読切 / ふたりのはじまり.
いつからだろう。
彼女から“赤葦京治”という存在が が消えていったのは────
毎日、愛する君と思い出を紡いでいける。
あのときまでは、そう思っていた ________ 。
医者
赤葦 京治
恋川 凛 - コイカワ リン -
倒れたのをきっかけに、入院して数ヶ月。
原因不明の体調不良が続いていたが まさか余命宣告されるほどだったとは…
自分でも驚いた。
恋川 凛 - コイカワ リン -
恋川 凛 - コイカワ リン -
ベッドの横に座っているのは もうすぐ付き合って3年になる彼女の凛さん。
俺は彼女のことを愛している。
でも、彼女ともあと半年しか一緒にいられないのか…
恋川 凛 - コイカワ リン -
凛さんが泣き出してしまった。
重い体を起こして、凛さんを抱きしめる。
凛さんの笑顔が好きなのに 自分のせいで凛さんが泣いている。
赤葦 京治
赤葦 京治
彼女の前だからつい強がってしまった。
だけど、自分でもまだこの現実が受け止められなくて 泣いてしまいそうだった。
しかし、驚くべきことが起こった。
余命宣告をされたその日を境に 体調がだんだんよくなってきたのだ。
数日経つと、体がだいぶ軽くなった。
医者も回復の早さに目を丸くしていくらいだ。
でも、自分の体が回復していくごとに 彼女の様子がおかしくなっていった ________ 。
恋川 凛 - コイカワ リン -
京治くん…?
いつもなら“京くん”と、あだ名で呼んでくるのに。
赤葦 京治
赤葦 京治
恋川 凛 - コイカワ リン -
恋川 凛 - コイカワ リン -
赤葦 京治
恋川 凛 - コイカワ リン -
恋川 凛 - コイカワ リン -
この日の凛さんは何かおかしかった。
呼び方もいつもと違うし 変なことも言っていた気がする。
でも、気のせいにしていた。
数日が経ち、寒さが増していく。
病室の窓から見える木々が冬の寂しさを纏っていくのとは対照的に、俺は元気になっていった。
1週間後には退院できると医者に聞いた。
これは、異例の事態らしい。
自分でも、不思議だと思った。
そして、凛さんは俺のことを“赤葦くん”と 呼ぶようになった。
まるで、付き合う前に戻ったかのようだ。
赤葦 京治
恋川 凛 - コイカワ リン -
赤葦 京治
赤葦 京治
恋川 凛 - コイカワ リン -
凛さんは記念日を忘れていた。
しかも、俺たちが付き合ったのは12月5日。
俺の誕生日の日なのだ。
ということは…凛さんは俺の誕生日も忘れていた ということになる。
やはり、彼女の身に何かが起こっているのは確かだ。
一体、何が起きているのか?
考えているうちに俺は気づいてしまった。
俺の体調がよくなり始めたときと、凛さんの様子がおかしくなったタイミングが綺麗に重なっているのだ。
今度、凛さんが面会に来てくれたときに 聞いてみよう。
そう、心に決めた。
しかし、俺の退院日になっても 凛さんが病院に姿を見せることはなかった。
赤葦 京治
赤葦 京治
そんなことを考えながら歩いていたときだった。
目の前に見覚えのある女性の後ろ姿を見つけた。
俺は、久しぶりに彼女に会えてうれしくて つい大きな声で名前を呼んでしまった。
赤葦 京治
その女性は少し驚いた表情で、振り向いた。
やっぱり凛さんだった。
赤葦 京治
赤葦 京治
久しぶりに会った凛さんには、いつもの笑顔がなく どちらかというと怯えているように見えた。
凛さんは恐る恐る口を開いた。
恋川 凛 - コイカワ リン -
恋川 凛 - コイカワ リン -
赤葦 京治
はじめは冗談かと思った。
赤葦 京治
赤葦 京治
そう、今日が記念日の12月5日。
俺の誕生日でもある。
恋川 凛 - コイカワ リン -
恋川 凛 - コイカワ リン -
凛さんはそう言い残して、走り去っていった。
嘘だ……
凛さんが俺のことを知らないなんて…
絶対に人違いではない。
あれは、間違いなく凛さんだった。
俺は混乱した。
それと同時に凛さんに忘れられていることが ショックでたまらなかった。
看護師
ここの病院の看護師から声をかけられた。
赤葦 京治
看護師
赤葦 京治
看護師
看護師
看護師
そう言って、看護師は俺に封筒を差し出した。
封筒には“京くんへ”と書かれている。
赤葦 京治
俺は急いで、封筒を開け、手紙を読んだ。
京くんへ
この手紙を読んでいるということは もう退院したのかな?
退院おめでとう!
