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葉月

…あれ?

ハッとした

今、何してたんだっけ

少し眠ってた?

でも寝起きのような感覚はない

なんというか、例えると

ぼんやり考え事をしてて現実世界から離れてたら

突然誰かに呼ばれて

自分の意識が

つまりは自分の存在が

現実世界に戻ってきたような

そんな感じがする

あれ?何してたんだろ本当に

葉月ちゃん…

葉月

っ!?

そ、そんな驚かないでよ

葉月

れ、怜…ちゃん

なんで怜が?

私、怜と話でもしてたんだっけ

葉月

…えっと

葉月ちゃん、お腹空いてない?

葉月

へ?

よかったら、チョコあるから食べる?

葉月ちゃん、チョコ好きでしょ?

たしかに私はチョコが好き

…好き?

うん、好きだと思う

…本当に好きなんだっけ

私、自分の好きな食べ物も分からなくなった?

…食べないの?

ていうか

お腹空いたとか空いてないとか

何も感じないような…

なんか変だな

葉月

うん、大丈夫…

…そっか…

そんな残念そうにしなくても…

葉月

ねえ

葉月

私、今何してたんだっけ

葉月

というか、私たち何で一緒にいるの?

えっ…

彩芽

あっ葉月ー!

俊太

葉月!

葉月

葉月

…彩芽と、俊太?

彩芽

もーどこ行ってたの!

どこに?

あれ?そういえば

ここってどこだろ…

俊太

彩芽と探したんだぞ!

探した?

私は2人といたの?

どこではぐれたの?

葉月

ご、ごめん…

葉月

なんか色々分からなくて…

俊太

大丈夫か?

彩芽

体調悪い?

葉月

いや…

体調が良いか悪いかも感じない

彩芽

なんか変だよ?

彩芽

親友の私と、あんたの彼氏の俊太を頼りなさい!

葉月

ありがとう…笑

そうか

彩芽は私の親友で、俊太は私の彼氏か

2人の名前はわかったけど

なぜか関係はパッと出てこなかったんだよね

彩芽

てか、私たちが声かける前

彩芽

葉月1人で喋ってなかった?

葉月

え?

1人で?

いや、私は

葉月

怜と

葉月

喋ってたよ

俊太

俊太

俊太

誰だそれ

葉月

えっ

葉月

怜は怜だよ

彩芽

だから誰?笑

誰…

怜は、誰…

葉月

怜は

葉月

私たちが無視してた子だよ

彩芽

私たちが?

葉月

うん

俊太

え、俺も?

葉月

そうだよ

俊太

…誰だよ?

葉月

な、なんで

葉月

忘れたの?

葉月

怜のこと

そう言う私の中でも

怜の存在は曖昧だ

怜のことを無視してたのが

どうしてかも分からない

葉月

たしか、私たち同じサークルじゃん?

彩芽

たしかって何だよ笑

彩芽

3人みんな天文部でしょ!

そうだ、天文部だった

葉月

怜も天文部にいるよ?

葉月

活動の時に3人で無視してたじゃん

俊太

…ちょっと分からない

彩芽

なんか葉月さっきから変だよ?

彩芽

離れてるうちに頭でも打った?

そうなのだろうか

だって、さっきハッとする前のこと

"自分の存在が戻ってくる"前のこと

ほとんど覚えてないんだから

葉月ちゃん!!

葉月

!?

葉月

れ、怜…ちゃん?

…よかった…

葉月

ん?

な、何でもない

今日ね、流星群が見れるんだって

今日

今日?

って何日?

今日って、いつ…?

天文部の皆で見ようって話してたよね

葉月

そう、だっけ…

話してたんだって!!

葉月

ちょ、落ち着いて…

…ご、ごめん

大丈夫か?この子

急に声荒らげて言うことじゃないでしょ…

葉月ちゃんも、流星群見たいよね?

葉月

そりゃ見たいよ

そうだよね!

