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夜道は静かでさっきまでの灯りが、背中にまだ残っている気がした。コーヒーを買うほどでもなく、海に向かうほどでもない。
今日はやめたんです
瑠伽
叶多
瑠伽
瑠伽
叶多
コツコツコツ..
瑠伽は、歩きながら空を見上げる。 雲の切れ間から星が1つ。
瑠伽
瑠伽
音の代わりに、食事。 夜の代わりに、会話。
瑠伽
ポケットの中で、指が自然と形をなぞる。 弓を持つときの癖。
瑠伽
瑠伽が次に弾くときは、誰かに向ける音になる気がしていた。
それが怖くて.. でも少しだけ、楽しみだった。
カランカラン
翌日、 いつも通りの服装。 いつも通りの歩き方。
瑠伽
叶多
昨日より少しだけ近い。 カウンターのいつもの席に通してその背中を見送りながら、叶多は思う。
叶多
叶多
瑠伽
長居します、とも。 急いでません、とも言わない。
叶多
叶多
☕コト
リーフを施したカップを置く時、瑠伽の視線がカップじゃなく叶多に向いている。
瑠伽
瑠伽
叶多
瑠伽
ドクン.. ドクン..
瑠伽
叶多
叶多
叶多
気付けばピークも過ぎて、ゆったりとした時間が流れる。
瑠伽
瑠伽
叶多
昼下がりのカフェは、思ったより静かだった。 カウンター席が、ぽつぽつと埋まっている。
☕ズズ..
瑠伽
瑠伽はいつもの席で背中を預け、カプチーノをゆっくり飲んでいる。
客
瑠伽から少し離れたカウンターに常連の女性客。 スマホを握りしめて、落ち着かない様子だ。
叶多
客
叶多は、カップを拭く手を止めない。
叶多
叶多
客
叶多
客
叶多
客
客
瑠伽は顔を上げない。 カップに口をつけたまま。
叶多
叶多
別の客の注文が入り、叶多はその帰り瑠伽の方へ向かう。
叶多
瑠伽
☕コト..
瑠伽はカップを置いた。
瑠伽
叶多
瑠伽
叶多
叶多
カランカラン..
客
叶多
ドアを出た瞬間、外の空気が少し冷たかった。
瑠伽
瑠伽
あの女性の落ち着かない指。 スマホを何度も確かめる仕草。 そして、名前の出ない"誰か"の話。
瑠伽
夜の海で弾く理由は、誰にも見せない為じゃない。 誰かに向けるためでもない。
瑠伽
音を出すことで余計な肩書きや視線が削ぎ落ちる。
瑠伽
瑠伽
瑠伽は唇を噛む。聞かれていたことより“広がり始めている”ことが少し怖かった。
瑠伽
それが、席を立った理由だった。
瑠伽
瑠伽
静かな場所は守りたいものができると、一気に脆くなる。
今夜もやめる
弾けば、また誰かが"見つけた"と言う。
瑠伽
翌日のカフェは、朝の光がやわらかく入っていた。
カランカラン
瑠伽はいつもの席に座る。
叶多
瑠伽
叶多
☕コト
叶多
叶多
瑠伽
叶多
叶多
瑠伽
叶多は、無意識にカウンターを拭く。 いつもより念入りに。
瑠伽
叶多
叶多
瑠伽
叶多
叶多は、まだ知らない。 その距離が、自分を守るためじゃなく、叶多を巻き込まない為だということを..
カランカラン
叶多
昼を少し過ぎたころ、カフェは波が引いたように静かになった。
客
声をかけてきたのは以前の女性とは別の客だった。 観光客らしい、軽い口調。
客
叶多の手が、ほんの一瞬止まる。
叶多
叶多
客
観光客のスマホ画面には、短い動画。映像は、ほとんど暗い。黒に近い夜。 でも音だけは、はっきりしている。 低く、澄んだ旋律。
🎻*¨*•.¸¸♪
客
叶多
客
叶多
客
叶多
客
客
叶多
客
客
客
その一言がカップを落としそうになるくらい、重かった。
叶多
客
叶多
客
観光客は、あっさり引き下がった。
叶多
誰かの記憶と、誰かの推測が、 音を中心に集まり始めていた。
帰宅して靴を脱ぐ。 電気をつけて、バッグを置いて。
叶多
叶多はキッチンで水を飲む。 コップ1杯。
叶多
叶多
ソファに腰を下ろす。 スマホを手に取って、また置く。
叶多
調べない方が良い
叶多
もし、何か出てきたら。 もし、素性がはっきりしたら。
叶多
“知らない”ことで、保てているものがある。
叶多
叶多
叶多
気付いたらパソコンを立ち上げていた。
叶多
検索窓。 カーソルが、点滅する。 何度か閉じようとして、やめて。 指を置いた。
カチャカチャ..
