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今週のお題詰め合わせ

4 - 心も着飾る魔法の仮面

♥

327

2019年10月13日

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移動型遊園地のメインアトラクション

何とも愉快なサーカスショー!

アナタはご覧になりました?

え!ご覧になっていない?

それはそれは、勿体ない

ならば是非ともお立ち寄りを

必ずアナタを笑わせてみせましょう

さぁ、ショーの始まりです!

お次はピエロによる大道芸です!

ーチャチャラララチャラララー

愉快な音楽に鳴り止まない拍手

僕を待つ大勢のお客さん

さぁ、幕は上がった

今日も笑顔を届ける為に

ピエロ

ぃよーーほーー!

特殊な靴でピョンピョンと跳ねながら、僕は舞台の真ん中へ

さぁ1つ目の笑顔を見せておくれ

ピエロ

ぉろろろ!?

ービタンッー

僕は躓き顔面から転ぶ

どっと沸き上がる会場

鼻を擦りながら起き上がり、お客さんの様子を伺う

あぁ、良かった

皆ちゃんと笑ってる

僕は両手を広げてお客さんに挨拶をする

すると上から柔らかく小さなボールがいくつか僕目がけて落ちてくる

僕は避けようとするけれど、そのほとんどに当たってしまう

2つ目の笑顔を貰い、僕は急いでボールを拾い集める

ピエロ

ぃよっ!

1つのボールを高く上げ、すぐさま2つ目を放り投げる

ピエロ

ほっほっほっほっ

ジャグリングを披露すると、お客さんは拍手をくれる

なんて心地良い音だろう

拍手と笑顔を貰えるだけで、僕は何でも出来る気がする

さぁピエロ!

小さい玉だけでは見栄えが無い!

特別に大きいものを用意した!

しっかりと受け取ってくれ!

進行役が声を張る

ーダッダダンダダダダダンー

太鼓の音が鳴り響く

僕はジャグリングを続けたまま、キョロキョロと周りを見渡した

僕が‪舞台の真ん中、前の方へ立った時、後ろからカチリと音がした

客席の一部から後ろ!後ろ!と声がする

僕はわざと聞こえないフリをして、お客さんの不安を煽る

大丈夫、大丈夫だから安心して

ータンッタンッタンッー

ボールの跳ねる音がする

だけど僕は避けたりしない

3つ目の笑顔はどうだろう?

ードシンッー

ピエロ

ぉっほ!

背中にボールがぶつかった

僕の体は前に飛ばされ、勢い良く舞台の下へと転げ落ちる

大した高さも無い

僕は立ち上がり、また周りをキョロキョロと見渡す

3つ目の笑顔も上々だ

ピエロ

んっお!んっお!

僕は客席を歩き回り、散らばった小さいボールを拾い集める

あれ、1つ足りないや

ピエロ

ほー?

額に手を当て、大きな動作でボールを探す

すると小さな女の子が僕の前に現れた

女の子

はい

女の子

探し物はこれでしょう?

ピエロ

んー!

ピエロ

あーりーがーと!

女の子の小さな手には、僕の小さなボールがあった

僕はしゃがんで目線を合わせ、首を傾げてお礼を言う

お客さんからは温かい拍手が贈られる

ボールを受け取った僕は、再び舞台へと上がった

僕を吹き飛ばす程の大きなボール

僕は躊躇うことなく、そのボールの上に乗ってみせる

ピエロ

ほっほぉほっ

さて、お次は玉乗りとジャグリングの合わせ技

成功するか皆ドキドキしているかな?

大丈夫

失敗したって、皆を笑顔にしてみせる

ーダララララララララー

ドラムロールが鳴り出す

僕はタイミングを合わせ、1つ目のボールを上に放る

ピエロ

ほほーっ!

会場がまた盛り上がる

芸は見事に大成功

足をトコトコと動かして、ボールを動かし移動する

落ちないように、でも大胆に

ここで4つ目の笑顔だよ

ボールから降りる時、僕は後ろに尻もちをつく

そうしてショーは続いていき、僕は今日も沢山の笑顔を貰った

舞台が終われば、僕の役目もお終い

仮面を取って反省会

ピエロ

今日の僕は何点だった?

そうだなぁ

でもお客さんは皆笑っていたね

ピエロ

うん!

