雪の夜に、世界が息を潜める。
誰かが祈っている。誰かが赦されたいと願っている。
けれど僕はまだ、言葉を選べずにいた。
愛を伝えるのが、いちばん難しい時代に生まれたから。
雪が、振っていた。
世界の終焉を思わせるほどの静寂の中、ロシアは焚き火の前に座り、ホットココアを飲んでいた。
ココアの湯気の向こうには、中国が湯気の立つカップを両手で包みこんで、ゆっくり飲んでいた。
中国
中国
ロシア
ロシアの声は、氷の底から響くように重かった。
ロシア
"あの日"の話をした途端、中国は眉を潜めた。
あの日_______
1991年、彼の兄であったソビエトは、他界した。
...ソビエト連邦解体の後を、追うように。
中国
中国
ロシア
ロシアが静かに呟いた。
ロシア
ロシア
風が吹き、灰が空を舞う。
静かな吹雪の中で、沈黙が広がる。
そうして一瞬、焚き火が大きく揺れ、中国の頬が淡く光った。
ロシア
中国
中国
ロシア
中国は答えなかった。答えたくもなかった。
ロシアも、もう既にその答えを知っていた。
再び訪れた沈黙。
お互いに語らず、語れず、静かに飲み物を啜っていた。
もうしばらくして、その沈黙が破られた。
_______遠くのノイズだ。
_____This is London. Good signal.
This is New York! Can you hear me?
無線から響く声に、中国は眉を潜めた。
中国
ロシア
ロシア
無線の向こうには、軽い口調で笑い合うアメリカとイギリスの声があった。
ロシアが焚き火のそばに歩み寄り、指で受信機のつまみを回すと、雑音が溶けていく。
…そこで、中国にとって馴染みのある声が響いた。
__________こちら、ソウル。聞こえてたら返事して
同時に顔を見上げる。
中国が一瞬目を見開いた。
中国
無線の向こうの韓国の声が震えていた。
それは、冬の寒さのせいか、通信のせいか、はたまた_____
別のなにかか、中国にはわからなかった。
韓国
韓国
韓国
韓国
どこか遠くを見つめているような口調で、呟くように吐き出した。
中国
韓国
韓国の声が強くなった。
韓国
一瞬、誰も言葉を発せなくなった。
ロシアの瞳に、焚き火の炎がチラリと映った。
ロシア
韓国
ロシア
その瞬間、遠くで風の音が変わった。
冬はまだ続きそうだが、吹雪はいつのまにか小降りになっていた。
空気が柔らかくなり、雪と、まだ見えぬ暖かな陽の匂いが混ざったような感覚だった。
イギリス
アメリカ
ざわめく音が、無線越しに聞こえた。
世界の果ての小さな炎と大都市を繋ぐ数本の無線が、雪を溶かす"陽"を作っているようだった。
中国
ロシア
彼の言葉に、誰も反論しなかった。
________ゆらゆらと炎が揺れ、だんだん小さくなっていく。
それは、かつての愛情が燃え尽きるものではなく、過去の争いへの憎悪の炎が、だんだんと小さくなっていくような、そんな感覚だった。
過去の争いへの憎悪の炎が、だんだんと小さくなっていくような、そんな感覚だった。
コメント
2件
資本と共産で分かれたってことか、…?再び皆が仲良くなってほしいですね。この世界でも、現実でも