じゃあ、一緒に帰ろう!

葉月

へ?

帰る?

どこに?

なんで、怜と一緒に?

早くしないと見れなくなっちゃうから

葉月

そうなの?

うん

もう、終わりが近いから…

じゃあ、もう流星群始まってるってこと?

今何にも見えないんだけど…

てか、これ空?

なんか真っ暗だなあ…

星が見えないんじゃ流星群なんて見えないじゃん

俊太

おーい葉月ー?

葉月

彩芽

なに、びっくりした顔してんの笑

あれ、私

怜と、彩芽・俊太と

交互に話してる?

私がどっちか一方と話してるとき

もう片方の存在はどこにあったんだろう?

怜に名前を呼ばれれば、怜のいる世界に

彩芽・俊太に呼ばれれば、その2人のいる世界に

私の"存在が戻る"?

私の"存在"は、2つの世界を行き来してる?

じゃあ、さっき怜が言った「帰る」っていうのは

怜のいる世界に帰るってこと…?

…ああ、難しくなってきた

こんなこと考えてたらおかしくなりそう…

葉月

…ははっ

俊太

え、どうした笑

俊太

急に笑うとか怖いぞ笑

そもそも、4人みんな同じ世界にいるわけで

離れた所にいるなんてありえないのに

葉月

あーなんか疲れた

彩芽

大丈夫?

彩芽

休めるとこあるからいく?

葉月

ほんと?

俊太

さっき俺らもいったんだけど、めっちゃ快適だった!

彩芽

うんうん!

葉月

じゃーちょっと休もうかな

彩芽

そうしよ!

葉月

待って!!

葉月ちゃん!!

葉月

ビクッ

葉月

れ、怜、ちゃん!?

流星群見に行くんでしょ!?

葉月

で、でも疲れたから

葉月

少し休んでから見るよ

そっちじゃ見れないよ!

葉月

はぁ?

葉月

大丈夫だよ

葉月

彩芽と俊太もいるし

いるの…?

葉月

いるよ?

なんかやばそうな顔してるんだけど

どうしたんだ?

だ、ダメ!!

絶対いっちゃダメだよ!!

葉月

はい?

なんでそんな命令っぽいの

しかも必死そうだし…

はーどうするかな…

彩芽

葉月

葉月

葉月

彩芽

彩芽

早くいこうよ

葉月

ちょっと待って

俊太

なんでだよ

葉月

今少し考えてるから

彩芽

疲れたんでしょ?

俊太

俺らも葉月探して疲れたし

俊太

いこうぜ?

え、なんか2人とも

怖い

表情が消えた?

俊太

早くしないと

彩芽

時間がないから早く

俊太

早く

葉月

ま、待ってってば

彩芽

遅い

俊太

ほら、いこう

彩芽

早く

俊太

早く

葉月

…や

葉月

やだ

葉月

どうしたの2人とも

彩芽

どうもしてないよ

俊太

俺らは葉月といきたいんだよ

葉月

怖い

葉月

葉月

ごめん!!

私は走った

…走ったのだろうか

とりあえず、進んだ

どこにかは分からないけど

怜がいるような気がする方へ

ひたすら向かっていった

葉月

怜ー!!

葉月

はあっはっ

葉月

れっ

葉月

怜、はあっ

葉月

怜……!!

怜の名前を叫ぶ

声は掠れまくってて

もう何て言ってるか分からないくらいだった

はっ

葉月ちゃんっ!!

葉月

!!

葉月

れ…っ!

涙が出てきた

というかすでに出ていた

走ってる時に流れていた涙が

頬の上で乾いているのを感じた

葉月ちゃん

一緒に帰ろう

一緒に、生きよう

…え…?

生きる…?

葉月

_______

___________

______________

___________

_______

…?

目が開いた気がする

無機質な白色が見える

さっき私の"存在があった"所に白色なんてなかった

真っ暗で、人だけはくっきり見えてた

人…

怜…

彩芽と、俊太は?