ピエロ

あぁ、でも...

どうかしたのかい?

ピエロ

ボールを拾ってくれたあの子

ピエロ

あの女の子は笑ってくれなかったんだ

僕の大道芸で笑わなかったのかい?

ピエロ

そうなんだ...

それはとても困ったなぁ

僕にはこれしか笑わせてあげる方法が無いのに

ピエロ

うん

ピエロ

どうしたら良かったんだろう?

もっと派手に失敗した方が良かったのかもしれない

ピエロ

僕のおどけ方が悪かったのかも

よし

じゃあ今度あの子が来たら絶対に笑わせてあげよう

ピエロ

そうだね!

ピエロ

次は笑ってくれると良いな

おい

また1人で喋ってるのか?

ピエロ

あ、えっと...

気味が悪いから辞めとくれ

お前は芸すらマトモに出来ない

そりゃあそうさ!

中身もマトモでは無いからな!

ピエロ

ぁ、あはは...

こんな時まで笑ってるんじゃ、仮面付けても付けてなくても同じだな

ピエロ

...その通り、ですね

僕は笑顔に、笑顔の仮面を取り付けた

ピエロ

同じ顔ですね

本当にそっくりだ

あまり変な行動はしないでおくれよ

俺たちは気味の悪いサーカス団じゃないんだ

ピエロ

あ、はい

ピエロ

気を付けますね...

ピエロは笑って、笑わすのが仕事だ

だから僕はいつだって笑顔

笑顔でいられない僕には存在する価値すらも無いのだから

ーカサッカサッカサッー

朝の誰もいない公園

ここは静かでとても落ち着く

公園のベンチに腰掛けて、落ちる葉っぱをぼんやり眺める

女の子

あ、ピエロさん?

ピエロ

え?

ピエロ

あ、何で...

そこには昨日の女の子が立っていた

僕は今仮面を付けていないのに、何故かピエロと呼ばれた

女の子

分かるよ

女の子

ピエロさん、昨日と同じお顔してる

ピエロ

あぁ...

そうか、僕は仮面を付けていなくてもピエロだった

女の子はちょこんと僕の隣に座った

女の子

ピエロさん

ピエロ

なんだい?

女の子

何がそんなに悲しいの?

ピエロ

...え?

女の子は不思議そうに僕の顔を覗き込む

この子には、僕が悲しそうに見えるのだろうか?

僕はいつでも笑顔だとゆうのに

ピエロ

悲しそうに見えるかい?

女の子

うん

女の子

とっても悲しそうよ、ピエロさん

女の子は僕の手を取ってギュッと握ってくれた

その手はやはり小さい

小さいのに、とても温かかった

女の子

ピエロさん、ピエロさん

女の子

一緒に遊んでくれない?

ピエロ

一緒に?

女の子

えぇ

女の子

まずはブランコに行きましょう!

そう言って、女の子は僕の手を引っ張る

女の子

ピエロさんが押してね!

ピエロ

うん、分かったよ

それから僕と女の子はどれくらいの時間遊んだだろうか

人気の無かった公園には、チラホラと人影が見えていた

僕と女の子は、始め座っていたベンチに戻った

女の子

あー!

女の子

楽しかった!

ピエロ

僕も、凄く楽しかったよ!

女の子

ふふ

女の子

ピエロさんがやっと笑ったわ!

ピエロ

え?

ピエロ

あれ、僕、ずっと笑っていたよ?

僕は嘘を付いていないはずなのに、女の子の言葉が妙に突き刺さった

ドキリと聞きたくない音で心臓が鳴る

女の子

いいえ

女の子

ピエロさんは始め、笑っていなかったの

ピエロ

でも、僕はピエロだ

ピエロ

笑っているのが仕事だよ?

ピエロ

笑えていなかったら怒られてしまう

女の子

何を言っているの?

女の子

ピエロさんは人を笑顔にするのがお仕事でしょう?

ピエロ

そうだよ、だから...

女の子

そこにはピエロさんは入っていないの?

ピエロ

ぼ、く...

女の子は少し怒った顔をしている

笑顔にする人の中に、僕も入っている?

女の子の言葉がストンと心に落ちた

女の子

ピエロさんが笑顔じゃないのに、私は笑えないわ

女の子

ピエロさん、知ってる?