叶多
るか ヴァイオリン
カチャッ(Enter)
画面に並ぶ検索結果。 有名な奏者.. 動画サイト.. レッスンの案内.. そして、
叶多
《若手ヴァイオリニスト “Lucas” 突然謎の失踪》
叶多は瞬きを忘れる。"失踪" 言葉だけが、浮いて見えた。
叶多
《コンサート直前に姿を消し、現在も所在不明》 《関係者の証言は食い違っており》
“いなくなった”という事実よりも、 “誰かが探している”という意味だった。
叶多
叶多は、椅子にもたれる。 いっその事知らないままでいたかった。
叶多
叶多
叶多
昼下がり。ピークを越えたカフェはカップの触れ合う音がよく響いていた。 客は瑠伽だけで、ここには2人だけ。
叶多
瑠伽
瑠伽は、視線をカップに落とす。
瑠伽
瑠伽
叶多
瑠伽
叶多
瑠伽
それは紛れもなく音を愛している人の言葉。
叶多
叶多
瑠伽
☕コト..
瑠伽
瑠伽
叶多
叶多
叶多
瑠伽
瑠伽
その言葉は、 理由であり、告白だった。
叶多
初めてだった。 “音”を噂でも、偶然でもなく本人の言葉として聞いたのは。
別の日
カフェの閉店時間が、少し早まった日だった。
叶多
叶多は雨が窓に当たる音と雫をコップを拭きながら見る。
瑠伽
ふと窓の手前にフォーカスが移る。
叶多
叶多
瑠伽
叶多
叶多
叶多
瑠伽
叶多
叶多
叶多
叶多
瑠伽
叶多
どうして消えたのか。 いつまで、ここにいてくれるのか。
叶多
この人が、 ここで"普通の人"でいられる時間を守りたい。
叶多
瑠伽
叶多
瑠伽
叶多
瑠伽
瑠伽
瑠伽
瑠伽
コツ..コツ..コツ..
その夜、瑠伽は1人で歩いていた。
瑠伽
ポケットに手を入れて、歩幅を周囲に合わせる。
コツ..コツ..コツ..
信号で止まる。 知らない人と並んだ。
瑠伽
“探されていない” 名前も呼ばれない。 写真も、フラッシュも、サインを求められることもない。
瑠伽
瑠伽
瑠伽
コツコツ..
瑠伽は足を止める。
瑠伽
ショーウィンドウに映る自分。
瑠伽
翌日の午後、 カフェは、少しだけ騒がしかった。
叶多
叶多は注文を取っていた。 その時..
カランカラン
スーツの男性が2人入ってきた。日常が静かに崩れる音と共に空気が一瞬で代わった。
叶多
スーツ姿の場違いではない男が2人。 明らかに“客じゃない”立ち方をしていた。
瑠伽
瑠伽は、いつもの席にいる。 スマホを見て無防備な横顔だった。
男
男
叶多
男
その瞬間、瑠伽の指が画面の上で止まった。
叶多
男
叶多
男
叶多
男
男は、店内を見渡す。 テーブル席、そしてカウンター席を1つ1つ。 もう少しで瑠伽の、横顔。 一瞬、視線が交差しそうになる。
叶多
叶多は、身体をずらして、 その視線を遮った。
叶多
瑠伽
男
カランカラン
瑠伽
瑠伽
叶多
叶多
瑠伽
叶多
瑠伽はいつものようにお代をぴったり置き席を立つ。
瑠伽
瑠伽は振り返らずカフェを出た。
叶多
叶多は、残されたカップを見る。
叶多
コツ コツ コツ..
瑠伽は、身1つで歩いていた。 行き先を決めないまま。
瑠伽
自分で言った言葉が、遅れて胸を締めた。
カツ カツ カツ
足音が後ろから近付く。 速すぎではなく、迷いもない。
叶多
2人の足音はそこで止まった。
瑠伽
叶多
瑠伽
叶多
瑠伽
瑠伽
瑠伽
叶多
瑠伽
叶多
瑠伽
叶多
叶多
叶多
瑠伽
叶多
叶多
瑠伽
瑠伽
叶多
叶多
瑠伽
叶多
叶多
瑠伽
瑠伽
叶多
瑠伽
叶多
叶多
叶多
瑠伽
瑠伽
瑠伽
瑠伽
叶多
瑠伽
瑠伽
瑠伽
叶多
叶多
叶多
瑠伽
叶多