私は…ここにいる

ここはどこ?

ここは…病室?

私は横たわっているようだ

目が開いて初めて見た無機質な白は

どうやら病室の天井のよう

病院…

私は、病院に運ばれてきたんだろうか

…ああ、意識を失う前のことを思い出してきた…

葉月

今の目覚めは

夢から現実世界に私の"存在が戻ってきた"ようだった

毎朝経験する目覚めじゃなくて

もっと、長くて深い夢からの…

ガラガラガラ

葉月

…?

誰か来た…

葉月ちゃん…

葉月

…れ…い

あれ、上手く喋れない

よかった…っ

泣いてる

怜も

私も

私、夢を見たの

葉月ちゃんをこっちの世界に連れ戻す夢

あれは

私が勝手に見た夢じゃなくて

怜が本当に私を現実世界に連れ戻そうとしてくれてたんだ

葉月

見た…私、も

葉月

怜ちゃんの、おかげ…

葉月

あり…がとう…

こっちこそ…

戻ってきてくれてありがとう…!

それからしばらく入院生活は続き

ようやく私は退院した

私たち天文部は、あの日の夜、流星群を見に山の方へ貸切バスで向かっていた

もちろん、その中に彩芽・俊太

そして怜もいる

彩芽

葉月は俊太とラブラブ天体観測だよね!

葉月

ええ!?

葉月

彩芽ってば恥ずかしいって…

俊太

いいじゃん?2人で星見るの

彩芽

キャーッほら〜!

葉月

しゅ、俊太…

彩芽

私はイケメン先輩誘えるよう頑張るぞーっ

葉月

わー応援してる!

彩芽

彼氏持ちの余裕ですな笑

葉月

ち、違うって〜

バスの中でそんな平和な会話をしながら

山を上っていく途中

彩芽

キャーーー!

俊太

葉月っ!!

葉月

俊太っ!?

一瞬だった

私は俊太の腕に包まれていた

バスは

崖から

落ちた

彩芽と俊太は死んだ

怜は生きていた

私は

あの夢のような世界を経験し

生きた

怜は言っていた

事故の翌日の夜、寝た時に見た夢の中で私を見つけ

とっさに助けなければいけないと悟ったこと

私や彩芽・俊太に無視されていることは気付いていたけど

私らのことを嫌ったことはなく

人を、命を助けるのは当然だと感じたこと

チョコを私にあげようとしたのは

少しでも現実世界に近付けることができると考えたから

流星群を見ようと言ったのも

現実世界に戻って生きてほしいと思ったからだということ

私が目覚めたタイミングで

ちょうど病室を訪れたのは

夢から覚めてすぐに家を出たからだということ

私を助けて、本当によかったと

それから

私は怜に謝罪をした

怜は許してくれた

そもそも、あまり怒っていなかったという

私たちは仲良くなった

本当に、怜には感謝以上の気持ちでいっぱいだ

ありがとう、怜

ここからは私の考察

あの時

私は、怜のいる世界と、彩芽・俊太のいる世界

つまり、生と死をさまよっていたこと

怜が「流星群が見れなくなっちゃう。もう終わりが近いから」

と言っていたのは

たぶん、私が死に近かったんだろうということ

彩芽と俊太が怜のことを忘れていたのは

2人が死んでしまったから

こっちでの記憶の一部を失っているのだろうということ

怜が私を助けようとする一方で

2人は私を死に向かわせようとしていたこと

2人の言っていた「休む場所」っていうのは

きっと天国か何かだろうということ

2人が最後に繰り返していた

「早くいこう」

それは

「早く逝こう」

だったんだろうということ

私は

大好きな2人に大好きだと思われていたんだということ

もういない彩芽と俊太

他の天文部のみんなの分まで

助けてくれた怜への感謝の気持ちを持って

私は

私という存在を

この世界で

強く

生きる

そう心に誓った

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