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LINE744

第1話 - あ

2023年06月11日

#恋愛

#スカッと

田中俊樹

タツヤ

ユウキ～、お前新婚だからって、昨日は散々会社で惚気てくれちゃってよぉ！

ユウキ

別に惚気てなんかいねぇよ。色々聞かれたから答えただけで

タツヤ

それが惚気だって言ってんだよ！嬉しそーに嫁自慢しやがって！

ユウキ

そっか。幸せが顔に出ちゃってたかな

タツヤ

でもよ、俺に勝ったと思うなよ

ユウキ

別に思ってないけど…

タツヤ

むしろ俺、お前の話聞いて「負け犬乙～」って爆笑だったんだけどｗｗ

ユウキ

どういうこと？なんで俺が負け犬？

タツヤ

お前の嫁さ、何歳なんだっけ？

ユウキ

35歳だけど…

タツヤ

げ～っ！35歳！！お前より5歳も年上のババアじゃんｗｗｗ

タツヤ

お前、そんなにババア趣味だったのかよｗｗｗ

ユウキ

は？お前には関係ないだろ

タツヤ

そんなババアを仕方なく相手にしなくちゃいけないほどお前、モテないのかよｗｗｗ

ユウキ

うるさいな、ほっといてくれ！！

ユウキ

俺は「仕方なくなんかじゃなくて、心から彼女がいいと思って選んだんだ！！」

タツヤ

はいはい。その選択を近いうちに後悔するからなーｗｗｗ

ユウキ

なんだと！？

タツヤ

だってそうじゃん。ババアは碌に子供も産めないし、

タツヤ

どんなに若作りしてもシワ、シミだらけの体ｗｗｗ

タツヤ

そーんなババアと結婚して嬉しそうとか、負け犬と言わずして何て言うんだよｗｗｗ

ユウキ

おいふざけんなよ！！俺のことは悪く言われても我慢する

ユウキ

だけど、妻のことを悪く言うのはやめろ！！

タツヤ

おーお、嫁を守るナイト気取りですか。こっわｗｗｗ

ユウキ

俺が誰と結婚しようが勝手だろ。ほっとけよ

タツヤ

いやいや、これがほっとけるかよｗｗ

タツヤ

いつもいつもお前ばかり上司に褒められて、女子社員にも好かれやがって

タツヤ

今回も新婚で惚気てチヤホヤされてるから、どんな女と結婚したのかと思ってたら

タツヤ

まさかのババアとかｗｗｗ

タツヤ

周りも絶対、言えないだけでババアを嫁にしたお前を哀れんでるよｗｗ

ユウキ

お前と一緒にすんなよ。年上の妻とか5歳差とか、別に珍しくもないだろ

ユウキ

大体結婚どころか、彼女もいないお前に言われたくないね

タツヤ

残念でしたー。俺には若い彼女がいまーすｗｗ

ユウキ

え、そうなのか。そいつは良かったな

タツヤ

そうだろーｗｗ彼女の年齢知りたいか？なぁ、知りたいか？ｗｗ

ユウキ

いや別に、興味ないし

タツヤ

なんと、ぴっちぴちの19歳！！女子大生なんだぜ！！

ユウキ

ふーん、よかったな

タツヤ

そうだろ、羨ましいだろ、悔しいだろ～ｗｗ

ユウキ

別に。お前が幸せそうで良かったなってだけだ

ユウキ

こっちはこっちで幸せだからな

タツヤ

またまた～、負け惜しみ乙～ｗｗ

ユウキ

なんで俺が負けてることになるんだ？

タツヤ

まだわからねえのかよｗｗ

タツヤ

あのな、若い女と付き合うほど、男としてのステータスは上がるの！

タツヤ

よって、ババアと結婚したお前より、

タツヤ

女子大生と付き合ってる俺の方が男として上なんだよ！！

ユウキ

そんな話初めて聞いたけど…

ユウキ

というか、それって彼女のことをステータスを上げるための道具扱いしてるみたいに聞こえるが

タツヤ

はぁ～出た出た。女に好かれる騎士気取りの言動！

ユウキ

そんなつもりじゃないが…

ユウキ

とにかく、お前が幸せならよかったじゃないか。俺達に突っかかってこなくてもいいだろ

ユウキ

お互い幸せになろうな。じゃ

タツヤ

待て待て！散々お前の惚気を聞かせた分、俺の話も聞いてもらうぞ！

ユウキ

聞きたくないんだが…

タツヤ

彼女の名前はマユちゃんっていって、コスメ販売のバイトをしているところで、

タツヤ

運命の出会いを果たしたんだ！！

タツヤ

俺の話を楽しそうに聞いてくれる、素直で優しい彼女なんだ！！

タツヤ