女の子

人を笑顔にするのはね

女の子

心からの笑顔なのよ?

ピエロ

心からの...笑顔...

女の子

だから、ピエロさんも笑っていて?

ピエロ

うん、ちゃんと笑うよ

僕はニッコリと笑顔を見せる

なのに女の子は笑わない

女の子

そうじゃないわ

女の子

ピエロさんは笑い方を知らないのね

ピエロ

何でだい?

ピエロ

僕、ちゃんと笑えているだろう?

女の子

全然ダメよ!

女の子

心から笑うには、心にあるもの全部出さなきゃ!

女の子

ピエロさんの心には、楽しい事、幸せな事が入るスペースがある?

ピエロ

もちろん、沢山あるさ

女の子

嘘はダメよ?

女の子

私には分かるの

女の子

だってピエロさん、お兄ちゃんと似ているの

ピエロ

君のお兄さんかい?

女の子は頷き、膝を抱えて俯く

あぁ、こんな時こそ僕の出番なのに

何故、僕はこの子を笑顔にする自信が無いのだろう?

女の子

お兄ちゃんね、もう死んでしまっていないの

ピエロ

...そうかい

女の子

悲しい事や、苦しい事をずっとずっと我慢してたんだって

女の子

そうしたら、耐えられなくなって死んでしまったんだって...

女の子

ピエロさんはね、そんなお兄ちゃんと同じお顔をしているの

女の子

だから、私には分かるのよ

女の子は顔を上げ、強い眼差しで僕を見詰める

僕はいたたまれなくなって、女の子から目を逸らした

女の子

ピエロさん、私の真似をして?

ピエロ

君の真似を?

女の子

そう

女の子

私ね、ピエロさんのステージが大好きなのよ?

女の子

だから、見れなくなるかもしれないと思うと...

女の子

私、悲しくてッ

ピエロ

あぁ、そんな...

女の子

お願いよ...

女の子

どうか、消えてしまわないでっ?

僕を優しく抱き締める女の子の目から、大きな涙の粒が1つ、また1つと零れ落ちていた

僕の心臓はギュッと掴まれた様に痛み出す

ピエロ

そんな、泣かないでおくれ

ピエロ

僕は消えたりしない、ずっと笑っているから...

女の子

うぅっ、よしよし...

ピエロ

な、何を...

女の子

アナタはよく頑張っているわっ

女の子

でも頑張りすぎよ?

女の子

少しくらい、休んでしまってもバチは当たらないわ

女の子

だから、一緒にっ休憩を...っ

ピエロ

まさか君は...

ピエロ

僕の、為に、泣いているのかい?

女の子

アナタもっ泣いたって良いんだよっ?

ピエロ

僕は...ッ

声を上げ、わんわんと泣く女の子

その小さな体を僕は抱き締め返した

僕の為に泣いてくれる人など、今まで1人として居なかった

僕に泣いて良いと言う人も、1人として居なかった

僕の頬に、光が一筋の道を作った

その道が乾いてしまう前に、何度も光は流れ落ちる

1度零したら止められないと、僕は知っていたのに

だからいつも

我慢をしていたのに...

ピエロ

うぅ

ピエロ

ぅわぁあぁんっ!

女の子

ふっ、ふふ

女の子

笑顔の、ピエロさんも素敵だけれど...っ

女の子

泣いているピエロさんも、とっても素敵よっ?

僕は泣いた

みっともなく声を上げ

全身の水が無くなる程に

また、女の子も泣いていた

僕と同じように

いや、僕が同じように泣いていたんだ

さぁ!

今宵も始まりますよ!

愉快なピエロの曲芸にございます!

ピエロ!カモン!

ーチャッチャラララチャチャラララー

軽快な音楽が今日も僕を呼んでいる

僕は笑ってステージへと飛び出していく

まずは1つ目の笑顔を貰うよ!

ピエロ

さぁさぁ皆さん!

ピエロ

今宵のピエロは一味も二味も違います!

ピエロ

愉快な奇跡の曲芸を

ピエロ

会場の皆様にお届け致しましょう!

両手を広げて挨拶をする

会場は大きな拍手と、期待の眼差しと

小さな女の子の笑顔がありました

〜fin〜

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