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葉月
ハッとした
今、何してたんだっけ
少し眠ってた?
でも寝起きのような感覚はない
なんというか、例えると
ぼんやり考え事をしてて現実世界から離れてたら
突然誰かに呼ばれて
自分の意識が
つまりは自分の存在が
現実世界に戻ってきたような
そんな感じがする
あれ?何してたんだろ本当に
怜
葉月
怜
葉月
なんで怜が?
私、怜と話でもしてたんだっけ
葉月
怜
葉月
怜
怜
たしかに私はチョコが好き
…好き?
うん、好きだと思う
…本当に好きなんだっけ
私、自分の好きな食べ物も分からなくなった?
怜
ていうか
お腹空いたとか空いてないとか
何も感じないような…
なんか変だな
葉月
怜
そんな残念そうにしなくても…
葉月
葉月
葉月
怜
怜
彩芽
俊太
葉月
葉月
彩芽
どこに?
あれ?そういえば
ここってどこだろ…
俊太
探した?
私は2人といたの?
どこではぐれたの?
葉月
葉月
俊太
彩芽
葉月
体調が良いか悪いかも感じない
彩芽
彩芽
葉月
そうか
彩芽は私の親友で、俊太は私の彼氏か
2人の名前はわかったけど
なぜか関係はパッと出てこなかったんだよね
彩芽
彩芽
葉月
1人で?
いや、私は
葉月
葉月
俊太
俊太
俊太
葉月
葉月
彩芽
誰…
怜は、誰…
あ
葉月
葉月
彩芽
葉月
俊太
葉月
俊太
葉月
葉月
葉月
そう言う私の中でも
怜の存在は曖昧だ
怜のことを無視してたのが
どうしてかも分からない
葉月
彩芽
彩芽
そうだ、天文部だった
葉月
葉月
俊太
彩芽
彩芽
そうなのだろうか
だって、さっきハッとする前のこと
"自分の存在が戻ってくる"前のこと
ほとんど覚えてないんだから
怜
葉月
葉月
怜
葉月
怜
怜
怜
今日
今日?
って何日?
今日って、いつ…?
怜
葉月
怜
葉月
怜
大丈夫か?この子
急に声荒らげて言うことじゃないでしょ…
怜
葉月
怜
怜
葉月
帰る?
どこに?
なんで、怜と一緒に?
怜
葉月
怜
怜
じゃあ、もう流星群始まってるってこと?
今何にも見えないんだけど…
てか、これ空?
なんか真っ暗だなあ…
星が見えないんじゃ流星群なんて見えないじゃん
俊太
葉月
彩芽
あれ、私
怜と、彩芽・俊太と
交互に話してる?
私がどっちか一方と話してるとき
もう片方の存在はどこにあったんだろう?
怜に名前を呼ばれれば、怜のいる世界に
彩芽・俊太に呼ばれれば、その2人のいる世界に
私の"存在が戻る"?
私の"存在"は、2つの世界を行き来してる?
じゃあ、さっき怜が言った「帰る」っていうのは
怜のいる世界に帰るってこと…?
…ああ、難しくなってきた
こんなこと考えてたらおかしくなりそう…
葉月
俊太
俊太
そもそも、4人みんな同じ世界にいるわけで
離れた所にいるなんてありえないのに
葉月
彩芽
彩芽
葉月
俊太
彩芽
葉月
彩芽
葉月
怜
怜
葉月
葉月
怜
葉月
葉月
怜
葉月
葉月
葉月
怜
怜
葉月
なんかやばそうな顔してるんだけど
どうしたんだ?
怜
怜
葉月
なんでそんな命令っぽいの
しかも必死そうだし…
はーどうするかな…
彩芽
葉月
葉月
彩芽
葉月
俊太
葉月
彩芽
俊太
俊太
え、なんか2人とも
怖い
表情が消えた?