でも、京くんの体調が回復している頃には 私はそばにいないかもしれない。
今から、そのことについて話すね。
京くんが余命宣告された日 不思議な出来事がありました。
私は京くんとあと半年しか一緒にいられないのかと 家に帰ってたくさん泣きました。
泣き疲れて、寝ちゃったんだろうね。
目が覚めると、そこは知らない場所でした。
ふわふわしていて、変な感じだったな…
目の前に見覚えのない女の人が立ってて 私に「あなたの願いを叶えます」と言うの。
絶対にそんなことできないと思ったけど そのときは京くんのことで頭がいっぱいだったから
私は「京くんの病気を治してください」 「そして彼を元気にしてほしい」とお願いしたの。
すると、女の人はまた不思議なことを言い出した。
その女の人は 「願いを叶える代わりにあなたは“大切なもの”を失う」 そう言ってたっけな…
そのときは、京くんの命より大切なものなんてない。
私のお気に入りのバッグやコスメがなくなっても また買えばいいと思ってた。
でも、目が覚めたときに私の中から“何か”が 抜き取られたような感じがした。
最初は、あんまり気にしてなかったんだけど その感覚を毎朝覚えるの。
そして、私は気づいてしまった。
“私の大切なもの”
それは────
“京くんと過ごしてきた日々”だってことに。
だから、京くんの体調が回復すればするほど 私の中から京くんとの記憶が消えていく。
そして、京くんが退院する頃には、もう…
ごめん、そのときのことを考えると 涙が止まらなくなってきちゃった。
私の記憶があるうちに、手紙を書かなきゃと思って 今に至ります。
もうすぐ12月5日。
私たちが付き合って3年になるね。
京くんの誕生日でもあるから、祝えるうちに 祝っとくね笑
誕生日おめでとう♡
これから先も、君のそばで記念日や誕生日を 一緒に過ごしたかったな…
でも、もう手遅れだ。
京くん、別れよう。
京くんには、私のことを忘れて 幸せになってほしい。
でも、時々は私のこと思い出してほしいかも…
最後までわがままでごめんなさい。
私は、ずっと京くんのことを応援してるよ!
長くなっちゃったけど、最後に言わせて。
京くん、大好きです。
ずっとあなたを愛しています。
凛より
手紙を読み終わる頃には、大粒の涙が溢れていた。
手の震えも止まらない。
凛さんがいないのに、幸せになれるはずない。
なんで、もっと早く気づけなかったんだろう。
凛さんは、一人でずっと抱え込んでたんだ。
それなのに、俺は自分ことばかりで…
このまま、凛さんとお別れなんて嫌だ。
次の瞬間、体が勝手に動いた。
俺は、走って病院を飛び出した ________ 。
外は、雪が降っていた。
今日が初雪なんだとか。
俺は、走りながら凛さんを探した。
さっきまで、病院にいたから そこまで遠くには行っていないはず…!
公園を通りかかったとき ベンチに座っている凛さんを見つけた。
息を吹きかけて、手を温めている。
赤葦 京治
恋川 凛 - コイカワ リン -
赤葦 京治
赤葦 京治
凛さんは、とても寒そうだった。
俺は、自分がしていたマフラーを 彼女の首にそっと巻いた。
恋川 凛 - コイカワ リン -
恋川 凛 - コイカワ リン -
恋川 凛 - コイカワ リン -
凛さんが微笑んだ。
彼女の笑顔が見れて、ほっとした。
赤葦 京治
恋川 凛 - コイカワ リン -
恋川 凛 - コイカワ リン -
凛さんは顔を赤らめた。
恋川 凛 - コイカワ リン -
赤葦 京治
恋川 凛 - コイカワ リン -
赤葦 京治
赤葦 京治
恋川 凛 - コイカワ リン -
恋川 凛 - コイカワ リン -
赤葦 京治
恋川 凛 - コイカワ リン -
恋川 凛 - コイカワ リン -
恋川 凛 - コイカワ リン -
どうやら、凛さんの中から俺が完全に消えたわけでは ないらしい。
俺は、凛さんの手をぎゅっと握って言った。
赤葦 京治
赤葦 京治
恋川 凛 - コイカワ リン -
恋川 凛 - コイカワ リン -
赤葦 京治
赤葦 京治
赤葦 京治
恋川 凛 - コイカワ リン -
凛さんは俺の手を握り返して、笑顔で言った。
俺は、彼女をめいいっぱい抱きしめた。
凛さんが俺との記憶をなくしてしまったとしても また一から始めればいい。
12月5日────
この日は ふたりの新しいはじまりの日。
⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯ 𝑬𝑵𝑫 ⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·
──── あとがき ────
今回は、ろう様のコンテストに参加させていただきました。
感動部門 / ハイキュー での参加です。
ありがとうございます😭💖
この機会にもっと仲良くなれればうれしいです!!
読切書くの慣れてなくて、とても長くなってしまいました…
設定が曖昧なところとかも、たくさんあったかと思います💦
作品の内容について質問等あれば、コメント欄まで↓
最後まで読んでくれた方、本当に感謝です🫶🏻
がんばったので、🩷たくさん押してほしい、!!
💬で感想もたくさん聞かせてください!
入賞できることを願っています🙏🏻💫
うる.【 2025.6.7 】
コメント
19件
いや死ぬ😇 ちょー最高なんですけど!🫵🫵 うるさん貴方さては前世は神様か天使ですか??😽🫶 展開が予想外すぎてほんとビックリです😱 とても貴重なお時間ありがとうございます🙇♀️
ぐはっ⚡️😇 最高すぎてもう〇んでもいいです🤦🏻♀️💗 大切なものの為に自分の大切なものを 差し出せる凛ちゃんカッコいい…😍 私もそんな人になりたい‼️ まとりあえずうる様の作品はどれも 神作って事が改めて分かりました😎
雰囲気、タイトル回収、ストーリーの流れ、全てが完璧すぎる🫶🏻︎💕︎︎ 私の好みどストライク🩷 私こんなにいい作品書けない😭 ブックマークもポチッとな!