季節は秋に差しかかろうとしていた。
吹き抜ける風が少し冷たくなってきた放課後。
すちは、教室の窓から外を眺め、ため息を1つついた。
最近みこちゃんの元気が なくなってきているように感じる。
翠_
歌う時は一生懸命だけど、笑う回数が減った。
以前は間違えても、
黄_
と笑いながらそう言っていたのに、
今は小さく謝るだけ……
そして、それは練習の時だけじゃない。
朝、家を出る時の声が聞こえないくらい小さい。
帰ってきた時も顔が少し曇っている。
食事の時も箸が進んでいない。
翠_
俺が問いかけても
黄_
とだけ言って話題を逸らす。
本当に心配だな……
そして、ある日
学校の音楽の授業中、俺の教室とは違う
みこちゃんのクラスで問題は起きた。
音楽の先生がプリントを1枚ずつ配っていた
それは次の発表課題に関するものだった。
そして、自分の手元に届いたプリントの裏に
殴り書きのような落書きがされてあった
黄_
ピラッ……
黄_
「お前みたいな奴が歌い手とか出来るわけないw」
「どうせ兄の力借りないとやっていけないでしょw」
「夢見すぎだろww現実見ろやww」
文字は大きく、マジックペンで書かれていた。
明らかに意図的に書かれた悪意の塊。
それを見た瞬間全身が凍り付いた。
辛くて仕方がなかった
けど周囲にはクラスメイトの目。
黄_
平然を装って
そのプリントを黙ってファイルにしまった。
授業が終わった後、誰よりも早く教室を出て、
誰も来ない空き教室に駆け込んだ。
手が震えていた。
黄_
黄_
辛くて苦しくて声がかすれて出なかった。
家に帰って玄関のドアを閉めた瞬間
靴も脱がずにその場に崩れ落ちた。
バタンッ……
黄_
黄_
涙が溢れて止まらなかった。
泣きたくないのに、堪えようとしたのに、
心の奥から何かが噴き出すように込み上げてきて。
顔を伏せて泣きじゃくった。
どれくらいそうしてたか、
ガチャっと、後ろのドアが開く音がした。
翠_
翠_
俺は玄関を開けたすぐ先に
泣き崩れている弟を見て固まった。
翠_
翠_
翠_
みこちゃんは顔を伏せたまま何も答えない。
肩が小刻みに震えている。
翠_
そっとしゃがみ、みこちゃんの肩に手をついた。
翠_
と聞いてもみこちゃんは無反応。
翠_
翠_
翠_
その言葉にみこちゃんは ほんの少しだけ顔を上げてくれた。
目は真っ赤で、でもどこか心細さに
安心も滲んでいた。
翠_
俺は、それ以上は話しかけない事にした。
何があったか分からないけど、
明らかにみこちゃんの中で何かが壊れ始めていた
そして。そこから数日後。
みこちゃんは、 学校へ行かなくなってしまった。
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ぐは すきです