ババアだとどうせ、そういう可愛げもないだろｗｗ

タツヤ

お前の自慢してた愛妻弁当も、地味な茶色だったしなｗｗｗ流石ババアのセンスｗｗｗ

ユウキ

うるさいな。俺はああいうのが好きなんだよ

タツヤ

かわいそーにｗｗマユちゃんの作ってくれた弁当なんか、

タツヤ

カラフルで女子力高くてマジ美味かったんだぜ！！

ユウキ

もう、そろそろいいか？

タツヤ

待て待て。俺の彼女の写真を見たくないか？

ユウキ

いや、別に見たくないけど

タツヤ

遠慮すんなって、ほら！！

タツヤ

～女子大生の画像を送る～

タツヤ

どーだ！！ぴっちぴちで可愛いだろう！！お前のとこのババアとは大違いだろ！！

ユウキ

これって…

タツヤ

どうした？お前の嫁と俺の彼女のあまりの差に愕然としたか？ｗｗ

タツヤ

羨ましくてもやらねぇよｗｗｗお前はババアと乳繰り合ってろｗｗｗ

ユウキ

そうじゃないんだ…ちょっと、妻と話してくる

タツヤ

おっｗｗｗあんなに惚気てたのに、ついにババアに別れを切り出すのか？ｗｗ

～一時間後～

タツヤ

随分反応がねぇなぁｗｗ別れ話が拗れてんのか？おーいｗｗｗ

ユウキ

タツヤ…もうその、マユちゃんに付きまとうのはやめろ

タツヤ

何？自分がババアと結婚したからって、女子大生と付き合えた俺に嫉妬してんのか？ｗｗ

ユウキ

その子、俺の妻の妹なんだよ

タツヤ

へっ？

ユウキ

マユって名前を聞いた時には、偶然かと思った

ユウキ

でも、写真見せられてすぐに気付いたよ

ユウキ

妻は兄弟が多くて、マユちゃんは16歳離れた末の妹なんだ

タツヤ

マジかよ。世界は狭いねぇ。俺の彼女とお前んとこのババアが姉妹とか…

タツヤ

で？なんでそれで俺とマユちゃんが別れなきゃならねぇんだよ

ユウキ

マユちゃんな、ずっと前から勘違いしたストーカーに悩まされてたんだよ

ユウキ

バイト先で付きまとわれてボディタッチされたり、

ユウキ

やめた後も自宅や大学を特定されて、複数のラブレターを送られたり…

ユウキ

そのことを妻に相談してきたんだ

タツヤ

そうだったのか…俺のマユちゃんを怯えさせるとか、許せねぇ！！

タツヤ

俺がストーカーから守ってやらなきゃ！！

ユウキ

ここまで言ってもまだわからないのか…

タツヤ

はぁ？なんのことだよ！！

ユウキ

ストーカーはお前だよ

タツヤ

へっ？

タツヤ

俺が…ストーカー…？

ユウキ

あぁ。お前の写真をマユちゃんに見せたら、間違いないってさ

タツヤ

嘘だろ…だって、俺達は本当に愛し合ってたはずなんだ！！

タツヤ

マユちゃん、俺の話を笑って楽しそうに聞いてくれたんだ！！

タツヤ

目が合うと、嬉しそうに微笑みかけてくれたんだ！！

ユウキ

あのな、それは接客業だから愛想よく対応しただけだぞ

タツヤ

うるさいうるさい！お前に何がわかる！！

ユウキ

現にマユちゃんからそう聞いたんだが

タツヤ

それに、マユちゃんは俺の告白に対して嬉しいと言ってくれたんだ！

タツヤ

確かにマユちゃんは恥ずかしがり屋で奥手だけど、

タツヤ

ずっと話しかけても、付いてきても、拒絶されたことなんてない！

ユウキ

「気持ちは嬉しいですが」と言って断ったらしいぞ

ユウキ

はっきり拒絶したら逆ギレされそうで怖いから、できなかったと言っていた

タツヤ

だったら、俺に作ってくれたあの弁当は何なんだよ！！

ユウキ

そのお弁当は、マユちゃんが自分で食べる用に作ったんだ

ユウキ

大学に通う途中、落とし物をして自転車から離れた隙に、なくなってたらしい

ユウキ

今、犯人がお前だとわかったわけだ。タツヤお前何やってんだよ…

タツヤ

嘘だ！だってあの弁当、明らかに男を、俺を意識して作ったものだったぞ！！

ユウキ

何だその思い込み…

タツヤ

とにかく、マユちゃんがお前の義理の妹なら話が早い！

タツヤ

マユちゃんと話をさせてくれ！！

ユウキ

は？させるわけねぇだろ

ユウキ

マユちゃんは今、妻に付き添われて警察に被害届を出しに行ってるぞ

タツヤ

は？

タツヤ

被害届…？

ユウキ

そう。ストーカーと窃盗でな

ユウキ

今まで警察に相談しても、実害や証拠がないからと動いてもらえなかったが、

