私たちの物語

（文化祭翌日・朝〜放課後） 文化祭の翌日。 学校は、何事もなかったみたいに動き出す。 チャイム。 机を引く音。 いつもと同じ、朝。 ――でも、 私たちだけが、違った。

視線が、前の席に向く。 瑞希くんは、 いつも通り。 何もなかった顔。 ――それが、少し、腹立たしい。

目が合う。 一瞬。 でも、確かに。

何も言わない。 でも、昨日の距離が、 一気に戻る。

昼休み

胸の奥が、ぎゅっとする。

（屋上） 人は少ない。 風が強い。 二人きり―― じゃないけど、近い。

瑞希くんの視線が、落ちる

沈黙。 でも、 空気は重くない。

距離が、少し縮まる。 触れない。 でも、確実に。

チャイムが鳴る。 現実が、戻ってくる。

すれ違う瞬間、 声は出さずに。

秘密の恋は、 一段階、深くなった。 束縛も、 独占欲も。 ――もう、 友達の距離には戻れなかった。