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あった

昨日はなかったはずの場所に、また扉が現れた。

彰人

(センパイに連絡…!)

スマホを取り出そうとすると、扉が消えかかっているのに気づいた

彰人

わっ、ちょ、待てっ!

カランカラン

彰人

おっと、っと

  

…いらっしゃいませ

彰人

あっ、こんちわー

彰人

(咄嗟に入っちまったけど…スマホ繋がるかな)

彰人

(げ、圏外だし…)

  

…何かお探しですか?

彰人

あっ、いや、そんなんじゃなくてー…

彰人

(あっ、昨日の事とか聞くべきか?)

彰人

すみません、昨日も来たんですけど扉が無くて…定休日かなんかだったんですか?

  

  

…昨日は、普通に営業していました

  

…ただ、このお店では人間はお一人様のみしか入店できません。

  

…他のお客様が近くにおりましたら、扉は見えません。

彰人

(…なるほど、センパイといたから見えなかったのか。)

彰人

(それにしても「人間は」って…それ以外も来んのかよ)

  

彰人

(それにしてもこの店員、心が読めねぇ…)

彰人

(いや、読めないんじゃなくて…空っぽなのか?)

  

…この店は、骨董屋です。

彰人

え?は、はぁ…

  

…貴方の欲しい物も、きっと見つかりますよ。

彰人

え?俺の欲しい物?

  

彰人

えっと…あ、あんた名前は?

  

…名前…?

  

…分かりません。

彰人

え?分からない?

  

…はい。

  

…貴方には、名前があるんですか?

彰人

東雲彰人だ。

  

…東雲、彰人さん。

彰人

ん?

  

…呼んでみただけです。失礼しました。

  

ふわぁ、あれ、お客さまかい?

  

…店主

彰人

あっ、ちわーす

  

こんにちは。君は今日も元気そうだね。

彰人

元気っす

  

君が心を読めると言うのは非常に興味深いんだよ。ねぇねぇ、私の心って読めるかい?

彰人

それ前もやりましたよね?まぁいいですけど

彰人

…「もう少し寝てたかったなぁ」

  

おっ、当たり〜♪

  

  

おや、そんな睨まないでおくれよ。

  

…睨んでません。

  

あ、ねぇねぇ、この子の心も読める?

彰人

え?いや、この人は…

  

彰人

(何考えてんのか分かんねーし何も聞こえねー)

彰人

…何も聞こえないっすね

  

へぇ、そうか。やっぱり駄目か…

彰人

  

ねぇ、奥で棚の整理してきてくれる?

  

…分かりました。

彰人

あの、やっぱりって?

  

あの子はねぇ、心が空っぽなんだよ。

彰人

そんな事できるんですか?

  

故意にじゃなくて、まぁ呪いみたいなものさ。

  

(それが解けたら、この店から出られるのにねぇ…)

彰人

え?

  

なんでもないよ。

彰人

(何でもない訳ねーだろ…ガッツリ聞こえてんぞ)

彰人

(この店から出るために俺があの人の心を読めって?)

彰人

(意味分かんねーし、どうすりゃいいのか分かんねーよ)

  

…終わりました

  

あれ、思ってたより早かったね。ありがとう。

彰人

ジー

  

…あの、どうかされましたか?

彰人

俺、東雲彰人って言うんだ。

  

…はい、先程もお聞きしました。

彰人

あんた、好きな食べ物は?

  

フッw

  

…好きな、食べ物?

彰人

そう!なんかないのか?

  

…よく分かりません。

彰人

なら、今度持って来てやる。

  

…え?

  

…えっと、店内への持ち込みは、、

  

いーよ。君だけ特例でね。

彰人

あざす

  

…特例、?

彰人

んじゃ、また明日来るから

  

…はい。ご利用、ありがとうございました。

彰人

よっ、と

彰人

んー、持ってくるったって何持っていきゃいーんだ…?

彰人

まぁ、まずは俺の好きなもんからでいっか。

彰人

あっ、センパイに連絡!

調子はどうだ?咲希

咲希

あっ、お兄ちゃん!

また本を読んでいたのか。本もいいが、読みすぎると疲れてしまうぞ。

咲希

うん!ちゃんと休憩してるから大丈夫!

そうか。なら、次は新しい本を持ってこよう。

咲希

本当?!じゃあじゃあ、私恋愛小説がいい!

れ、恋愛小説?!咲希ももうそんな歳か…

咲希

お兄ちゃんてば、私がいつまで童話読んでると思ってるの?もう16なんだよ?

そうだな。咲希ももうお姉さんなんだよな。

咲希

えへへ。病院の中でも私が子供の中で一番お姉さんなんだ〜!

咲希

小さい子に絵本読んだり文字を教えたりもしてるんだよ!

そうなのか!咲希は偉いなぁ!

咲希

えへへ〜

咲希

あっ、お兄ちゃんお洋服珍しいね。そういう服持ってたっけ?

ん?ああ、これか。

昨日、友人に選んでもらったんだ。

咲希

へぇ〜!✨いいね、似合ってる!