俊太
彩芽
俊太
葉月
彩芽
俊太
彩芽
俊太
葉月
葉月
葉月
彩芽
俊太
葉月
葉月
葉月
私は走った
…走ったのだろうか
とりあえず、進んだ
どこにかは分からないけど
怜がいるような気がする方へ
ひたすら向かっていった
葉月
葉月
葉月
葉月
葉月
怜の名前を叫ぶ
声は掠れまくってて
もう何て言ってるか分からないくらいだった
怜
怜
葉月
葉月
涙が出てきた
というかすでに出ていた
走ってる時に流れていた涙が
頬の上で乾いているのを感じた
怜
怜
怜
怜
…え…?
生きる…?
葉月
_______
___________
______________
___________
_______
…?
目が開いた気がする
無機質な白色が見える
さっき私の"存在があった"所に白色なんてなかった
真っ暗で、人だけはくっきり見えてた
人…
怜…
彩芽と、俊太は?
私は…ここにいる
ここはどこ?
ここは…病室?
私は横たわっているようだ
目が開いて初めて見た無機質な白は
どうやら病室の天井のよう
病院…
私は、病院に運ばれてきたんだろうか
…ああ、意識を失う前のことを思い出してきた…
葉月
今の目覚めは
夢から現実世界に私の"存在が戻ってきた"ようだった
毎朝経験する目覚めじゃなくて
もっと、長くて深い夢からの…
ガラガラガラ
葉月
誰か来た…
あ
怜
怜
葉月
あれ、上手く喋れない
怜
泣いてる
怜も
私も
怜
怜
あれは
私が勝手に見た夢じゃなくて
怜が本当に私を現実世界に連れ戻そうとしてくれてたんだ
葉月
葉月
葉月
怜
怜
それからしばらく入院生活は続き
ようやく私は退院した
私たち天文部は、あの日の夜、流星群を見に山の方へ貸切バスで向かっていた
もちろん、その中に彩芽・俊太
そして怜もいる
彩芽
葉月
葉月
俊太
彩芽
葉月
彩芽
葉月
彩芽
葉月
バスの中でそんな平和な会話をしながら
山を上っていく途中
。
。
。
彩芽
俊太
葉月
一瞬だった
私は俊太の腕に包まれていた
バスは
崖から
落ちた
彩芽と俊太は死んだ
怜は生きていた
私は
あの夢のような世界を経験し
生きた
怜は言っていた
事故の翌日の夜、寝た時に見た夢の中で私を見つけ
とっさに助けなければいけないと悟ったこと
私や彩芽・俊太に無視されていることは気付いていたけど
私らのことを嫌ったことはなく
人を、命を助けるのは当然だと感じたこと
チョコを私にあげようとしたのは
少しでも現実世界に近付けることができると考えたから
流星群を見ようと言ったのも
現実世界に戻って生きてほしいと思ったからだということ
私が目覚めたタイミングで
ちょうど病室を訪れたのは
夢から覚めてすぐに家を出たからだということ
私を助けて、本当によかったと
それから
私は怜に謝罪をした
怜は許してくれた
そもそも、あまり怒っていなかったという
私たちは仲良くなった
本当に、怜には感謝以上の気持ちでいっぱいだ
ありがとう、怜
ここからは私の考察
あの時
私は、怜のいる世界と、彩芽・俊太のいる世界
つまり、生と死をさまよっていたこと
怜が「流星群が見れなくなっちゃう。もう終わりが近いから」
と言っていたのは
たぶん、私が死に近かったんだろうということ
彩芽と俊太が怜のことを忘れていたのは
2人が死んでしまったから
こっちでの記憶の一部を失っているのだろうということ
怜が私を助けようとする一方で
2人は私を死に向かわせようとしていたこと
2人の言っていた「休む場所」っていうのは
きっと天国か何かだろうということ
2人が最後に繰り返していた
「早くいこう」
それは
「早く逝こう」
だったんだろうということ
私は
大好きな2人に大好きだと思われていたんだということ
もういない彩芽と俊太
他の天文部のみんなの分まで
助けてくれた怜への感謝の気持ちを持って
私は
私という存在を
この世界で
強く
生きる
そう心に誓った