ユウキ

弁当の件で実害が出たからな

タツヤ

そんな…

ユウキ

それと、妻の職業は弁護士なんだ

ユウキ

妹を守るために動くと言っていたぞ

タツヤ

弁護士！？嘘だろ…

ユウキ

覚悟しておくんだな、勘違い野郎

タツヤ

わかったぞ！そのババアがマユちゃんを言いくるめたんだな！！

ユウキ

は？

タツヤ

若くて可愛くてモテる妹に嫉妬したババアがマユちゃんを洗脳して、

タツヤ

愛し合う俺達を引き離そうとしてるんだ！！

ユウキ

はぁ…お前、ほんっとうに頭腐ってんな…

ユウキ

妻は俺と結婚してるんだぞ。なんでわざわざ女子大生の妹に嫉妬しなきゃならねぇんだ

タツヤ

だって、ババアは若い女に嫉妬するものだろ？

タツヤ

それとも、お前もマユちゃんを狙ってるのかよ！

ユウキ

は？バカかよ。俺には妻がいるんだぞ

タツヤ

どうせババアじゃ満足できないんだろ？

タツヤ

だから義兄の立場からマユちゃんを狙って、姉妹丼を企ててるんだろ！

ユウキ

つくづく頭沸いてんな。呆れすぎて物も言えないわ…

ユウキ

それと、マユちゃん彼氏いるぞ

タツヤ

へ？

ユウキ

まだ付き合って日は浅いが、同い年のイケメン大学生だそうだ

タツヤ

嘘だ！！嘘だ嘘だ嘘だ！清楚で奥ゆかしいマユちゃんに、彼氏…！？

タツヤ

そんなの俺は認めない！！

ユウキ

認めないって、お前どの立場からそれ言ってんだよ

タツヤ

そんな若造なんかより、俺みたいな人生経験のある大人の男の方がずっと上なんだよ！

ユウキ

お前さ、現実を見ろよ。散々妻のことをババアとか罵ってたけど、

ユウキ

お前はマユちゃんにとっては「おっさん」「ジジイ」であって、

ユウキ

恋愛対象なんかじゃないんだよ

タツヤ

俺がおっさんでジジイだと！？ふざけんな！！

ユウキ

でも現に、俺と妻よりもずっと年齢差あるじゃねぇか

タツヤ

女の加齢と男の加齢は違う！！女は劣化するけど、男は渋くなるんだ！！

ユウキ

マユちゃんからお前に伝言がある

タツヤ

えっ俺に伝言！？

ユウキ

「私も15年も経てば、あなたがバカにしたお姉ちゃんと同じ『ババア』になります」

ユウキ

「私とお姉ちゃんは似てるから、見た目も今のお姉ちゃんとそっくりになります」

ユウキ

「だから、お姉ちゃんをババアと言ってバカにするあなたが恋愛対象になることは」

ユウキ

「永久にありません」だってよ

タツヤ

あぁもうなんだよ頭来た！！そんなビッチ俺から捨ててやるよ！！

タツヤ

俺を誑かしておきながら、被害者ぶりやがって！！

タツヤ

そんな生意気な口利かない、もっと若い子を捕まえてやる！！

ユウキ

もっと若い子って…下手すりゃ警察案件じゃねぇか？

タツヤ

…おい、なんか本当に警察が訪ねてきたんだけど…

ユウキ

ああ。被害届出したからなー。早速警察来たか

タツヤ

そんな嘘だろ！俺逮捕されるのか！？助けてくれよ！！

タツヤ

おい！！！

〜後日談〜

ユウキ

その後、タツヤは逮捕されました

ユウキ

なんでも、他にもマユちゃんの私物の窃盗、盗撮など、余罪がポロポロ出てきたのだとか

ユウキ

タツヤは裁判にかけられ、初犯なので罰金刑で済みましたが、会社はクビになりました

ユウキ

それでも「俺とマユちゃんは愛し合ってた！」と譲らないタツヤに

ユウキ

タツヤの両親は頭を悩ませ、ついに息子を精神病院に入れたのだそうです

ユウキ

マユちゃんは妻の助言や支えもあって、事情聴取でも気丈に受け答えし、

ユウキ

裁判でもしっかりと証言しました。ですが、やはり心理的負担は大きく、

ユウキ

妻もマユちゃんの心の傷が早く癒えるように見守っているのだそうです

ユウキ

優しい彼氏が支えてくれているのが救いでしょう

ユウキ

最後に、俺と妻は変わらず仲良く暮らしています

ユウキ

この幸せをバカにする権利は、誰にもありません

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田中俊樹

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