そうか?ありがとう。

咲希

退院したら、私も可愛いお洋服いっぱい買いに行きたい!

ああ。いっぱい買いに行こう。

咲希

お兄ちゃん、今日はいつもよりご機嫌だね。

え、そうか?

咲希

うん!そのお友達のお陰かな?

…そうだな。昨日は久しぶりに遊んだ気がする。

咲希

もー!お兄ちゃんてば、忙しいのは分かるけどちゃんと遊ばなきゃ駄目だよ?

ははっ、そうだな。

ヴー

む、すまない。メールだ。

咲希

はーい

(彰人からか。えっと…)

あの店に行ったのか?!

咲希

えっ、あの店?

あっ、なんでもない。昨日行った服屋の話だ。

咲希

そうなんだ!

…すまない、そろそろ帰るな。

咲希

うん!

次は本と、可愛い服も持って来てやるからな。

咲希

本当?!楽しみにしてるね!

ああ!また来るな!

…本当だ、あった、、

(1人でしか入れんのか。だから昨日はなかったのか。)

カランカラン

  

いらっしゃいませ

こんにちは

  

おや、来てくれたのかい。

  

あれ、いつもと雰囲気が違う服を着ているね。

あ、はい。実は昨日友人と買い物に。

  

いいねぇ。よく似合っているよ。

あ、ありがとうございます//

  

(それに、この前よりも血色が良い。うん、良い事だね。)

  

今日はどんな話を聞かせてくれるんだい?

そうですね…

この小さい封筒は…?

  

ああ、それは商品ではないんだ。けど、捨てるにも忍びなくてね。

貰い物ですか?

  

そんなところさ。それが気になるのなら、それの話を聞かせてくれるかい?

はい。

配達員

宅配便です!

高齢女性

いらっしゃい、いつもありがとうねぇ

配達員

これ、重たいので運びますね。

高齢女性

ありがとうねぇ、助かるよ。

配達員

いえ!仕事なんで!

高齢女性

外は寒かったでしょう。お茶淹れるから飲んでいってねぇ

配達員

え、わざわざありがとうございます!

いつも利用してくれる高齢女性がいた。

配達に行く度に、お茶を淹れてくれたり、チョコレートをくれたり、「いつもありがとう」と声をかけてくれたり。

高齢女性

そういえばこの前ねぇ、

他愛もない、楽しい話もしてくれる。

いつしか俺も、この人に配達するのが楽しみになっていた。

配達員

こんにちはー!宅配便です!

いつも通り配達に来た

すると、この日は予想外の言葉を掛けられた。

高齢女性

今までありがとう。もう会えないかもしれないから、今日渡しとくね。

配達員

…え?

渡されたのは、お金が入った封筒だった。

配達員

こ、こんなのいただけません!

高齢女性

いいのよ。これで最後かもしれないからねぇ

配達員

どういう事ですか?

高齢女性

実は私ねぇ、介護施設に行くことになったんだよ。

高齢女性

このお金はいつも配達に来てくれてありがとうっていうほんの感謝の気持ちだよ。受け取っておくれ。

配達員

でも…

高齢女性

…私は一人暮らしで身寄りもない。けど、貴方が来てくれてお話してくれて、とても楽しかったんだよ。

高齢女性

まぁ、孫みたいなもんかねぇ…

高齢女性

もう会えないかもしれないけど、元気でやるんだよ。

年金生活で大変だろうに、俺こそお礼がしたいのに

お客様として接して来たけど、この日だけは

配達員

ありがとう、おばあちゃん

高齢女性

うん。元気でねぇ

そう言ってその場を後にした。

結局このお金は一生使えませんでした。

  

ふぅん…良くわからないねぇ。

  

こんなもの、使わなければただの紙切れじゃないか。

俺にとっては、そうじゃなかったんです。

あれはしんどい仕事の中でも、唯一のやりがいでもありましたから。

  

へぇ〜

  

今回も引っ叩いた方がいいかな?

いや、その必要はありません

  

おや、おかえりなさい

貴方の引っ叩くは痛いんですよ…

  

ふふ、けど自分で戻れたんだね。少しは制御できてるってことかな?

  

(それに、今日の物語はいつもよりも…)

この物語って何年分くらいですか?

  

そうだねぇ。今回のは情景もあったし…まぁ、3年分かな。

これでやっと4年分か

  

まぁかかるよねぇ

  

けど、今日の君は面白かったよ。またおいで。

あ、あの!

  

うん?

名前…、俺司って言うんですけど

  

ああ、司くんね。覚えておくよ。

あの、貴方は…?

  

…さぁ?

え?

  

さ、そろそろ店仕舞いだ。帰った方が良いよ。

あ…

…ありがとうございました

  

またのご利用お待ちしてます♪

っと

(名前…いきなり聞いたのが駄目だっただろうか)

(いや、あれはそもそも「名前」がわからないような感じだったが…)

不思議な骨董屋だ。

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コメント

11

ユーザー

冬弥さん…彰人くんとキャッキャする日がくるのかな…

ユーザー

凄い急に、「あの店主も骨董屋の商品なのかもしれない」とか思ってしまった そんなことはない

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