王は前よりもずっと優しくなった。 さりげなく荷物を持ってくれたり、話す時にちょっとだけ距離が近かったり。 たまに名前を呼ぶトーンが、甘くて――ドキってする。
凪も、相変わらずマイペース。だけど… 急に目を見つめてきたり、眠たそうな声で「今日も可愛いじゃん」とか言ってきたり。 なにそれ、ズルい。 あんな顔でそんなこと言われたら、心臓のリズムがおかしくなる。
たぶん、2人とも“好意”を隠してない。 でも、それを確かめるのが怖かった。 私が選んだら、この関係は終わるかもしれない。 でも、選ばなかったら――いつか2人が他の子を選ぶかもしれない。
机の上、スマホが光った。
何気ないメッセージが、ちょっとだけ胸をチクっとさせる。 “好き”って、いつ言えばいいんだろう。 そして、私は――誰が好きなんだろう。
お風呂から上がって、ぼーっとスマホを眺める。 グルチャは今日も盛り上がってて、玲王の絵文字だらけのノリと、凪の適当すぎる返しが並んでる。
その文字たちを見るだけで、胸がドクンって鳴った。 “また明日会える”っていう安心と、 “また明日も迷う”っていう焦りが、同時に押し寄せてくる。
夜、ベッドに入っても眠れなかった。 目を閉じると、玲王の顔と凪の顔が交互に浮かぶ。 どっちの顔も、優しすぎる。
玲王が「お前、前髪分けた?似合ってんじゃん」って言ってくれたとき。ちょっとからかうような笑い方だったけど、嬉しくて頬が熱くなった。
凪が教室で、こっそりレモンティーをくれて「飲む?」って言ってきたとき。 あの眠たげな目が、自分だけを見てるみたいで、息が止まりそうだった。
ドキってする。 その度に、胸の奥がギュッと締めつけられる。
〇〇
そんな言葉が頭をよぎって、焦った。 だってそれって、
ずるいよね。
誰かを選ばなきゃいけないのに。 でも、選べない。 だって2人とも、私の心をくすぐるんだもん。
「好き」ってなに? ドキドキすること? ずっと考えちゃうこと? 優しくされて、嬉しいって思うこと?
じゃあ――私は、どっちが好きなの?
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